作品ID:1602
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永遠の終わりを待ち続けてる
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
永遠の終わりを待ち続けてる
前の話 | 目次 |
ヴィルフリートの言葉で、シエルリーデが……いや、千年綾袮は気を失った。今の暗示はウィリアムが一番最初に綾袮や識婁にかけた略式の簡単なものではない。これがかかっていなければ、ヴィルフリート自身がただでは済まない代物だ。
「辛いことをさせるわ、全部あたしの撒いた種で」
「ルーシア、僕は夢の続きをみることを許されたんだよ。リーデからね。さて、ルーシア」
ヴィルフリートの言葉を、ウィリアムが遮った。
「ルーシアは俺が引き受けよう」
「そう、じゃあ、お願いするわ」
ウィリアムの紡いだ言葉に、ルーシア、典井識婁の身体が崩れ落ちた。ウィリアムが識婁を、ヴィルフリートが綾袮を抱えて、綾袮の屋敷の使用人達へと引き渡した。同時に使用人達の中からヴィルフリートとウィリアムに関する記憶は消えた。
「lamiaは百年ほど休止だねぇ。さぁ、暫くどうして過ごしたもんかなぁ。どうやって何をして生きようかな、ちょっと直ぐには……」
「ヴィルフリート、あからさまに強がっておどけるな。泣いたっていいだろ、こんな日ぐらい。お前が無理して強がると俺も泣けねぇよ」
「…………っ!! …………ああ、何世紀先になるだろう、僕があの子の手を取れる日は……。あの子の永遠の終わりはっ!!」
「数世紀勝負、上等じゃねぇか。受けて立つと決めたんだろ?」
周囲で家族が泣いている中、ウトウトと綾袮はまどろんでいた。皆は惜しんで泣いてくれているけれど、恵まれた人生だったと綾袮は満足している。こうやって惜しんでくれる声に守られて逝けることも。
うつらうつらと翳み始めた視界に、人影が映ったので綾袮は驚いた。シルバグレーのサラッサラの髪の毛に翡翠の瞳という組み合わせの綺麗な少年が、突如と有り得ないようなところに立っていて……。
「……おや、天使さまのお迎えかねぇ。悪いけどね、わたしは天使さまは信じないんだよ。帰っとくれかい? お迎えなら要らないよ、自分で逝くさね」
「天使さまとは随分だね、申し訳ないけど、天使じゃないんだ。綾袮、キミは幸せに生きた?」
「変なこと訊くねぇ。それに変なことを言う。天使さまじゃないなら死神さんかい? 周りを見とくりゃわかるだろうにねぇ。幸せだったさね、恵まれた人生だったよ」
綾袮の言葉に、少年は翡翠の瞳に柔らかな色を浮かべて微笑んだ。どう考えてもおかしな少年を、綾袮は怖いとは思わなかった。綾袮は今から三途の川を渡るのだし、だから怖いとは思わないのかもしれない。
「『封じた記憶を取り戻せ、シエルリーデ・セントカティルナ・ドゥ・ルディエット。ヴィルフリート・アルヴィスが、闇の眷属の名の下に、ラインフェルド公爵として命じる。我が言葉に従え』」
「…………綾袮は幸せに生きたわ。識婁も幸せに暮らしてるはずよ。識婁のことも忘れないでとウィルに伝えてね。……私は眠るわ、さよなら、次に逢う日まで…………」
「うん、次に僕がみつける日まで、さよなら」
七階の病室の窓から一気に地上まで飛び降りて、ヴィルフリートは先まで綾袮が生きていた部屋を振り返った。綾袮が、リーデが眠った部屋を。
「眠ったか?」
「眠ったよ。リーデから伝言預かってきた。識婁のことも忘れるなよっておまえに伝えろってね」
ヴィルフリートの言葉にウィリアムは眉を顰めた。
「おいおい、そりゃ随分だね。こりゃ、俺の妹が帰る頃には説教の嵐を振らしてやるかな」
「ルーシアと対で三倍にして返してきそうだけど?」
ヴィルフリートが愉快そうに言ってみせると、ウィリアムは不貞腐れた。
「まぁ、リーデの永遠はまだ始まったばかりだからね。今日がスタート地点の一環でもあるんだし……」
「…………気長に待とうぜ。リーデとルーシアの『永遠の終わり』の日をな」
ウィリアムの言葉にヴィルフリートはここ数十年に随分と伸ばした髪をかきあげながら、楽しそうな声をあげて笑った。ヴィルフリートの笑いの意味が解らなかったらしい。
ウィリアムは怪訝な表情でヴィルフリートを見つめてくる。なので、直接言ってやる。
「へぇ、知らなかったな。いつの間にか、随分とルーシアのこと気に入ってるんだ?」
「ハァッ?」
「だって、そうだろ? 『リーデとルーシアの』って、おまえ、言ったよ?」
「……変なとこでチャチャ入れんな!」
ヴィルフリートはウィリアムとじゃれあいながらその場を後にして、病院から姿を消してゆく。この後どうするかとは決めていない。ここ数十年は中南米を放浪して歩いてみた。
突如として、数十年前に姿を消したlamiaを再開させてみるのも、面白いかもしれない。lamiaはヴァンパイアだったのだから、姿が変わっていないのも当然なのだし。
ああ、でも領地がそろそろ心配な気もする。一度、城に戻ってみないと、美しかったヴィルフリートの城はとんでもないことになっていたりするかもと……。
