作品ID:1703
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人魚姫のお伽話
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
「楽譜が歌う『愛しい人』と些細な嫌がらせ」
前の話 | 目次 | 次の話 |
「ふぅん、こんな感じになったんだ?」
貴悠の突然の言葉にキョトンとしてから、貴悠の手元にあるものを見て、優卵は悲鳴を上げて、慌ててそれを取り返した。
「きゃ、きゃぁっ!! 私の楽譜です!! 勝手に読まないで下さい!!」
「あ、ごめん。鞄から落ちてたから、拾ったら、それだっただけなんだけど……」
貴悠の言葉に、常に譜面の類を持ち歩くバッグを確認すると、確かに、ファスナーが開きっぱなしにされている。いつの間にか落ちてしまったのだろう。
「う、うわ!! だ、だけど、だからって読まなくていいでしょう!! こっちがどれだけ泣きたい気持ちで書いてる曲か…………」
堪らず噛み付いた優卵に、貴悠が苦笑する。
「や、目に付いちゃったし……。誤魔化し利かないのが、優卵らしいよね」
「なに、それ? どういう意味?」
「いや、だって、僕、楽譜のテーマを見たと言ってないよ? 誰かに頼まれたとかで作ってる曲とか言われれば、それで納得したと思うけど……」
貴悠の台詞に、優卵は危うく助手席のダッシュボードに勢い良く頭を打ちかけた。そうだ、よく考えたら、馬鹿正直に白状する必要、無かったのだ…………。
この間の電話といい、自分で地雷を踏んでしまう、自爆してしまうこの癖、何とかならないのかと、流石の優卵でも思う。
貴悠はそんな優卵の心などお見通しのようで、ドライブデートの最中に立ち寄ったサービスエリアの缶コーヒーを空けながら、苦笑いを浮かべている。
勿論、優卵の手元には、貴悠よりも甘めのコーヒー。こんなことしたって、ただの八つ当たりとだは自分でも思ったものの……。
貴悠の余裕の笑いに若干、腹を立てて、優卵は貴悠の手元の缶コーヒーを奪ってやった。代わりに、貴悠には自分の甘いコーヒーを押し付けてやる。
突然の暴挙に、貴悠は瞳を白黒させているが、フンと鼻を鳴らして奪った缶コーヒーを一気に自分の喉に流し込んでみせれば、何故かケタケタと笑い出した。
否、何故かなんて、訊く必要は何所にもなかったかもしれない……。腹を立ててちょっとした嫌がらせがしたい気持ちの方が勝ってしまって、ウッカリ者の優卵は忘れてしまっていた。
貴悠はブラックじゃなければ駄目というわけではないけれど、肝心の優卵の方がブラックは苦手で飲めない類の飲み物だったことを…………。
勿論、ドライブの最中の休憩中に、貴悠が手にしていたのは、ブラックの缶コーヒーである……。
一気に流し込んだまではよかったものの、あまりの後味の苦さにコンコンと咽返って、涙目になっていると、隣の貴悠がペットボトルのお茶を差し出してきたから、余計に居た堪れない…………。
「……うう、何も上手く行かない…………」
「優卵、それでよくしっかり者なんて言われるよね?」
――――この日、せめて、書きかけの楽譜を最後まで見られずに取り返せたのが、唯一の優卵の救いだった……。
――お眠りよ、今はただ静かに 零れる涙もそのままに
お眠りよ、今はただ安らかに 寂しさ空しさもそのままに
優しい響きに包まれて 眠りに就いたのはいつのこと
私は目覚めて歌ってる 凍て付いた冬を越え 貴い春に導かれて
愛しい王子様の腕の中……
貴悠の突然の言葉にキョトンとしてから、貴悠の手元にあるものを見て、優卵は悲鳴を上げて、慌ててそれを取り返した。
「きゃ、きゃぁっ!! 私の楽譜です!! 勝手に読まないで下さい!!」
「あ、ごめん。鞄から落ちてたから、拾ったら、それだっただけなんだけど……」
貴悠の言葉に、常に譜面の類を持ち歩くバッグを確認すると、確かに、ファスナーが開きっぱなしにされている。いつの間にか落ちてしまったのだろう。
「う、うわ!! だ、だけど、だからって読まなくていいでしょう!! こっちがどれだけ泣きたい気持ちで書いてる曲か…………」
堪らず噛み付いた優卵に、貴悠が苦笑する。
「や、目に付いちゃったし……。誤魔化し利かないのが、優卵らしいよね」
「なに、それ? どういう意味?」
「いや、だって、僕、楽譜のテーマを見たと言ってないよ? 誰かに頼まれたとかで作ってる曲とか言われれば、それで納得したと思うけど……」
貴悠の台詞に、優卵は危うく助手席のダッシュボードに勢い良く頭を打ちかけた。そうだ、よく考えたら、馬鹿正直に白状する必要、無かったのだ…………。
この間の電話といい、自分で地雷を踏んでしまう、自爆してしまうこの癖、何とかならないのかと、流石の優卵でも思う。
貴悠はそんな優卵の心などお見通しのようで、ドライブデートの最中に立ち寄ったサービスエリアの缶コーヒーを空けながら、苦笑いを浮かべている。
勿論、優卵の手元には、貴悠よりも甘めのコーヒー。こんなことしたって、ただの八つ当たりとだは自分でも思ったものの……。
貴悠の余裕の笑いに若干、腹を立てて、優卵は貴悠の手元の缶コーヒーを奪ってやった。代わりに、貴悠には自分の甘いコーヒーを押し付けてやる。
突然の暴挙に、貴悠は瞳を白黒させているが、フンと鼻を鳴らして奪った缶コーヒーを一気に自分の喉に流し込んでみせれば、何故かケタケタと笑い出した。
否、何故かなんて、訊く必要は何所にもなかったかもしれない……。腹を立ててちょっとした嫌がらせがしたい気持ちの方が勝ってしまって、ウッカリ者の優卵は忘れてしまっていた。
貴悠はブラックじゃなければ駄目というわけではないけれど、肝心の優卵の方がブラックは苦手で飲めない類の飲み物だったことを…………。
勿論、ドライブの最中の休憩中に、貴悠が手にしていたのは、ブラックの缶コーヒーである……。
一気に流し込んだまではよかったものの、あまりの後味の苦さにコンコンと咽返って、涙目になっていると、隣の貴悠がペットボトルのお茶を差し出してきたから、余計に居た堪れない…………。
「……うう、何も上手く行かない…………」
「優卵、それでよくしっかり者なんて言われるよね?」
――――この日、せめて、書きかけの楽譜を最後まで見られずに取り返せたのが、唯一の優卵の救いだった……。
――お眠りよ、今はただ静かに 零れる涙もそのままに
お眠りよ、今はただ安らかに 寂しさ空しさもそのままに
優しい響きに包まれて 眠りに就いたのはいつのこと
私は目覚めて歌ってる 凍て付いた冬を越え 貴い春に導かれて
愛しい王子様の腕の中……
後書き
作者:未彩 |
投稿日:2016/01/19 13:01 更新日:2016/01/19 13:01 『人魚姫のお伽話』の著作権は、すべて作者 未彩様に属します。 |
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