小説を「読む」「書く」「学ぶ」なら

創作は力なり(ロンバルディア大公国)


小説投稿室

小説鍛錬室へ

小説情報へ
作品ID:1794
「異界の口」へ

あなたの読了ステータス

(読了ボタン正常)一般ユーザと認識
「異界の口」を読み始めました。

読了ステータス(人数)

読了(70)・読中(0)・読止(0)・一般PV数(224)

読了した住民(一般ユーザは含まれません)


異界の口

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


二章 瑠璃 六

前の話 目次 次の話

 参道は、どんどんせまくなっていく。
 祭りのにぎわいが遠ざかって、自然と穂高たちの歩みもゆっくりになった。穂高は走らなくなった時点でわたしをつかむのをやめていた。
 階段の脇には、鳥居が無数のアーチを作っていた。ホタルは狐面をかぶらされて息苦しそうだ。
「兄さん。どこまで行くの。」
「奥社だ。」
 奥社といえば、神社の中でも一番奥にある、階段を登りに登った先にある社のことだろうか。
 確か、もはや祠ぐらいしかないものだと聞いたことがある。
 祭りの夜にだけ解放されるそこに行けるのは、ごく一部の人間だけだという。
「いいか、ホタル。奥社に行って、そこにいるばあやと話をしろ。そうすれば、ばあやがなにもかも答えてくれる。」
 穂高は、わたしをホタルの首にかけた。
「お守りだ。守ってくれる保障はないが。」
 わたしは蹴りの一つでも入れたくなったが、あいにく足がない。
 ホタルは一つうなずいて、階段を上がっていった。穂高はついてこないようだが、ホタルが一回も振り返ることがなかったので、私はついぞやつの姿を見ることはなかった。
 ホタルはほぼ崖に近いような石段を上がっていく。一度獣道のようになった参道は、ゆるやかな場所になるとまた階段になった。
 後ろを振り向けば、祭りの光が一本の筋のように輝いている。
 ホタルは息をととのえていた。ふだんろくに運動をしていないのだろう。穂高と一緒だ。
「行くの、ホタル。」
「行くよ。」
 ホタルはわたしを両手で持ち上げた。
「だって、ぼくは自分のことが知りたいのだもの。さっきの、あれが、なんなのか。」
 なるほど。先ほどの現象の正体を、ホタルも知らないのか。
 意を決したように、ホタルは階段を登った。
 その先には、竹林があった。
「ホタル。まだ着いてないらしいぞ。」
 もしかしたら、穂高はここまで来るのが面倒で、途中で引き返したのかもしれない。
 ため息の後、ホタルはぎょっとしたように立ち止まった。ついでにお面を顔の横にずらす。
「どうした?」
「瑠璃さん。あれ……。」
 ホタルの指差す先。竹林の向こうに、ぼんやりとした光が見える。一瞬、祭りの中に戻ってきてしまったのかと思った。
 竹林は、やがて広い広場へと姿を変えた。
 広場には大きな階段があった。幅が広すぎて階段に見えない。ひな壇といったほうがいいだろう。
 おそるおそるひな壇を歩いていくと、一番上に立派な社があった。四本の柱が屋根を支えていて、中は吹き抜け。障子も板戸もない。ただ、向こう側は見通せなかった。数えきれないほどの灯ろうが、あわく光を発しているのだ。
 建物のすぐ近くまで来て、ホタルは光を見つめた。
「これは綺麗だね。」
 どう見たって怪談話だ。
 そのとき、暗闇の中にぽっかりと現れた奇怪なものの縁側に、人影が見えた。
「こんばんは、言の葉の子や。」
 着物を着たおばあちゃんだった。

後書き


作者:水沢妃
投稿日:2016/08/13 22:27
更新日:2016/08/13 22:27
『異界の口』の著作権は、すべて作者 水沢妃様に属します。

前の話 目次 次の話

作品ID:1794
「異界の口」へ

読了ボタン


↑読み終えた場合はクリック!
button design:白銀さん Thanks!
※β版(試用版)の機能のため、表示や動作が変更になる場合があります。
ADMIN
MENU
ホームへ
公国案内
掲示板へ
リンクへ

【小説関連メニュー】
小説講座
小説コラム
小説鍛錬室
小説投稿室
(連載可)
住民票一覧

【その他メニュー】
運営方針・規約等
旅立ちの間
お問い合わせ
(※上の掲示板にてご連絡願います。)


リンク共有お願いします!

かんたん相互リンク
ID
PASS
入力情報保存

新規登録


IE7.0 firefox3.5 safari4.0 google chorme3.0 上記ブラウザで動作確認済み 無料レンタル掲示板ブログ無料作成携帯アクセス解析無料CMS