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作品ID:1748
「鏖都アギュギテムの紅昏」へ

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鏖都アギュギテムの紅昏

小説の属性:ライトノベル / 異世界ファンタジー / 激辛批評希望 / 中級者 / R-15&18 / 連載中

こちらの作品には、暴力的・グロテスクおよび性的な表現・内容が含まれています。18歳未満の方、また苦手な方はお戻り下さい。

前書き・紹介


永劫強食器官

前の話 目次 次の話

 ――貴族とは、人にあらず。
 ゆえに人ならざる権利と義務を有する。
 そもそもの問題として、貴族が臣民より税を徴収し、臣民にはない法的な特権の数々を享受し、臣民に最敬礼を強いて良いのは何故か。
 その差別の論拠はどこにあるのか。
 考えるまでもない。
 貴族が己を殺し、臣民のために働くからだ。有事の際には体を張って臣民を守るからだ。
 だからこそ普段は臣民を足蹴にしてよいのだ。だからこそ労働もせずに華美飽食を貪ってよいのだ。
 これらは責務に対する正当な対価であり、何ら恥じるべきことではない。
 都市国家以上の規模に達した社会は、自身の維持のために『行政』と『防衛』のみを担う階級を絶対的に必要とする。差別による役割分担こそが社会構造を効率化させ、異律者の侵攻を食い止めうる余力を生むのだ。
 そして、差別とは理不尽であればあるほど良い。
 理不尽であるということは、決定に際して思考や議論を必要としないということだ。もしも万民に平等に立身出世の機会が与えられていたとしたら、その選別には多大な金と時間と労力が必要となるし、大多数の選ばれざる者の胸に失望と嫉妬と厭世感を植え付ける。今の〈帝国〉に、そのような無駄を赦す余裕など一切ない。生き方は、生まれによって厳密に定められていなくてはならない。
 そもそも行政能力や軍事能力などというものは、結果に関与する要素が多すぎて、実際にやらせてみなければ向き不向きなどわかるものではない。ならば事前の吟味・選別など無意味である。
 ゆえに魔月は、自らの恵まれた出自を肯定するし、下賤の生まれは是非とも理不尽に差別されなくてはならぬと考える。
 だが――
 義務を果たさぬ貴族、というものが、このごろ増えてきた。
 その種の連中は、口をそろえてこう言う。
「あぁ、臣民たちが羨ましい。貧しくとも自由に生きている。なぜ私は貴族などに生まれてしまったのか」
 莫迦か、と思う。
 どれだけ想像力がなければそんな発想ができるのか。民草の暮らしがどれほど貧しく過酷なものであるか、本当にわかっているのか。こういうことを言う領主に限って、芸術に溺れ、貴種流離譚でしか社会を知らず、適切な税制・国防・裁判制度の維持に興味を示さず、領民たちの生活水準が他と比べても一層低い状態のまま放置している暗君ばかりなのはどういうわけだ。
 挙句の果てには「政略結婚など嫌だ」などと頭が膿み腐っているとしか思えぬ妄言を吐く。
 社会の礎とは差別である。その差別を、いかなる出費もなく正当化できる「血統」という概念を維持するためならば、貴族個人の幸福など当然踏みにじられてしかるべきである。
 ……そう考えていたからこそ、とある婚姻の話が舞い込んできたとき、魔月はおや、と思った。
 聞けば、相手は〈帝国〉内部の穀倉地帯を封土に頂くザカラム家の令嬢であるという。格式から言えば、魔月のカナニアス家と比べると劣る。他にもっと富と権力と声望を持った家からいくつも縁談は来ていたため、特段ザカラム家の話に注意を払う理由などなかったはずであったが――
「この話は、我が娘も非常に乗り気であります」
 ザカラム卿は手紙にそう記していた。他にもザカラム家と結ぶことによる利点が述べられていたし、もちろんそちらの方が重要であることは確かであるが、最も意外だったのはこの一文であった。
 ――会ったこともない男のもとに嫁ぐのに、「非常に乗り気」……?
 ほほう。
 それはそれは。
 魔月はザカラム家の窮状を正確に見抜いていた。手広く肥沃な封土を有し、その石高は百万を優に超える。単一の貴族家の所領としては破格の生産性を誇っていた。が――当主の軍事的才能の欠如ゆえに安価な労働力である農奴の絶対数が少なく、その台所事情は決して楽観できるものではない。
 不敗の霊将たる魔月の姻戚となれば、途轍もない発言力を手にできる。紛争にともなう農奴交渉の駆け引きで、ほとんどの相手に圧倒的な優位を示せるだろう。
 ――「非常に乗り気」、ね。ふむ。
 家門のために己を捨てるか。どうしてなかなか、貴種に生まれ落ちたる者の責務というものを心得た姫君ではないか。
 もともと魔月は婚姻相手の家門に多くを求めずに済む立場にあった。〈帝国〉を守る不壊の盾たるカナニアス家の存続を願わない者などこの世にいない。
 ならば、姫君個人の責任感や知能を基準に入れたとて不都合はなかろう。
 そう考え、ザカラム卿の申し出に、諾と返事をやったのだった。
 ……それから、諸々の手続きに数か月の時を費やし、ついには姫君が光都カザフへ家臣を引き連れてやってくる日と相成った。
 花嫁の名は、厘音(リノン)・ハプロア・ザカラム。
 侍女に手を引かれ、御輿から降り立った彼女は、どことなく少年的な印象を覚える娘であった。
「あ、あのっ」
 蜂蜜色の髪を美しく結い、薄く化粧の乗った顔容(かんばせ)を決然と上げて、こちらをまっすぐ見つめていた。
「はじめましてカナニアス卿! ザカラム家長女の厘音です! こ、このたびは我が家門の窮乏に慈悲の手を差し伸べていただき感謝の言葉もございません!」
「恐縮は無用である。カナニアス家にしても益のある縁組であった。ザカラム卿には支援を惜しむまい」
「は、はいっ!」
「長旅、ご苦労であった。部屋に案内させよう。式は明日だ。今夜はゆるりと休まれよ」
「え、えっと、あのっ」
 その場を去りかけた魔月を、背後から呼び止める声。
 振り返ると、絹の手袋に包まれた指をもじもじと組み合わせ、じっと目を落としている。
「何か」
「せっかくお会いできたのですし、その、もうすこし、あなたとお話したいです……」
 魔月はいぶかしんだ。
「姻戚となった後の取り決めに関してはすでにザカラム卿と合意に至っていたように思うが、何か不備でもあったかな?」
「い、いえっ! そんなことじゃありません。もっと大事なことです」
 なるほど。婚姻後の自らの権力がどの程度のものになるのか、そして生まれてくる世継ぎの乳母を任命する権利が自分と魔月のいずれにあるのか。彼女はこれからカナニアス家内部におけるザカラム家の利益の代弁者となるのだ。はっきりさせておきたいことは山ほどあろう。
 そう、思っていた。
 だが。
「あの、魔月さま。わたしの顔、見覚えありませんか……?」
「……なに?」
 瞳を不安げに揺らめかせながら、姫君は聞いてくる。
 正直なところ、まったくない。
「これが初対面であったように思うが」
「そ、そうですか……」
 しょんぼりと肩を落とすが、すぐに気を取り直して言葉をつづける。
「実は、四年ほど前、夏至狩猟祭の折、猟犬に追い立てられて出てきた角猪に驚いて、馬がわたしを乗せたまま遠くまで逃げ去ってしまったことがありました。それからひとりぼっちで森のただなかに取り残され、日も暮れかけ、帰り道もわからず、もはやこれまで、わたしはおうちに帰ることもできず、ずっとここで余生を過ごすしかないんだと子供みたいなことを考えながらぷるぷると震えていたところ、ひとりの騎乗した貴公子が現れ、手をさしのべて下さったのですっ!」
 魔月は、なにか嫌な予感がしてきた。
 厘音はにぎりこぶしを祈るように胸に抱き、じっと視線を落としている。
「その方の体温を背中に感じながら、朱に染まった空の下、黄金に輝く山野を馬に揺られていたあの時間。あれこそが、わたしの胸にある中で最も切なく美しい思い出として、今も優しく蕩っています……」
 潤んだ瞳が、じっとこちらを見つめている。
「わたしは、貴族の娘です。心に秘めた想いは、きっと報われることはなく、お家のための献身を強いられるものと覚悟していました。だけど――」
 はにかんだ微笑み。
「……夢みたいです……大好きな人と、これからずっと一緒にいられるなんて。あんまり幸せすぎて、ちょっと罪悪感覚えちゃいます……」
 ――あぁ、そうか。
 胸中に、苦いものが、滲みだしてきた。
 ――あぁ、そうかよ。
 恨み言など言うつもりはない。だが、それでも落胆は禁じ得ない。
 結局それか。それなのか。
 家門のためでも領民のためでもなく、個人的な思慕でお前はここに来たのか。
「[長旅、ご苦労であった]。[部屋に案内させよう]。[式は明日だ]。[今夜はゆるりと休まれよ]」
 努めて先ほどとまったく同じ口調を維持すると、そのまま踵を返した。
「えっ?」
 背後の声にも、もはや耳は貸さぬ。
 ――所詮、無駄なことか。
 あの年頃の娘に、貴族としての責任感を期待しようなどとは。
 惚れた腫れた以外に価値基準を持たぬ生き物め。
 もはや彼女には何も期待すまい。世継ぎさえつつがなく産んでくれれば後はどうでもよい。恋の歌を囀りたいなら好きにしろ。ただし自分以外の男とな。
 魔月は、暗澹たる気分で執務室に戻っていった。

