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作品ID:1778
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異界の口

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


一章 セイ 一

前の話 目次 次の話

 山奥に、大きな学園がある。
 高々とした山に囲まれた田園風景のどん詰まり。裏には迷ったら二度と出てこられないような山がそびえ、周りは高い塀で囲まれている。
 だだっ広い敷地には、大きな木造の校舎はもちろん、立派な庭や、図書館棟、学生寮がちりばめられていて、その中に、だいたい六歳から十五歳くらいまでの子供が押しこめられているのだ。
 その数、四百余り。
 彼らが外の世界に出ることができるのは、春、夏、冬の長い休みのみ。逆に言えば、それ以外のことは学園内で事足りる。
 何の不自由のない学園生活。
 後々考えてみれば、そんなことは普通ではなかなかめぐりあえない環境である。かなり特殊な場所だ。
 そのせいか、自分の友人など、わけアリのやつばかりだった気がする。
 そう、わけアリだ。ちなみに自分もそうであったが、ここで多くを語る事はあるまい。
 たとえば、大物政治家の表に出せない子供だとか。
 たとえば、親が亡くなり、親戚をたらい回しにされた子供だとか。
 たとえば、家出をしてきた子供とか。
 たとえば、ちいさな村で鬼呼ばわりされて迫害された子だとか。
 閉鎖的空間だったこともあり、このテのうわさはつきなかった。面白おかしく語りつがれるウワサ。自分に矛先さえ向かわなければ、みんな楽しそうにささやきあう。
 そのうわさたちの中で、際立ってささやかれていたものがあった。
 まるで学園の七不思議のように語られていたのは、一人の少年だ。
 綾瀬蛍。
 名前まではっきりささやかれたわけではない。ひそかに語りつがれていた彼のあだ名は「大重鎮」だ。
 曰く、彼は幽霊である。
 曰く、彼を見たものは、一週間以内にいなくなる。
 曰く、ずっとこの学園にいて、休みのときさえ外に出ない。
 曰く、ボールをぶつけると消える。
 曰く、そこにいて、そこにいない。
……と、さまざまなものが続き、七不思議どころか二十不思議くらいになってしまう。
 そんな綾瀬蛍だが、確実に自分が言えることがある。
 彼は、現在自分の隣に住んでいる、ということだ。
だから名前も知っているし、うわさがほとんどウソなのも知っている。
 学園の一番北にある「ノウゼンカズラ寮」の二階の端に、綾瀬蛍は住んでいる。自分の部屋はその隣だ。
 だから、彼は幽霊ではない。
 それから、一週間以内にいなくなるというのも嘘だ。そんなことがおきたなら、今自分はここにいない。彼とは、かれこれ三年の付き合いだ。親友と言ってもいいくらいだから、自分は彼の事を「ホタル」と呼んでいるし、ホタルもこっちのことは「セイ」と呼ぶ。
 ボールをぶつけると消える、というのは、きっと保健室からしばらく出てこなくなるからだろう。ぶつけたことのある本人が言うのだから間違いない。
 しかし、うわさというのは怖いもので、たまに真実も混じっているのだ。
 ホタルは、休みのときも外に出ない。
 一回、休みの前に聞いたことがある。
「ホタルは帰らないの?」
 彼は、あいまいにうなずくだけだった。
 きっと帰る家がないのだろうと思っていたら、夏休みに帰るところのない生徒たちが、引率つきで臨海学校に行っているというのを後で知った。ホタルはそれにすら参加していない。
 夏休み中も、図書館に入りびたっている。
 そして、最後のひとつを聞いたとき、自分は思わず失笑してしまったのを覚えている。
 そこにいて、そこにいない?
 なんて的を射ているんだ!
 ホタルは、存在感が薄いと言えばいいのだろうか? いや、うわさ的に言えば幽霊のようなのだ。
 暗黙の了解でもあるかのように、彼の周りには人がいない。そのくせ、巧妙に普通の生徒をやっている。
 先生に許される程度に授業をサボり、黒板消しをドアにはさみこむ。
 彼のいたずらが成功した瞬間、まんまと罠にはまった先生は、必ずこちらに向かって言ったものだ。
「下田ぁ!」
 違います先生、自分ではないんです!
 言い訳をしている自分を見るホタルの目は、いつもにこやかに笑っている。
 読書好きでもの静かな、時にいたずらっ子な少年は、確かにそこにいる。
 いつも自分に罪を押し付けてすみっこで笑う少年を、自分は嫌いになれなかった。それは、ホタルがとことん付き合いのいいやつだったからだろう。
 説教以外のことなら、とことん。

後書き


作者:水沢妃
投稿日:2016/08/13 21:44
更新日:2016/08/13 21:44
『異界の口』の著作権は、すべて作者 水沢妃様に属します。

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