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作品ID:1476
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ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


第六章「死闘」:第14話「最悪の敵」

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第6章.第14話「最悪の敵」



 四十九階の階段室に入ると、そこには四十七階で見た六人組のパーティがいた。

 彼らもかなりMPを消費しているようで、疲労の色が濃い。俺と同じく、ここで一夜を明かすようだ。

 俺は階段室に入ったところに陣取り、流水――ウォーター――の魔法の水を飲みながら、夕食代わりの干し肉と固パンのようなビスケットをゆっくりと食べ始めた。

 彼らは五十階の扉に近いほうに場所を決めたようで、俺と同じ様に食事を始めている。



 時刻は午後四時過ぎ、寝るには早い時間だが、MPが戻れば何時だろうと出て行くつもりなので、時刻は関係ない。

 マントを寝袋代わりにし、MP回復ポーションを飲みながら、静かに目を閉じる。



 しばらくすると、下に陣取ったパーティから、プレートメイルを着た重装備の戦士が話しかけてきた。



「俺はセアドというんだが、あんた、ミルコの弟子のタイガじゃないのか?」



 俺は答えるのが億劫だったので、その問いを無視した。



「ミルコのことは残念だったな。無茶苦茶な人だったが、武勇伝は聞いていたからな。何にせよ、気を落とすなよ」



 俺はミルコのことを思い出し、涙がこぼれそうになったが、無言のまま、答えは返さない。

 セアドは「邪魔して済まなかった」と一言言い、話しかけるのを止めた。



 俺は彼とミルコの話をしたかったが、心が壊れて自暴自棄になっている振りをするため、じっと黙っている。



(駄目だ。思い出しちまう。今は復讐のことだけを考えるんだ。そのために少しでも早く魔力を回復させなくては)



 できるだけ心を平静に保つため、無意味に数を数え始めた。

 数えていた数が千を越えたころ、少しだけ眠っていたようだ。

 セアドのパーティに動きがあり、その気配で目が覚めたが、彼らの不寝番の交代時間だったようだ。



 三時間後、MPが百%になったことを確認し、五十階に進もうと階段を降りていく。

 セアドたちのパーティは警戒するが、俺はできるだけ遠い位置を歩き、静かに扉を開けて出て行く。

 後ろから、「死ぬなよ」という声が聞こえるが、手を上げることすらせず、そのまま通路に出て行った。



 五十階では五体のゴーストが現れるはずだ。

 階段室を出て、五分もすると、五体のゴーストが前から近づいてきた。

 五体は横一杯に並び、隙間無く、壁を作るように進んでくる。



 五体同時に攻撃できそうなポイントを見定めるが、真ん中では両端のゴーストに届かない。二回に分けると余分に一発貰うから、うまく一度に攻撃できるようにしないとボス部屋に行くまでにMPをほとんど失ってしまう。



 俺は通路の左側に寄り、少し下がるように待ち受けることにした。

 ゴーストはやや斜めになるように、通路中央付近から斜陣のような感じに隊形を変えていた。



(走り込めば、その勢いで一気に攻撃出来るかも)



 俺はその隊形を見て、走りこみながらの複撃を試みてみた。

 いつもの耳障りな音が周囲に響く中、先頭のゴーストを横薙ぎの撫で斬りにする。そのままの勢いで二体目と三体目の間目掛けて踏み込み、その二体を逆袈裟、袈裟斬りと連続で斬り付け、更にもう一歩踏み込み四体目五体目に攻撃を掛ける。

 この間約二秒。五回の精神攻撃はもらうものの、懸念していた追加分は無かった。



(ふうー。きついがやれないことはないな。しかし、一回の戦闘で十%強のダメージか。六回以上戦うなら、ボス部屋に行かず階段に戻るべきだろうな)



 再びゴーストと遭遇するが、行動パターンは変わらず、一方向に寄ってから少し下がると面白いように同じ行動を取る。

 一回目と同じように走りこみながら攻撃を掛けると五発の精神攻撃を受けるだけで全滅させることが出来た。



 この後、更に三回エンカウントし、同じようにゴーストを倒していく。



(MPの残りが半分を切った。ボス部屋が先かエンカウントが先か……)