 ――その数ヵ月後、魔月は人類を裏切り、異律者を〈帝国〉の版図に招じ入れることとなる。
 それが必要なことであるとわかっていたからだが――私情としても、己が子を腹に宿した妻を犠牲に供することに、特段の躊躇いはなかった。
 光都カザフは、現在四方を異律者に囲まれている。異律者の上位個体と渡りをつけ、通行を許す代わりにカザフは襲わせぬという約定を結んだのだ。
 ゆえにカザフの臣民らは、今でも魔月のことを信じ切っている。ご領主さまは何か計り知れぬ計略を行うためにあえてこうされたのだ。我々はただ黙してそれに従い、不敗の霊将の帰還を待つのみ――と。
 耐え抜けば、いつかきっと魔月が助けに来てくれるはずだ――と。
 疑いもせず、信じ抜いている。
 ……哀れにも。

 ●

 魔月は典礼を終え、思うように動かぬ脚に苦心しながら自宅に戻っていた。
 奴隷に命じて、矛盾鎖の上から包帯を何重にも巻きつかせ、固定する。
 処置が終わると、庭先に卓と酒を出させ、腰を下ろした。
「おう、奥方のことでも思い出して、あーこんなところに落とされるのならシャバにいるうちにもっと尻でも撫でてやれば良かったなー、とでも嘆いているような顔だな」
「どんな顔だ」
 《紫禮幇》が用意した邸宅の庭先で、ひとり杯を傾けていると、隣にどっかりと腰を下ろす巨大な影がひとつ。
 そこに居るだけで気温が上がるような存在感――霊燼・ウヴァ・ガラクだ。
 断りもせずに瓶を掴んで一気に呷る。
 不敬にもほどがある振る舞いだが、もはやいちいち目くじらを立てる気にもなれない。
「あれは心根の優しい佳い娘だ。よりにもよって結婚したその年に旦那がアギュギテム送りとは、まったく哀れと言うほかないな」
「ならば貴様が貰ってやればよかったのだ。余は一向に構わん」
「……つくづくあの娘が哀れだな」
 嘆かわしげに首を振る大英雄。
 魔月は内心で肩をすくめる。この男は厘音が現在どういう状況であるか何もわかっていないのだ。だからこんな余裕交じりに会話ができる。魔月は情報統制が完璧に機能していることを確認し、「協力者」の手腕に対する評価を上方修正した。
「嘘でもよいから睦言の一つでも囁いてやれば良かったものを。別段バチは当たるまい」
「余は王器にあらず。小人どもの心を掴む言葉など吐きたくとも吐けぬし、実際吐きたくもない」
「またその持論か」
「今のところ例外に出会ったためしがない」
 魔月が常々公言する、人品の識別論であった。

 ●

 ――人間の器を図る尺度には、二種類ある。
 野心と、虚栄心だ。この二つをどれほど満たしているかで、器の質が変わる。
 最も大なるは、王器。
 野心、虚栄心ともに充溢している者である。彼は極大の野心を持つゆえに古い秩序を破壊し、極大の虚栄心を持つがゆえに下々の心を掴む嗅覚に長ける。時代を変え、時代を創る、いと尊き器である。
 次に大なるは、将器。
 有り余る野心を持つが、虚栄心に乏しい者である。彼は極大の野心を持つゆえに古い秩序を破壊するが、虚栄心に乏しいゆえに他人から良く思われようとせず、恒久的な支持を得られない。時代を変えるが、時代を創ることはできない。
 三番目は、人器。
 野心に乏しいが虚栄心に心奪われた者である。彼は明確な思想も行動原理も持たぬが、他人から良く思われたい性向は強い。時代を変えられず、時代を創ることもできない、どこにでもいる小人だが、ゆえに最も数が多く、時代精神そのものと言って良い。
 最も小なるは、獣器。
 野心、虚栄心ともに乏しい者である。彼の存在は――無意味だ。良くて無益無害。悪ければ下劣な性質を恥じようともしない、腐敗臭を撒き散らす精神の持ち主となる。この世に生れ落ちたのが何かの間違いであったと言うほかない。

