作品ID:770
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欠片の謳 本当の欠片の謳
小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 休載中
前書き・紹介
守ると決めた、少女の謳
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「拓也君!」
「!?」
殆ど反射的に首を後ろにずらした。一瞬前まで首のあった場所を、銀色の一閃が煌く。
「『野良』!?」
「拓也君あたしの後ろに隠れて!」
眞由が人間を卓越した速度で駆ける。瞬く間に刃物を振るい拓也に襲い掛かった『野良』の懐に飛び込む。駆けた勢いを左手に込める。
「は!」
思いっきり斬りかかった男の顔面を殴り飛ばした。冗談のように何度もバウンドして男はごろごろ吹っ飛んだ。眞由は更に転がる男に追撃する。起き上がる前にナイフを奪い取り腹部を蹴飛ばす。
「がぁ!」
「死ねろくでなし!」
眞由の攻撃は罵倒と共に雨のように男の体を打つ。容赦など無い、何度も受ければ流石に死ぬ。だが眞由はやめない。再び立ち上がり、襲いかかかることを懸念しているから。念には念を込め、壊れるまで蹴り続ける。
「眞由やめろ! 死ぬ!」
「駄目! 拓也君躊躇いは駄目だよ絶対!」
拓也の制止など聞かない。ただ壊す、壊す。完全破壊しないと危ない。自分ではなく、拓也の身が危なくなる。危険な芽は、何であろうが摘んでおく。それが今の眞由の正義。
「眞由! もういい!」
「……分かった」
死ぬ一歩手前。肋骨の折れるグロテスクな音を聞いて拓也は顔を顰める。男は動かない。いや、倒れて痙攣しているから死んでないはず。でもあの様子だと、内臓がいくつか潰れてもおかしくない。眞由の身体能力、感応能力は常人の比ではない。軽く殴っただけでコンクリートの壁に穴を開けるレベルだ。あんな力で何度も蹴られれば無傷ではいない。
「拓也君、大丈夫!?」
「あぁ、問題ないぞ」
心配そうに駆けて来る眞由の頭をぽんぽんと軽く叩く。眞由は少しくすぐったそうにはにかむと、にぱっと笑った。屈託の無い、拓也の一番好きな笑顔。
「いやしかしビックリしたな」
「拓也君、ほんと良かった。怪我なくて」
「眞由もな」
「あたしは少しの怪我ならすぐに治るからだいじょうぶだよ?」
「あほ。俺が心配するって言ってんだ」
「……えへへ」
どこからどうみてもバカップルそのものだが、近くには痙攣する男の亡骸(まだ生きているが放置=死、決定)があることを忘れてはいけない。
「今日で3回目だね」
「何でかよく襲われるな」
「拓也君、『野良』の中で有名なの?」
「知らん。俺は栗生みたいに『野良狩り』でもなんでもない単なる市民だぞ」
「あ?…『野良狩り』かぁ」
眞由はかなり苦い顔をする。眞由は過去に『野良』だった訳だし、何か嫌な思い出でもあるのだろう。疑問符が拓也の顔に浮かんだのが分かったのか、眞由は説明した。
「あたしさ、過去に『野良狩り』の連中と何回もぶつかってるの。それは多分予想できてると思う」
「あ、やっぱり?」
「うん。だけどね、あたしは唯一『野良』の中で『野良狩り』と同等にやり合える存在だったんだ」
「は? おい待て、じゃあお前。栗生と同等なほど強いのか?」
「え? ああ、栗生君ね。んー…どうだろう? あたしは、何回か戦ってるけど。でも、小さい頃の話しだし分かんない。でも、その辺の『野良』よりは強いと思う。ううん、強くいなきゃいけない」
そういう眞由の顔には、決意にもにた何かが浮かんでいた。拓也には何を思っているか分からない。眞由は、だってね…と続けた。
「あたしが拓也君を守るの。拓也君を守る剣になるの。こんな街だから、こんな場所だから。あたしの力は、拓也君を守るために使うの。そう、決めたから」
「……眞由」
「いつも、ご飯貰ってるお礼でもあるんだけどね」
「お前な…。とにかく恥ずかしいからやめろ」
「あはは」
「俺も眞由と一緒にいるのは楽しいさ」
「そう言ってくれるだけであたしは嬉しいよ」
「バイトも手伝ってくれるし」
「それは店長のせいです」
などと何事もなかったように歩き出すふたり。こんな常識の崩壊した街だから仕方ないが。
後書き
作者:FreeSpace |
投稿日:2011/06/15 15:33 更新日:2011/06/15 15:33 『欠片の謳 本当の欠片の謳』の著作権は、すべて作者 FreeSpace様に属します。 |
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