「まぁ、気長に待つよ。君の『永遠の終わり』の日をね」
――――呟いた声は誰に響くでもなく、ただ、木霊した。
「辛いことをさせるわ、全部あたしの撒いた種で」
「ルーシア、僕は夢の続きをみることを許されたんだよ。リーデからね。さて、ルーシア」
ヴィルフリートの言葉を、ウィリアムが遮った。
「ルーシアは俺が引き受けよう」
「そう、じゃあ、お願いするわ」
ウィリアムの紡いだ言葉に、ルーシア、典井識婁の身体が崩れ落ちた。ウィリアムが識婁を、ヴィルフリートが綾袮を抱えて、綾袮の屋敷の使用人達へと引き渡した。同時に使用人達の中からヴィルフリートとウィリアムに関する記憶は消えた。
「lamiaは百年ほど休止だねぇ。さぁ、暫くどうして過ごしたもんかなぁ。どうやって何をして生きようかな、ちょっと直ぐには……」
「ヴィルフリート、あからさまに強がっておどけるな。泣いたっていいだろ、こんな日ぐらい。お前が無理して強がると俺も泣けねぇよ」
「…………っ!! …………ああ、何世紀先になるだろう、僕があの子の手を取れる日は……。あの子の永遠の終わりはっ!!」
「数世紀勝負、上等じゃねぇか。受けて立つと決めたんだろ?」
周囲で家族が泣いている中、ウトウトと綾袮はまどろんでいた。皆は惜しんで泣いてくれているけれど、恵まれた人生だったと綾袮は満足している。こうやって惜しんでくれる声に守られて逝けることも。
うつらうつらと翳み始めた視界に、人影が映ったので綾袮は驚いた。シルバグレーのサラッサラの髪の毛に翡翠の瞳という組み合わせの綺麗な少年が、突如と有り得ないようなところに立っていて……。
「……おや、天使さまのお迎えかねぇ。悪いけどね、わたしは天使さまは信じないんだよ。帰っとくれかい? お迎えなら要らないよ、自分で逝くさね」
「天使さまとは随分だね、申し訳ないけど、天使じゃないんだ。綾袮、キミは幸せに生きた?」
「変なこと訊くねぇ。それに変なことを言う。天使さまじゃないなら死神さんかい? 周りを見とくりゃわかるだろうにねぇ。幸せだったさね、恵まれた人生だったよ」
綾袮の言葉に、少年は翡翠の瞳に柔らかな色を浮かべて微笑んだ。どう考えてもおかしな少年を、綾袮は怖いとは思わなかった。綾袮は今から三途の川を渡るのだし、だから怖いとは思わないのかもしれない。
「『封じた記憶を取り戻せ、シエルリーデ・セントカティルナ・ドゥ・ルディエット。ヴィルフリート・アルヴィスが、闇の眷属の名の下に、ラインフェルド公爵として命じる。我が言葉に従え』」
「…………綾袮は幸せに生きたわ。識婁も幸せに暮らしてるはずよ。識婁のことも忘れないでとウィルに伝えてね。……私は眠るわ、さよなら、次に逢う日まで…………」
「うん、次に僕がみつける日まで、さよなら」
七階の病室の窓から一気に地上まで飛び降りて、ヴィルフリートは先まで綾袮が生きていた部屋を振り返った。綾袮が、リーデが眠った部屋を。
「眠ったか?」
「眠ったよ。リーデから伝言預かってきた。識婁のことも忘れるなよっておまえに伝えろってね」
ヴィルフリートの言葉にウィリアムは眉を顰めた。
「おいおい、そりゃ随分だね。こりゃ、俺の妹が帰る頃には説教の嵐を振らしてやるかな」
「ルーシアと対で三倍にして返してきそうだけど?」
ヴィルフリートが愉快そうに言ってみせると、ウィリアムは不貞腐れた。
「まぁ、リーデの永遠はまだ始まったばかりだからね。今日がスタート地点の一環でもあるんだし……」
「…………気長に待とうぜ。リーデとルーシアの『永遠の終わり』の日をな」
ウィリアムの言葉にヴィルフリートはここ数十年に随分と伸ばした髪をかきあげながら、楽しそうな声をあげて笑った。ヴィルフリートの笑いの意味が解らなかったらしい。
ウィリアムは怪訝な表情でヴィルフリートを見つめてくる。なので、直接言ってやる。
「へぇ、知らなかったな。いつの間にか、随分とルーシアのこと気に入ってるんだ?」
「ハァッ?」
「だって、そうだろ? 『リーデとルーシアの』って、おまえ、言ったよ?」
「……変なとこでチャチャ入れんな!」
ヴィルフリートはウィリアムとじゃれあいながらその場を後にして、病院から姿を消してゆく。この後どうするかとは決めていない。ここ数十年は中南米を放浪して歩いてみた。
突如として、数十年前に姿を消したlamiaを再開させてみるのも、面白いかもしれない。lamiaはヴァンパイアだったのだから、姿が変わっていないのも当然なのだし。
ああ、でも領地がそろそろ心配な気もする。一度、城に戻ってみないと、美しかったヴィルフリートの城はとんでもないことになっていたりするかもと……。
「まぁ、気長に待つよ。君の『永遠の終わり』の日をね」
――――呟いた声は誰に響くでもなく、ただ、木霊した。
後書き
作者:未彩 |
投稿日:2015/11/18 22:43 更新日:2015/11/18 22:43 『永遠の終わりを待ち続けてる』の著作権は、すべて作者 未彩様に属します。 |
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