 ●

「余は理屈で断じることしか知らぬ。人並みに虚栄心があればと思ったことは数知れぬが、こればかりはどうにもならぬ」
 自分の限界と言うものを、よく理解していた。
「恐らく余の名は、悪逆の君主として後世に伝えられるであろう。後世などというものがあればの話だが」
 異律者の侵攻に対して、場当たり的に対処する現在の体制には、限界を感じていた。
 [ゆえに]、[異律者の軍勢を自らの封土に招じ入れた]。
「しかし、それで良い。余は壊すだけだ。創るのは――あの狼淵・ザラガに託す」
「あの少年、貴公の見立てでは王器なのか?」
「少なくとも、野心は十分すぎる。未遂に終わったものの、自らの信念に従い皇帝陛下を弑し奉らんとした行動力を、余は評価する。愚昧なる一般臣民であれば思いつきもせぬし、思いついたとて実行などすまい」
「問題は、虚栄心か」
「少なくとも余よりはある。というより、貴様のほうが虚栄心には嗅覚が鋭かろう。人器の極北を極めたる男よ」
「どうかね。確かにあの少年、貴公よりは王器に近いが、生臭さが足りんな。化ける可能性がなくもない将器と言ったところだろう」
 再び酒瓶を呷る。喉が上下し、ほどなく瓶が空になった。
 魔月は眉をひそめる。
「おい、これから典礼であろうが。号泣しながら殺し合う気か貴様。無様にもほどがある」
「だーははは! 昨晩はつい深酒してしまったが、この程度なら酒を入れた方が体の滑りが良いというもの、よっと」
 霊燼は急に首を傾げた。
 直前まで頭があった場所を、黒いものが通過して、庭の月桂樹に突き立った。
 三本の黒い矢だ。鏃は濡れ光っており、毒が塗られていることがわかった。
「おう、精が出るな」
 巌のような顔が、困ったように笑う。
 魔月が半眼で睨みつける。
「狙われている身の上で人の家に上がり込むな。はた迷惑な」
「まぁそう言うな。恐らくこれが最期の機会なのだ。戦友と語らいたくもなる」
 小さくつぶらな瞳に、わずかばかりの悲しみが宿る。
 魔月は、この男と一回戦で相対する者の名を思い出す。
「……それほどの相手か、散悟(ヴァラゴ)・ガキュラカは」
「まともにやり合えば負ける気はせんが、まともにやり合う気がないのだろう」
 再び飛んできた毒矢を無造作に避けながら、霊燼は嘆息する。
「数日前からずっとこの調子よ。典礼が始まるまでにみどもの寝首を掻くことだけ考えておるようだ。しかもその一手一手が狂気じみた修練を感じさせる精密なものであった。他を絶する武威を持ちながら、敵は弱ければ弱いほど良いと思っている男だな。みどもが殺されるとしたら、あのような人獣の姦計に嵌った結果であろうよ」
 霊燼の見立てを、魔月は疑わない。一人の戦士としては、こちらを遥かに上回るますらおだ。
「獣器、か」
 他者との関係性に、いかなる意味も価値も見出さぬありよう。
 霊燼に認められる凶手でありながら、名がまるで知られていないという点が、散悟・ガキュラカの器質を証明している。王器や人器であれば、一も二もなく名を売ろうとするし、将器であっても野望の達成には知名度も重要であることを理屈として理解はする。
「貴公がさきほど倒した双子も、獣器には違いないが――少なくとも第七炎生礼賛経典義(テスタメントゥム・デュエリウム)に従おうとはしていた」
 二人がかり、というのは本来なら最も忌むべき聖三約侵犯だが、黒滅のあの体ではどうしようもない。餓天法師もそのあたりは酌量していたのだろう。
 そして、典礼に自前の武器を持ち込むことが禁じられていない以上、あの車椅子も認められるべきだった。
 いかにして法の枠内で敵の不意を突くか――という小賢しさは感ずるものの、逆に言えば法に反することは決してしない意志の表れでもある。
 どれほど異様な存在であろうが、帝国臣民としての最後の倫理観は持っていたのだ。
 帝国法、領邦法、臣民法など、さまざまな法が民草を縛っているが、第七炎生礼賛経典義(テスタメントゥム・デュエリウム)は、それらとは違う。人々が聖三約を守ろうとするのは、餓天法師の処刑が恐ろしいからだけではない。それをやってはならぬと、血の中に刻まれているからだ。心理的な抵抗が強く働き、もしも破ってしまったならば仮に餓天法師に察知されていなかったとしても自分から告解してしまう者が大半だ。
 精神の礎であり、大げさに言えば世界観でもある。
 散悟にはそれがない。
 それが、ないのだ。
「だとしても、勝てよ。そのような鬼畜が勝ちあがり、狼淵・ザラガと当たるようなことになっては目もあてられん。執政官の絶対指揮権限(インペリウム)を持って命ずる。軍団長(レガートゥス)霊燼・ウヴァ・ガラクよ。皇帝陛下の御庭先を荒らす害獣を必ず撃滅せよ」
「やれやれ、簡単に言うてくれるのう。ま、貴公に命じられては嫌とも言えん。なるべくなんとかしてみよう」
 霊燼は、うっそりと立ち上がった。
 太陽を背に、英雄の顔は陰に覆われ、小さな眼だけが奇妙な光を湛えて魔月を見ていた。
「……ひとつだけ、問うぞ。カザフ公よ。[陛下を弑し奉ったのは]、[貴公か?]」
 季節外れの冷たい風が、二人の間を吹き荒んでいった。
 魔月は鋭く目を細めた。口の端を、吊り上げる。
「だとしたら、どうする?」
「直截に言うてくれ。応か、否か」
 かすかに苦笑し、魔月は口を開いた。
 瞬間――
 鈍い音がした。
 魔月の白い頬に、赤い斑点が散る。
 霊燼の鳩尾から、鉄槍の穂先が生えていた。

 ●

 ある特定の行いを「卑怯」と考える通念は、散悟・ガキュラカにとり、自身を究極の捕食者たらしめる福音に等しかった。
 ――自分は、凡庸な男である。
 何をやっても人並み以上にこなすが、同時に何をやっても第一人者にはなれない。
 戦いという分野に限っても、自分より力強い者、速い者、賢い者、目敏い者、不屈の精神を持つ者を何人も知っている。
 散悟・ガキュラカは決して最強にはなれぬ男である。
 もしも人より秀でている部分があるとすれば、それは「共感性」という名の呪いに縛られていない点であろう。
 ――人間は、共感する生き物である、らしい。
 傷を負い、痛みに呻いている者を見ると、どういうわけか心に痛みを覚え、手を貸してやろうとするのだ。
 散悟には、その心境が理解できない。他人の痛みは、他人の痛みだ。自分が痛いわけではないはずである。
 もちろん散悟とて負傷者に手を貸してやったことぐらいはあるが、それはそうすることが自分の利益になると判断したからだ。
 本当の意味で憐みを覚えたことなど一度もないし、そもそも憐みというものがどういう感情なのかすらよくわからない。
 だが、自分以外の人間たちは、この「共感性」を前提にして社会を作り上げているらしいということを、理屈として理解はしていた。
 ――その最たるものが、第七炎生礼賛経典義(テスタメントゥム・デュエリウム)である。
 餓天宗が定めたる、決闘の法規。〈帝国〉の樹立と同時に布かれ、餓天法師らによって警察されてきた。
 技術や社会情勢の変化にともなって、これまで六度の改定が行われ、現行法は第七版である。