 運良く、ゴーストにエンカウントせずに五十階のボス部屋の前に到着した。

 休憩したいところだが、無駄な戦闘はできないので、迷わず扉を押し開ける。



 中には、黒い霧のような人型のアンデッドが待ち構えていた。



 ナイトメア:

  夢魔。強力な悪夢を操る亡霊の一種。

   HP1000,DR50,防御力0,獲得経験値1500(10G)

    精神攻撃(MPへのダメージ,AR300,SR∞,レンジ30)

    特殊:通常武器無効,幻覚(レンジ40)



(ナイトメアだ。バクみたいな形かと思ったら、ゴーストの黒バージョンか)



 ナイトメアはゴーストと同じく精神攻撃を掛けてくる。

 攻撃力はゴーストの三倍、レンジは一・五倍、HPは二・五倍。



(速攻で倒さないとMP切れでジ・エンドになる。厄介なのは幻覚だ)



 ギルドで聞いた話では、ナイトメアは幻覚を見せるという。幻覚自体に攻撃力は無いが、幻覚を掛けられると、最も見たくないものを見る事になり、動けなくなるそうだ。

 痛みなどの刺激で強制的に解除することができるので、パーティで挑む場合は幻覚を掛けられた前衛に、鏃を取った矢を後方から射掛けて正気に戻すそうだ。



 ソロの俺にはそんなこと出来ないし、正攻法しかない。

 冒険者の間では”前衛殺し”と呼ばれている。



 ここでアンデッドエリアが終わるので、魔法で対処するという選択肢もあった。ボス部屋自体三十m四方の大きさがある。

 幻覚のレンジが四十フィート=十二mということは、動き回ればアウトレンジからの攻撃が可能だ。

 最も得意なファイアボールでアウトレンジから攻撃すれば、残りのMPでも勝ちを拾えるはずだ。

 だが、俺は出来るだけ時間を節約したかった。MP回復には数時間掛かる。精神攻撃で受けるダメージより、消費するダメージの方が多いと判断し、あえて近接攻撃を掛けることを選択した。



(ダンクマールさんの防具を信じて突っ込む。後は精神耐性でどこまで行けるかだ)



 俺は覚悟を決め、ナイトメアに向かって突っ込んでいった。



 ナイトメアのおぼろげな顔が笑ったように見えた瞬間、目の前の風景が暗転する。

 瞬き程度の時間で暗闇に包まれ、俺はナイトメアの姿を見失っていた。



(くそっ! どこにいる。どこだ!)



 俺は闇雲に剣を振るい、見えない敵に向けて攻撃を繰り返している。



 すると、五mくらい先に光る扉が見えてきた。

 扉は静かに開いていき、また、周りの風景が変わっていく。



(ここは? ギルドの訓練場? あれ? 今何をしていたんだっけ?)



 俺はギルドの訓練場に立っていた。

 いつものようにミルコが模擬剣を持ち、怒鳴っている。



「いつまでボケてやがる! さっさと構えろ! 行くぞ!」



 俺は慌てて剣を構え、ミルコの斬撃を受け止める。

 すぐに次の斬撃が飛んできて、俺の腰を打ち据える。



「どうした! いつもなら楽に避けている一撃だぞ! そんなことだから大事な女を殺されちまうんだ!」



「なに! 何のこと言っている!」



「おめぇが甘ちゃんだから、エルナは死んだんだよ。嬢ちゃん――ノーラ――たちも死んじまうんだ!」



「うるせぇ! 何を言っているんだ! そんなことは……」



「忘れたのか? 俺がグンドルフに殺されたことも。エルナが殺されたことも全部忘れちまったのか。この薄情もんが!」



「違う! 忘れてなんかいない! 忘れてなんか……」



 そこまで言うと、再び目の前の風景が切り替わる。



(ここは? エルナの部屋?)



