作品ID:1779
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異界の口
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結
前書き・紹介
一章 セイ 二
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毎度おなじみだが、自分は夏休みの最初の一週間を学校で過ごす。
補習なのだ。
ホタルは、巧妙にサボってもテストで点数を取って、決して通知表に一などつけない。
自分は、サボり癖があるくせにテストは大嫌いな人間だ。
毎年、理科の眼鏡教授がニコニコ顔で目の前にプリントの山を積んでいくのを、じっと見ていることしかできない。
夏休みに入り、誰もいなくなった教室で、自分はプリントを解く毎日だ。
「セイはね、まじめに授業を受ければいいんだよ。」
実家の風鈴を思わせる、少し赤いホタルの顔を見て、自分はため息をついた。
「ホタルはいいさ。それで怒られないから。」
そして、補習もないのにここにいる。
目の前の少年はくすくすと笑った。ほおづえをついて。どこか女子っぽい。
さらさらの髪も、真っ白な肌も、夏用のカーディガンを羽織っているところも、スカートなんぞはかせたら女の子そのものだ。
すっ、とホタルの目線が本にすい寄せられる。
「何を読んでいるんだ?」
「きっとセイは名前すら知らない作家の書いた、冒険小説さ。」
内容は聞かなくてもわかる。だいたいホタルが読むのは、とらわれの身の主人公が自由を手に入れる話だ。
同じような小説をくり返し読むホタルの顔は、楽しそうだ。
自分は顔を下に向けて、プリントに向き直った。算数の数式の中で、数字が踊っている。
セミの声が遠く聞こえる。
補習なのだ。
ホタルは、巧妙にサボってもテストで点数を取って、決して通知表に一などつけない。
自分は、サボり癖があるくせにテストは大嫌いな人間だ。
毎年、理科の眼鏡教授がニコニコ顔で目の前にプリントの山を積んでいくのを、じっと見ていることしかできない。
夏休みに入り、誰もいなくなった教室で、自分はプリントを解く毎日だ。
「セイはね、まじめに授業を受ければいいんだよ。」
実家の風鈴を思わせる、少し赤いホタルの顔を見て、自分はため息をついた。
「ホタルはいいさ。それで怒られないから。」
そして、補習もないのにここにいる。
目の前の少年はくすくすと笑った。ほおづえをついて。どこか女子っぽい。
さらさらの髪も、真っ白な肌も、夏用のカーディガンを羽織っているところも、スカートなんぞはかせたら女の子そのものだ。
すっ、とホタルの目線が本にすい寄せられる。
「何を読んでいるんだ?」
「きっとセイは名前すら知らない作家の書いた、冒険小説さ。」
内容は聞かなくてもわかる。だいたいホタルが読むのは、とらわれの身の主人公が自由を手に入れる話だ。
同じような小説をくり返し読むホタルの顔は、楽しそうだ。
自分は顔を下に向けて、プリントに向き直った。算数の数式の中で、数字が踊っている。
セミの声が遠く聞こえる。
後書き
作者:水沢妃 |
投稿日:2016/08/13 21:46 更新日:2016/08/13 21:46 『異界の口』の著作権は、すべて作者 水沢妃様に属します。 |
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