 ひとつ、一対一にて致すべし。衆をもって寡を滅ぼすがごとき[すくたれ者]は、餓天宗が総力を挙げて斬首に処するなり。
 ひとつ、双方が心機臨戦すべし。闇討ち、寝首掻き、毒殺、いずれも餓天宗が総力を挙げて斬首に処するなり。
 ひとつ、立会人を立てるべし。厳正なる決闘典礼には必要不可欠なり。かかる義務を怠りしはただの殺人行為なれば、餓天宗が総力を挙げて斬首に処するなり。

 この取り決めが意味するところはただひとつ。
 どうやら人間とは、殺し合いと言う極限状況においてすら、自身の可能性に枷をはめるのが好きでしょうがない生き物らしい。
 誰に強制されたわけでもないのに、あれは駄目、これをしてはならない、と自分から選択肢を限定することで、よくわからない満足感を覚えるのだ。
 何故そんな真似をするかと言えば、他者に共感しているからだ。自分がされたら嫌なことは、他人にもしたくないからだ。
 ――素晴らしいことである。是非ともその生き方を貫いてほしい。
 それだけ散悟は有利になる。
 まったく、なんと生き易い世界であろうか。
 小型の弩砲から撃ち出された鉄槍が、霊燼・ウヴァ・ガラクの胸を貫いたとき、散悟・ガキュラカは生きるということへの圧倒的な肯定を感じた。彼にとって「生きる」とは、自分から寝転がって腹を見せている獲物たちに舌鼓を打ちながら爪牙を振り下ろす甘美な餐食行にほかならない。
 さて――詰めである。ようやく、ようやく霊燼の肉体に鋼鉄を撃ち込むことに成功したのだ。この好機、必ずものにする。
 ここまでこぎつけるのに、散悟は大変な苦労と試行錯誤を重ねたものだ。
 毒殺は、真っ先に試みた。しかし失敗した。いや、標的に毒を呑ませることを成功と定義するなら間違いなく成功はしたのだが、霊燼・ウヴァ・ガラクはどういうわけか死ななかった。
 少し腹を下しただけだった。意味がわからなかった。
 日常的に少量の毒を摂り続ければ、耐性がつくことはある。しかしそれはあくまで摂取した毒種に限定された耐性だ。別の毒を飲めばころりと死ぬ。
 暗殺に使ったのは、六識魔爪を修めた者にのみ受け継がれてきた、秘中の秘たる猛毒である。無味無臭。一滴でも体に入れば十数回は死ぬ。そんなものへの耐性などどうやったところで身に着くはずもない。
 認めたくないことだが。あまりにも認めたくないことであるが――
 あの魁偉なる大英雄は、どうやら持ち前の生命力だけで毒に打ち勝ったようなのだ。
 重ね重ね思う。意味がわからない。
 六識魔爪の歴代伝承者たちが、その生物学と解剖学と錬金術のすべてを注いで生成した、この世で最も危険な物質。闇にまぎれ、闇に忍び、闇とともに繰り出される一刺しによって世を糺す、〈帝国〉成立以前から恐怖とともに語り継がれてきた伝説の凶手たち。その誇りが、ただひとりの大男の出鱈目な体力によって木っ端微塵に打ち砕かれたのだ。
 ――世の中には化け物もいるものだ。
 散悟・ガキュラカは嘆息する。自分のようなまっとうな人間には荷の勝ちすぎる相手である。絶対に戦いを挑んではならぬ。それなのに、八鱗覇濤ではよりにもよって一回戦で当たることになってしまったのだからついていない。
 どうにか組み合わせを変更できぬものかと考えあぐねたが、どうにもならぬ。餓天法師には賄賂も拷問も人質も通用しない。
 ともかく、別の方法を考えた。
 奴の棲家は貧民街の雑居長屋(インスラ)だ。何を好き好んでそんな掃き溜めに居を構えているのかは不明だが、その人柄と腕っぷしで周囲一帯の顔役のようなことになっている。霊燼は隣人たちを殺し合いに巻き込まぬために、ここひと月の間決して自宅には寄り付かず、アギュギテムを転々としているのだ。
 だが――そんな霊燼も、数日に一度、定期的に寄り付く場所があった。
 魔月の邸宅である。
 外界において、二人は戦友であった。魔月が考え、霊燼が実行する。この連携の前には、どれほど大規模な異律者の軍勢でも殲滅を免れなかった。
 ゆえに、アギュギテム投獄後も二人の友誼は続いているようだ。過ぎ去った栄光の思い出話でもしているのであろうか。
 そこで飛び道具である。
 飛び道具はいい。自分は安全な所にいながら一方的に相手を不意討ちできるあたりが最高だ。じゃんけんだの武術だの馬鹿ではないのかと思う。
 魔月・ディプロア・カザフィテス・カナニアスの邸宅に詰めている奴隷の一人に口を割らせるのは少々手間であった。主人への義理立てか、手の指をすべて失っても散悟に屈することがなかったのだ。とはいえ、妻子を人質に取れば、「共感性」に縛られた人間の心を砕くなど容易い。もちろん人質など最初に犯して殺している。用が済んだので本人も殺した。
 屋敷の周囲は庭園だ。魔月邸の防犯体制についてはすべて奴隷から聞き出している。庭の見回りは昼下がりと深夜に一度ずつ。つまりその間にすべての準備を万端に整えておくのだ。
 ――霊燼・ウヴァ・ガラクに対して、飽和攻撃は無意味である。
 数日前、人狗たちに一斉に毒矢を射かけさせたこともあったが――あれは実に痛ましい失敗に終わった。
 霊燼の周囲で紅い閃光が乱舞したかと思った瞬間、すべての矢が弾き飛ばされたのだ。うち五本に至ってはそのまま刺客たちの方向へ飛んでゆき、うろたえる顔面のすぐ横を通過していった。
 明らかに狙って外したのだ。殺そうと思えば殺せたのだ。呆れてものも言えない。どれだけ人類の領域を逸脱すれば気が済むのだこの男は。
 ともかく、散悟は考察する。
 霊燼は明らかに真後ろから飛来した毒矢にも完璧に対応してのけた。
 これは何を意味するのか。
 ――奴が黒滅・ウティリのような奇形であり、背中に目がついている?
 否。それならば罪状に「変異血脈根絶法違反」が加わっているはずだ。奴は奇形ではない。
 ――ならば、武術の極みに達し、敵の殺気でも読めるのか?
 否。[殺気などというものは存在しない]。この根拠皆無な虚構がまことしやかに語られているのは、武術家たちが自らの価値を高めるために行った、単なる印象操作による。人間は五感によってしか周囲の状況を把握できない。
 ――では、何なのか。
 いささか馬鹿げた仮説が、散悟の脳裏に構築されつつあった。

