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作品ID:671
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黄昏幻夢

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 完結

前書き・紹介


二章 二 メイに会える夕方

前の話 目次 次の話

 メイにあった次の日から、修行が始まった。

 まだぎっくり腰の治らないじーさんの言うままに、細は小さなものを成らせていった。

 あるときは、神社で泣いていた女の子の落としたハンカチだったり。

 じーさんの老眼鏡だったり。

 また、学校に忘れてきたノートを、「あ、忘れた!」と思った瞬間に目の前に成らせてしまったり。 

 次の日、ロッカーや机の引き出しを見てみると、ノートがなくなっていた。



「『成らせ』には、二種類ある。一つは、ないものを成らせること。もう一つは、あるものを自分の目の前に持ってくることで、成らせたように見せるもの」

 腰の完治したじーさんは、いつものように石段に座り、竹箒を杖代わりにしていた。さながら仙人だ。

 細は、階段から『仙人』を頬ずえついて見上げた。

 夏も終わりに近づき、修行が始まって一ヶ月がたとうとしていた。その間、細はメイにお目にかかったことがなかった。

 近道に懲りたのかなー、とじーさんの話を聞き流しながら考えていると、じーさんが竹箒で細の頭をバシッと叩いた。

「ったー!」

「魔術士よ。しっかり話を聞かんかい」

「まだ魔術士に完璧になったわけじゃないだろ」

「そう言うな。もうすぐ、お前は魔術士になれるぞ」

「……そうなのかっ?」

 細は、真剣にじーさんを見た。

「修行を始めてから、一ヶ月になった。小さなものばかりだが、お前はあらゆるものを成らせられるようになった。それだけで、条件はそろうんじゃよ」

 じーさんは慎重に立ちあがった。

「秋祭りの夜。お前は、幻成の魔術士になる」

 まるで、予言のようだった。

 なんだか、秋祭りの後、自分が別のものになる気がして、怖くなった。

(……いっそ、誰かを道ずれにするとか?)

 細は、自分で思っておいて、いやいや、と首を振った。

 じーさんが、なんだ、どうしたとでも言いたげな顔をした。 





「細さーん! 覚えてます? メイでーす!」

 細が竹林を歩いていくと、遠くに懐かしい人影が見えた。

「ああ、メイかあ。ずいぶんと久しぶりだな」

「はい。ちょっと家に篭もり気味だったので。……って、登校拒否とかじゃないですよっ。どうせ夏休みだったし、半分は旅行に行っていて、半分は家に篭もって宿題とか」

「ああ、そっか。……夏休みだもんな」

 細は、修行で夏休みをつぶしていた。

「そうだ! 細さん、秋祭りに誰かと行きますか?」

 唐突に、メイがチラシを取り出していった。

「秋祭り?」

 さっきの話、聞こえてたのかなあ、と冷や汗をかいたが、どうやらもらったチラシを見ていたところで細にあったので、聞いてみただけらしい。

「特に予定はないけど」

 と、言ってから魔術士になることを思い出して、(やべっ)と思ったが、

「じゃあ、一緒に行きましょう!」

 きらきらした目でメイが見てくるので、

「……う、うん……いいよ」

としか言いようがなかった細だった。

後書き


作者:水沢はやて
投稿日:2011/05/07 22:10
更新日:2011/05/07 22:10
『黄昏幻夢』の著作権は、すべて作者 水沢はやて様に属します。

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作品ID:671
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