 そう思った瞬間、突然、エルナが二人の男に襲われているのが見えた。

 助けに行こうと足を動かそうとするが、両足は地面に埋め込まれているかのように全く動かない。



「エルナ! 待っていろ! すぐ行くから!」



 そう叫ぶが、足は動かず、魔法も使えない。



 エルナに男たちが近づいていく。

 一人の男が剣を振りかぶり、エルナの胸に剣を突き刺そうとしている。



「助けて! タイガ、助けて!」



 エルナは必死に俺の名前を叫ぶが、俺は指を動かすことすら出来ない。



(クソ! 動け! 動け! エルナ! エルナ!!!)



 彼女の胸に剣が吸い込まれていく。

 着ている服が見る間に赤く血で染まっていく。



「タイガ! 痛いよ! 助けて! 助けてくれるっていったじゃないの! 嘘つき!」



 彼女の目が俺を捕らえ、憎しみを込めた目で俺を睨んでくる。



(エルナ……ごめん。助けられなくてごめん)



 彼女は血を吐きながら、初めて聞く金切り声で、



「あんたなんかに会わなければ良かった! あんたのせいで私は死んだのよ。痛かったのよ。判る? ミルコもそう。ノーラもアンジェもあんたのせい。アマリーだっけ、あの娘も今頃死んでるわよ。シルヴィアって娘もすぐに殺されるわ。全部、あんたのせい!」



「止めてくれ! もう止めてくれ……」



 俺はエルナの声に耳を塞ぎたかった。

 心に突き刺さる声を聞きたくなかった。



(ああ、確かに全部俺のせいだな……)



(疲れたよ……すぐにそこに行くから……)



(エルナ、ちゃんと謝るから……もう止めてくれ……)



 俺はその時、グンドルフへの復讐もアマリーたちのことも忘れ、ゆっくり眠らせて欲しいとだけ願っていた。



 その時、胸に何かが当たる感じがし、遠くから懐かしい声が聞こえてきた。



『もう、ほんとにお馬鹿さんなんだから。私がそんなこと言うわけ無いじゃない。しっかりしなさい!』



 その声を聞いた瞬間、体が自由になり、元のボス部屋にいることに気付いた。



 目の前には、黒い人型が迫っているが、こちら正気になったため、動きを止める。



 俺は今の記憶がすべてナイトメアの幻覚だと理解し、今まで感じたことがない怒りを覚えた。



「てめぇは俺の大切な思い出、ミルコとの、エルナとの思い出を汚した! 許さねぇ!」



 俺の怒りにナイトメアが一瞬怯んだように見えた。

 迷宮の魔物であり、アンデッドのナイトメアが怯むことなどないはずだが、俺にはそう見えた。



 俺は冷静さを失ったまま、タイロンガに着火の魔法を掛け、そのままナイトメアに斬りかかっていった。

 その時、俺のMPは三十%を切っていたはずで、冷静なら着火の魔法を掛けずに攻撃していただろう。



 俺は炎を纏ったタイロンガで強撃を繰り出し、一撃でナイトメアを葬った。



 ナイトメアの黒い体が白い光に浄化されるように消えていく。



(勝ったのか?)



 俺は魔石の落ちるカランという音で我に返り、五十階を突破したことに気付いた。



(さっきのはエルナが助けてくれたんだよな)



 確かにエルナの声が聞こえ、正気に戻れた。

 エルナの形見の首飾りを小さな皮袋に入れ、胸に入れていた。その飾りの角が偶然当たり、意識が戻ったのかもしれない。それともただ単に精神耐性の効果が出ただけなのかもしれない。



 だが、俺はエルナの魂が助けてくれたと本気で思っていた。



後書き


作者:狩坂 東風
投稿日:2013/01/25 22:10
更新日:2013/01/25 22:10
『ドライセン王国シリーズ:滔々と流れる大河のように(冒険者編)』の著作権は、すべて作者 狩坂 東風様に属します。

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