 ●

 己の胸を貫く鉄槍をしげしげと眺めながら、霊燼は肩をすくめていた。
 ――問題なし。一切、なし。
 実際、霊燼は数多の戦場において、これより惨い致命傷を負いながら平然と生還してきた。この程度ならば槍を引き抜いて包帯ぐるぐる巻いて一週間ぐらい爆睡すればだいたい治る。
「魔月どの。卓の下に身を伏せておれ」
「む……」
 年若い戦友は、即座に状況を察してこちらの言葉に従った。
「治療が必要なように見えるが」
「後でよい」
 胸から巨大な鏃が飛び出ているが、心臓も肺も脊髄も無事だった。[そうなるように体をよじったのだ]。
 ――間一髪である。
 霊燼は、背中に手を回し、異物が体内へ侵入した箇所を探る。
 ふわふわと柔らかい感触が指先に触れた。引き千切って目の前にもっていく。
 綿だ。己の血に塗れ、真っ赤に染まっている。
「……なるほど。考えたものだな」
 どうやら散悟・ガキュラカは[気づいたらしい]。
 常軌を逸した洞察力だ。確かに、狼淵や魔月には荷の重い相手である。
 人類の未来のためにも、どうにかして己が打ち倒してやりたいところではあるが――
 ――いや、駄目だな。
 そういう思考は良くない。散悟・ガキュラカは勝てる戦いしか挑まぬ男だ。こうして仕掛けてきた以上、どのような展開になろうとも自分の身だけは確実に守れる手筈を整えているはず。
 わざわざそんな状況で決着を急ぐなど愚の骨頂。
 焦らずともあと一時間程度で典礼が始まる。散悟は霊燼の目前に立たざるを得ない。
 ――それまでなんとしても生き残ることこそ肝要。
 決意と共に、霊燼は喉を細かく震わせ始めた。

 ●

 今からほんの二百年前に滅ぼされた、奇妙な少数民族の話を聞いたことがある。
 彼らは一生の大半を、闇に閉ざされた洞窟の奥深くで過ごす。
 死人のように青白い肌と、退化し開かなくなった眼を持つ彼らは、しかしながら何の不自由もなく闇の世界を駆け回り、地底湖に潜む異形の魚や、菌樹の笠などを食べて命をつないでいた。
 その喉仏は大きく発達しており、女や子供であっても一目でそれとわかるほど膨らんでいる。
 彼らはこれを常に震わせて、常人には聞こえぬほど高い音を発し、その反響から周囲の状況を察知していたという。
 この驚愕すべき逸話を耳にした幼少のみぎり、霊燼は己を英雄の中の英雄たらしめる重要な鍵を見つけたと思った。
 ――反響定位。
 光に頼らずして視覚を得る、条理を越えた魔技。
 ……才能は、無論あったのだろう。
 だが、霊燼が反響定位を修得できたのは、英雄足らんとする自負と、それに裏打ちされた鍛錬の賜物である。
 彼は、背後から飛んでくる矢を「視る」ことができた。
 位置や向きのみならず、矢の細かな造形や材質までも把握できる。
 ゆえに、ただ大量に矢を射かけるだけの戦法ならば、霊燼は簡単に対処できた。
 とはいえ、反響定位も万能の知覚方法ではない。
 さしもの霊燼も、声帯はひとつしか持っていない。つまり、ものを喋っている最中は定位の精度が大幅に落ちるのだ。
 それでもまったく「視え」ないわけではない。常人に聞こえるほど低い音声でも、一応おぼろげながら飛来物の位置を察知はできる。
 普通の矢であれば、回避ぐらいは問題ないはずだったのだ。
 現在霊燼の胸を貫いている鉄槍には、ひとつ細工が施されていた。穂先の部分が綿によって包み込まれているのだ。
 硬い物体は音を反響するが、柔らかい物体は音を吸収する。
 定位の元となるべき反響が、ほとんど返ってこないのだ。
 決して飛び道具には向かぬほどの大鉄槍を用いたのは、綿が空気抵抗を受けて速度が減殺されるのを嫌ってのことだろう。かなり大がかりな射出装置を魔月の庭先に据えつけていたようだ。
 霊燼がこの攻撃を察知したのは、すでに回避が不可能になった直後であった。

 ●

 ――実に、見事である。
 だが、残念なことにこの一撃で霊燼は死ななかった。同じ手は二度と通用しない。
 散悟はここからどうするであろうか。知略というか、発想力の面では常にこちらの先を行く男だ。その行動を読むのは簡単ではない。
 ちらと卓の下の魔月に視線をやる。反響定位は続けなくてはならないので声はかけない。
 戦友はすぐにこちらの言いたいことを察したようだ。
「……不意討ちが失敗したのだ。常識的に考えれば、敵は撤退してゆくであろう。だが、これは戦にあらず。散悟・ガキュラカは餓天法師に気づかれぬように貴様を殺さねばならぬのだ。その大鉄槍を射出した装置や、そこに突き立っている毒矢など、数々の証拠品を残したまま撤退してゆくことは、奴の身の破滅を意味する」
 もちろん、普通ならそんなものは弱みにもならない。餓天法師は基本的に現行犯でなければ動かない。
 だが、現在アギュギテムには刈舞・ウィンザルフ・ザーゲイドがいる。
 あの胡散臭い司法剣死官ならば、ただそれだけの手がかりでも散悟・ガキュラカまで辿り着き、嬉々として餓天法師に密告するであろう。
「散悟がそれをわかっていないとも思えん。確実に我ら二人をここで始末するはずだ。しかし、次の一手が具体的にどのようなものになるかは余にもわからぬ。ゆえに、[そのあたりに明るい者と手を結んである]」
 霊燼は思わず眉をひそめた。何言ってんのこの子。
「刃蘭・アイオリアは正義の英雄なれば、卑劣外道なる邪悪の徒を決して放っては置かぬ」
 そう言って魔月は立ち上がると、霊燼と背中合わせに身構えた。
 しゃらん、と澄んだ抜刀。
「どれほど歪んだ独善であろうと、そればかりは動かしえぬのだ」
 瞬間、全方位から鉄槍が飛んできた。

 ●

 刃蘭・アイオリアは、弱者が助けを求める声を決して無視しない。
 人を殺す言い訳を常に捜しているからだ。
「あっちゃぁ~やっちゃったねぇ、クズ? 見ちゃったよオレっち。クズがクズいことするの見ちゃったよぉ~オイオイまいったねこりゃ」
 ぺちぺちと自分の頭を叩きながら、困ったように笑った。
「オレっち正義だから? やっぱそういうの? 義憤に駆られるっていうか? 見過ごせないっていうか? ありていに言うと死ねって感じ? わかる? クズ? ねえねえわかる?」
 にっこり笑う視線の先には、一人の男の後姿がある。
 長く伸びた黒髪が、風に身をくねらせてその男の背中を覆っている。
 左の肩は分厚い肩当てを装着しているが、右の肩は露出していた。脂粉でも塗りたくったような青白い肌である。
 露出した右腕には、中に巨大な球根でも埋まっているのかと思えるほど隆々とした筋肉のうねりが見て取れた。
 ところが、肘や手首などの関節部分は、骨の接ぎ目の構造がたやすく見て取れるほど痩せこけている。
 異様な筋肉の付き方だ。いったいいかなる鍛錬を積めば、このような肉体が出来上がるのであろうか。
 刃物や棘の生えた黒い装甲板が、革帯によって要所要所に固定され、全体の輪郭を禍々しいものにしていた。
 これが、散悟・ガキュラカ。
 異形の魔戦士とでも形容するほかない佇まいだ。
 その男は、ぬるりと刃蘭に振り返る。
 動作に段階がない。いつの間にか始まり、いつの間にか終わっている。生理的嫌悪を覚えるほどなめらかな身のこなしであった。
 ――へえ。
 刃蘭は眼を細めた。呼吸の外し方が巧い。手加減などしようものなら瞬殺されかねない相手だ。
 その男の顔が刃蘭の方を向いた。
 両頬が耳まで引き裂かれ、歯茎が剥き出しになっていた。歯の一本一本が犬歯のように尖り、互い違いに噛み合わされている。
 常に下卑た笑みを浮かべているような、まともな神経の持ち主ならば正視に堪えぬであろう顔である。
 眉目は黒髪で隠れているため、余計に口元に目が行った。
「うわぶっさ! マジぶっさ! ちょっとちょっとー! 隠しなさいよ! その汚ねえツラ隠しなさいよ! ものっそい景観を損ねてるよアンタ! ないわー、超絶美形正義であるところのオレっちには耐えられないぶささだわー! 死ねよクズ」
 とりあえず満面の笑顔で煽る。その反応から敵の性情を探る。
 無反応。噛み合わされた牙の間から、ゆったりと呼気が漏れるばかり。
 つまらん。
 鼻を鳴らすと、刃蘭は[手の中に握り込んでいたモノ]をくるりと回転させた。
 瞬間。
 散悟のいた地点が突如爆裂し、凄まじい勢いで土煙が噴きあがった。
 直後に火花。
 刃蘭が手の得物を横一閃に振るい、飛来物を打ち落したのだ。
 と同時に、振り抜いた腕の延長線上にある数十本の木々が、一斉に切断された。
 轟音とともに倒れてゆく太い幹の数々。条理を超えた現象だが、驚き目を見張る者などこの場にはいない。
 視界が開け、日差しが降り注いでくる。散悟の死体はない。仕留めそこなっている。
 舌打ち。
 冗談としか思えない敏捷性だ。
 刃蘭はちらりと足元を見やる。打ち落したのは苦無(クナイ)か。餓天法師の目の届くところでは絶対に出回らぬ暗器だ。
 明らかに散悟はこちらの拷問具の性質を知悉している。さもなくばこの反応速度はありえない。
 目を鋭く細め、じっと待つ。
 今の一瞬の攻防で生じた土煙にまぎれ、奴は姿を眩ませた。しかしここで慌てて周囲を見回すのは危険である。チョキを視界に入れれば即死は免れない。
 代わりに、手の中のモノを、弄ぶように回転させる。
 蒼く澄んだ光を宿す、結晶質の戦斧を。

 ●

 号して「相似斧」。銘は「アナロギア」。
 最強最悪と謡われし神聖八鱗拷問具(アルマ・メディオクリタス)。
 その評価が真に正しいか、刃蘭自身は懐疑的であるが、喰らった命の数で言えば間違いなく拷問具中最多。他の十五振りが刈り取ってきた命をすべて合わせてもなお相似斧アナロギアが単独で上回る。殺人という概念が形象化したかのごとき存在であった。
 しかし――そのような壮絶な歴史を背負っているとは想像もつかぬほど、アナロギアは矮小であった。
 手の中に握り込んで隠せてしまう程度の、鼠一匹殺すのにも苦労しそうな小ささ。
 最初に見たときには唖然としたものである。
 刃蘭の背後で、剛風が渦巻いている。明らかに自然の風ではない。粉塵が巻き込まれ、その全容を浮き彫りにした。
 桁外れに巨大な斧が、刃蘭の背後に浮遊し、回転しているのだ。
 その大きさたるや、人の身では持ち上げることも叶わないであろう。餓天使の剛腕でも厳しい。もし自在に振り回せたら、城壁すら容易く両断してしまえそうな巨刃であった。
 [刃蘭には、それができる]。手の中の小さな斧を振るえば、巨大戦斧が数十倍に拡大した規模でその動きを寸分違わず模倣するのだ。
 これこそが相似斧アナロギア。単純明快にして凶悪無比。
 普段は完全に透明不可視だが、土煙を巻き込んでいる今だけはうっすらと姿を視認できる。
 アナロギアの相似体は、刃蘭の背後を完全に守っていた。

 ●

 ――さて。
 奴はどう出るか。
 恐らく、散悟としては、積極的に刃蘭と事を構えたいとは思わないだろう。八鱗覇濤の組み合わせ表を見れば一目瞭然。散悟と刃蘭が当たるとしたら決勝戦まで二人とも勝ち上がらなければならない。それまでのどこかで刃蘭が敗れる可能性を考えれば、謀殺の優先順位は最下位と考えてよい。
 ――まぁ、負けるつもりなんかこれっぽっちもねえけどな。
 ともかく、散悟側はそう考えているはずだ。ゆえにここは逃げを打つ可能性が最も高い――
 などと思った瞬間、背後で足音がした。
 土を踏みしめるわずかな音が、だんだんと近づいてくる。
 逃げなかった。そしてためらいなく近づいてきた。
 触れれば一瞬で肉片となって飛び散る不可視の盾があることぐらい散悟もわかっているはず。
 なのに、何故?
「……いやどーでもいっすわ」
 刃蘭がここで振り返るような愚か者ならば、伝説的な屍山血河を築き上げる遥か手前で敗れ死んでいる。
 背後にいるのは散悟ではない。
 雑な足運びから、それは確信していた。散悟の手勢であろう。ひょっとしたら何か弱みを握られて無理矢理協力させられていた哀れな善人なのかもしれないが、刃蘭は「やむにやまれぬ哀しい犠牲」というものが大好きである。
 瞬間――
 [両足首を、掴まれた]。
「あ?」
 下を見る。
 地面から生白い腕が生えてきて、刃蘭の両足をがっちりと固定している。
 直後に地面を押し破って、散悟の顔が現れた。
 頬が引き裂かれ、歯茎の剥き出しになった口が、威嚇するように開かれた。鋭い牙が糸を引き、長い舌が蛆虫のように踊っている。
 その喉の奥に、金属の輝きがあった。
「っ!」
 刃蘭は突発的に膝を曲げ、後ろへと倒れかかる。アナロギアの相似体はすでに動きを止めている。
 何らかの気体が吹きかけられる音。
 異臭が、漂ってきた。
 即座に呼吸を止めるが、少量吸い込んでしまった。
 脳髄が真綿で締め付けられるような、奇妙な酩酊が襲い掛かってくる。
 同時に、逆しまとなった視界の上限に、人影。
 胸元と腰だけを光沢のある革帯で覆った娘が、濁った狂気を湛えた瞳でこちらにチョキを出そうと動き出していた。
「遅ぇよ!」
 アナロギアを振るう。
 縦に、巨大な輪を描くように。
 剛風が巻き起こり、異臭を吹き払う。
 と同時に、散悟の手勢であろう娘が、相似体に斬り潰されて飛び散った。
 足首が、解放される。
 即応して踵落としを叩き込むが、土塊を巻き上げて散悟が飛び上がる方が一瞬速かった。
 双方が同時にチョキを出す。
 間髪入れずに相似体を振り下ろす――が、流水のごとき側転で回避された。
 刃蘭はそのわずかな隙に跳ね起きざま、アナロギアを振り回す。まるで癇癪を起した子供のような、雑な攻撃の連続。
 爆撃が連続し、巨大な鍬で耕されたように大地が爆ぜ、割れ、砕け、散った。極端な話、相似斧を扱うのに武術など必要ない。適当に振ればそれが究極の一撃となるのだ。破壊力を単純に質量と速度の積で求めるなら、この拷問具はまさに考えうる中で最強の力そのものである。動作の稚拙さとは裏腹に、相似体は的確に散悟を狙う。土煙はもはや奴の姿を隠さない。噴き上がったその瞬間に吹き払われるからだ。
 だが――刃蘭は今度こそ瞠目する。
 羽毛が、宙を揺れ動いている。そうとしか形容できぬ動きで、散悟・ガキュラカは極大威力の連撃をことごとく掻い潜っていた。アナロギアが巻き起こす颶風に乗り、意志なき枯れ葉のごとく舞った――かと思えば空中に巻き上げられた岩や樹木を蹴って縦横に跳ね跳びまわる。相似体より速く動くことなど人間には不可能なはずだが、こちらの斬撃が一度も当たらない。
 ――このブサクズ……六識魔爪の使い手かよ。
 〈帝国〉の暗部で蠢く恐怖の神話。姿なき殺戮の影。「暗殺」という単語が、餓天宗に戒められた現代ですら消滅せずに残り続けている最大の要因。
 一子相伝にして絶対必殺。現存する最後の暗殺技能大系――六識魔爪!
 思わず、笑みがこぼれた。最高だ。最高に潰しがいのあるクズだ。
 そして――奴は相似体の出戻りを[掴んだ]。不可視であり、重力の制約を受けないなどの奇妙な性質はあるものの、相似体はれっきとした物質だ。触れることも掴むこともできる。
 敵の意図を悟る。斧の動きを止めたが、一瞬遅かった。
 耳障りな哄笑を引き連れて、流星のごとく迫りくる散悟。三筋の紅紫の閃光が、刃蘭の肉を引き裂かんと飛び込んでくる。
 防御や回避などを一瞬でも思案していたら、刃蘭の命はこの時点で潰えていただろう。
 何も考えなかった。ただ強烈に踏み込んで、全体重を乗せた頭突きを叩き込んだ。
 脳髄が震撼し、視界が赤く染まる。鋭利な爪は刃蘭の背中と上腕を浅く抉っただけに留まった。
 直後に刃蘭はのけぞる。目の前を散悟の爪先が唸りを上げて昇って行った。空中に焦げ跡の残りそうな蹴り上げ。
 ――読めてんだよクソカス。
 アナロギアを横薙ぎに払う。蒼き刃が宙返りを決める凶手の背骨を断ち切るかと思えた瞬間、奴は背筋を異常な角度で反り返らせた。そのままこちらに逆しまの顔を向け、両手を突き出してくる。
 一瞬早くそれに反応した刃蘭は、対抗するようにアナロギアを持たぬ手でじゃんけんに応ずる。
 ――こちらの方へ振り向きざま、両手でじゃんけんを挑んでくる者が出す手には、一定の傾向がある。
 どちらか片方がかなりの高確率でチョキとなるのだ。
 このため、こちらがグーを出しておけば最低でもあいこに持ち込める。
 出し合った手は――散悟がチョキとパー。
 こちらがグー。
 つまり引き分け。
 ――ではない!
 同時に迫りくる手甲爪こそが本命。刃蘭はグーを出した動きを拳撃に繋げる。
 頬や肩に幾筋も裂傷が走り、紅く飛沫(しぶ)くが、委細構わず殴り抜いた。
 拳に鼻の骨を砕いた感触が残る。
 縦に回転しながら散悟は着地。間合いが離れた。
 不意に訪れる静寂。
 二匹の怪物が、睨み合う。
 ごぎり、ごぎりと異様な音がした。
 散悟が肩の関節をはめ直しているのだ。
 ――地虫かよ。
 この究極の暗殺者がいきなり地面から現れた手段がようやくわかった。
 相似斧アナロギアが地中を通過した跡を利用したのだ。
「アホですか君は」
 ――均衡を、欠いている。
 刃蘭が抱いた、散悟・ガキュラカという男への印象であった。
 いくら不意を突くためとはいえ、まっとうな損得計算ができるならそこまではしない。わざわざ自分から両腕の動きを不自由にするなど危険が大きすぎるし、そもそも相似体の通過跡が刃蘭の真下まで続いている保証もないのだ。
 どうもこの男、敵の不意を打つことに病的なまでのこだわりがあるようだった。
 いましがた見せてきた猿(ましら)のごとき身のこなしは、少なく見積もって十年以上の殺戮遍歴を暗に物語っている。
 つまりそれだけの年月を、こんな異常なまでの不意討ち偏重主義で通してきたのだ。
 餓天宗が衆生の価値観を律しているこの世界において、本来生まれるはずのない感性である。
 ――まるで、[この世界の住民ではないかのような]。
 一瞬そう考えた自分の稚気に、刃蘭は苦笑とも自嘲ともつかぬ感慨を抱いた。
 散悟が、ぐつぐつと喉を上下させて鳴らす。
 喉の奥から巨大な芋虫が身をよじって顔を出そうとしているかのような、目を背けたくなる蠕動だった。
 最初は嗤っているのかと思われたが、喘鳴じみた音は徐々に間隔が短くなってゆき、やがてひとつながりの声となる。
 垂れ流される痴愚者の呻き。
 それに抑揚がつき、牙に噛みしめられるように意味を掘り込まれてゆく。
〝お前の〟
 赤黒く濡れ光る舌がのたくる。
〝お前の、強姦は――〟
 刃蘭は、不可解な印象に襲われる。唇も、頬肉もない男が、どういうわけか口を歪めて嗤っているように見えたのだ。
 そして、奴は言った。

〝――女々しい〟

 蹴り抜いた地面が砕け散る音を遥か後ろに置き去りにして、刃蘭は哄笑を上げながら突撃していた。
「あっひひひひひぃぃぃぃぃっひっひっひひひひっひひひひぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!!」
 大気の壁を突き破るような爆速を乗せて、横から膝を叩き込む。
 常人では反応すら不可能な超絶的強襲。相似斧頼りの鈍亀と思わせておいての一撃で、幾多の敵(カス)どもを葬り去ってきた。
 まともに喰らえば頭蓋が陥没どころか肩から上を吹き飛ばすだろう。
 蹴り――抜く。
 柔らかいものと硬いものをまとめて叩き潰す、あの甘美な感触はない。
 視界に姿も見えない。
 ――想定内。
 これはきっかけを与えてやったに過ぎない。
 撤退のきっかけを。
 刃蘭はすでに、こちらに向かってくる二つの足音を敏感に察知していた。刃蘭の内密の同盟者たる魔月と、その朋友霊燼。散悟の手勢をすべて片づけて、こちらに駆けつけてきたのだ。
 ――来なくていいのに。
 余人がどう思っているかは知らないが、刃蘭は第七炎生礼賛経典義(テスタメントゥム・デュエリウム)を尊重している。目の前のクズカス野郎と違って、自分の強さを大いに誇っているからだ。相手が多勢なのは構わないが、こちらが多勢で取り囲むなど絶対に御免被る。
 ゆえに、この場は見逃す。
 睨み合ったままでは動くに動けないだろうから、挑発に乗ったフリをして膠着を壊してやったのだ。
 案の定、散悟は目を疑うほど上空へと跳躍していた。
 縦に回転しながら軌道を調整。音もなく枝の上に着地する。
 背を丸め、両手で両足を包むような姿勢で、じっとりとこちらを見下ろしてきた。
 風が吹き、散悟の黒髪を揺らす。
 紅い血管が絡み付く眼球に、点のような瞳が穿たれている。
 失望と、軽蔑の色をありありと浮かべながら、奴は身を翻し、枝葉の中へと紛れていった。
「ふん、仕留めそこなったようだな」
 尊大で冷徹な声が投げかけられてきた。
 特徴的な、二つの人影。
 洗練された佇まいの貴公子と、縮尺を間違えているのではないかと思うほど雄大な体躯の偉丈夫。
 魔月の白い頬には、小さく返り血がついていた。
「まあよい。警護、大義であった」
「あれ、取り逃がしたから叱られるかと思ったんスけど」
「咎めはせん。もっとも、[わざと見逃したのであればこの場で手討ちにせざるをえんが]」
「あっひひひひ、まっさかぁ~! んなわけなーいじゃーん? ヤっだなぁ魔月(まが)っつぁん、オレっちとアンタの仲じゃんかよぉ~」
 げらげら嗤う。
 馴れ馴れしくばしばしと肩を叩く。
「おい、カザフ公。これはいったいどういうことだ」
 魔月の傍らの巨漢が憮然と言い放った。
「どう、とは」
「何故にこの人獣と気安く言葉など交わしておるのだ」
「確かに、刃蘭・アイオリアは生まれてきたことが誤りと言うほかない草鞋虫以下の吐瀉物以下の屑畜生であるが、だからといって利用価値がないわけではない」
「ひでえ! オレっち大傷心!」
「そういうことを言っているのではない! 獣器ごときの力では歴史など動かんと言っていたのは貴公ではないか!」
「大傷心! 大傷心! ア、だっいしゅーしんっ!」
「黙りおれい下郎ッ!!」
 大気が雷撃を帯びたかのごとく震え、霊燼の大喝が轟き渡る。
 並の男であれば失禁して平伏は免れぬ迫力であったが、刃蘭は眉一つ動かさなかった。
「は? 何スか? オレっちなんか悪いことしましたか? エッ? なになに? なあに?」
 霊燼のこめかみに太い血管が浮かび上がる。
「つか何アンタ、なんで胸から槍生やして平然としてんの? うっわもう軽く引くんですけど……え、マジで? マジでこれ貫通してんのムグッ」
 雷光の速度で伸びた巨腕が、刃蘭の口ごと顎骨全体を掴み、持ち上げた。
「下郎。自分で口を閉じられぬのなら、みどもが代わりに閉じてくれよう」
「むごッ、むぐッ」
 先ほどまで散悟と神速の攻防を繰り広げていた刃蘭だが、今の霊燼の動きには全く反応できなかった。
「霊燼・ウヴァ・ガラク。貴様何か勘違いしておらんか」
「何のことだ」
「こやつは人器よ。虚栄心の奴隷なれば、余の道具として使い潰すに不足はない」
「……教えてくれ、朋友よ。この男とどのような契約を交わしたのだ」
「案ずるな。[あのこと]については話していない。知る者は今も我ら五人のみよ」
「……むぅ」
 はぐらかしたな、と刃蘭は思った。
 あのこととやらが何なのかはわからないが、魔月は霊燼の質問に答えていない。
 ――当然だわな。
 刃蘭と魔月は、以前から密かに同盟関係を結んでいる。その盟約において刃蘭が負う責務は、第一に決闘典礼以外の平時における魔月の警護。
 第二に、明日の二回戦で狼淵・ザラガと対峙した時に[ある行い]をすること。
 その二つを依頼され、二つ返事で引き受けた。
 これに対して刃蘭が得る見返りは――ない。
 強いて言うなら、魔月が掲げた最終的な目標が、刃蘭の正義の信念と合致したからだ。
 ――やっぱぁ? オレっち正義だっしぃー? 同じく正義しようって奴にはぁー? 手ぇ貸さないとねぇー?
 だが、その最終目標には、ほんの些細ながら犠牲を伴う。霊燼のような甘ちゃんは、その犠牲を絶対に許容しないであろう。
 ゆえに、誤魔化した。
 実に陰湿な食わせ者である。
 だからこそ気に入ったのだ。正義の信念のために、ありとあらゆる尊いものを、躊躇いも後悔もなく供物に捧げ、眉ひとつ動かさない。
 親近感――という言葉の意味を、刃蘭は初めて理解していた。
「ひとまず、その手を離してこっちを向け。槍の前後を切り落とす」
「……わかった」
 魔月が腰元に手を伸ばしたかと思えた瞬間――閃光が、二度。
 カチリ、と鍔鳴りの音。
 同時に、霊燼を貫いていた鉄槍の石突と穂先が地面に落ちた。切断面は鏡のごとく滑らかだ。
 昨日見た螺導・ソーンドリスの神がかった剣捌きに比べれば児戯のようなものだが、それでも達人と称してよい腕前だ。魔月の年齢を考えれば天才的と言うほかない技巧である。
「引き抜くなら包帯を用意させるが」
「いや……散悟・ガキュラカとの典礼の後でよい。一時間程度ではさすがに回復せんからな。引き抜いて失われる血の方が問題よ」
 いや時間をかければ回復するほうがおかしい。それは世間一般で致命傷と呼ばれるものだ。
「さて、ともかく散悟・ガキュラカの卑劣なる謀殺はしのいだり! これでもはやあの男は餓天法師の監視下で我が前に立たざるをえん。後は純粋なる戦士の力量のみが勝敗を分かつというわけだな!」
「まぁ、そうなるな」
「ふふん、久々に腕が鳴るわい。散悟・ガキュラカは正面から戦っても強大極まる武芸者よ! あれほどの力量がありながら姦計をめぐらせることしか考えられぬのは、あ奴にとっての不幸と言うほかあるまい。いさおしをあげ、弱き者らの盾となることこそ男としての真価なれば、その道から目を背けたるは自らを神(ヘビ)の救済より遠ざけるにひとしい」
「相も変わらず筋肉で思考しているな貴様は。そう楽観できる状況か。その胸の傷、いくらなんでも殺し合いに何の支障もないということはあるまい」
「別に仔細なし! 胸据わって進むなり!」
 腕をぐるぐる回して生気の横溢ぶりを主張。
「ひと段落ついたところで呑み直すか! 魔月どの、つきおうてもらうぞ!」
「エッ、マジ? マジマジ? 酒? 酒いっちゃいますか?」
「貴様は帰れ下郎」

後書き


作者:バール
投稿日:2016/06/27 20:39
更新日:2016/06/27 20:39
『鏖都アギュギテムの紅昏』の著作権は、すべて作者 バール様に属します。

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作品ID:1748
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