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作品ID:812
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Reptilia ?虫篭の少女達?

小説の属性:一般小説 / 未選択 / 感想希望 / 初級者 / 年齢制限なし / 休載中

前書き・紹介


第一章 日常に生きる少女 11

前の話 目次 次の話



 街灯。

 看板。

 電柱。

 どこかのビルの階段。

 ネオンの影。

 人の頭。

 屋根。

 嬌声めいた笑い声。

 路地裏に響く悲鳴と怒声。

 詩の朗読。

 六本の弦の音色。

 単車の排気。

 パトカーのランプ。

 拡声器による、電波に似た演説。

 夜の瞬き。

 夜空の清廉さ。

 サキは何も考えず、視界に映るそれら全ての間を駆け抜けていた。

 飛び、跳ね、転がり、掴み、また駆ける。

 虫篭の空を横切る彼女を、時々、何人かの人間が見上げた。しかし、サキは決してそちらを見降ろさなかった。何にも囚われたくなかった。

 そうして走っている間に、自分の住処へと着いた。商店街から程近い、雑居ビルの連なりの一角の屋上だった。そのビルは現在使われておらず、知らない者が昇って来る心配も無い。立地としては、他の場所から光が届かず、夜は照らされなかったので気に入っていた。

 体はヒートアップしていて、纏わりつく熱い空気に汗が吹き出ていたが、時々、流れてくる潮風は涼しかった。

 フェンスに接するように建つ、バラックとビニールシートを接ぎ合わせて造った小汚い小屋がサキのねぐらであった。扉代わりのシートを開けて入ると、空気がむっとしていた。バッテリーに繋いだ扇風機を稼働させ、服を脱ぐ。汗で濡れた肌に、風が心地いい。

 拾ってきた革製のソファーがベッドの代わりである。その傍らに立てかけられた鏡をサキは見た。

 髪の短い、不機嫌な女がいる。睨むようにしてこちらを見ていた。

 これが自分だなんて、毎度嫌になる。

 くたくたに疲れて、サキはソファーへと沈んだ。瞼を閉じて、体を重力に任せる。脳内では今日の出来事が反芻される。

 そう、今日は濃厚な一日だった。

 チンピラ三人とヤクザ一人を狩った。

 金が手に入った。

 鬱陶しかった髪も切った。

 先生と弁当を食べ。

 不機嫌な早河と会った。そういえば、新人の刑事がいた。

 夜は一弥に金を支払い。

 そして、真澄の所に行った。

 殴られていた彼女を助けたのに、帰れと言われた。

 一緒にいたかったのに、なんで……。

 サキはぼんやりと瞳を開けて、もう一度、鏡を見た。短くなった髪を一度、手で梳き上げる。軽い感触。放るように手を下ろして、鏡を引き寄せた。

 後ろの首筋、うなじの辺りに、それはある。



『C-7』。



 バーコードに似た記号。刺青と呼べるかもしれない。物心ついた時からある。

 バケモノの刻印。

 つまりは、強化人間の証明。

 人ではない、という事の証拠。

 それにそっと触れてみる。手触りに違和感はない。サキはもう一度、眼を閉じた。

 皆、わたしを恐れている。わたしが、人間ではないからだ。

 好かれようなどとは思っていない。思っていたら、とっくに屋上なんかでは暮らしていない。ただ、時々、空虚に感じることがある。なぜだろう。

 真澄は、この気持ちをわかってくれる。微笑んで、手招きしてくれる。撫でてくれるし、褒めてくれる。たぶん、愛してくれている。

 先生や早河も、きっと心配してくれているし、一弥だって、まぁ、あいつなりにわたしに気を遣ってくれている。時々、迷惑だけど。

 でも、わたしは所詮、人間じゃない。皆とは違う。強化人間。独りだ。

 だから、敵もいる。

 名前は聞かなかったが、今日のあのヤクザだってそうだ。当然、砂原もだ。この街で力を持つものは、闘わなくてはいけない。

「人間じゃねぇんだってな?」

 脳内で再生される言葉。

 眼鏡を割られた学生の目。

 今までに何度も向けられた畏怖の目。

 でも、自分と彼ら、一体何が違うと言うんだろう。

 身体能力?

 首の後ろの刺青?

 道徳?

 ならば、お前らは、全員同じだと言うのか?

 くだらない。

 馬鹿馬鹿しい。

 社会というシステムの煩わしさ。

 手続きに支配された人々。

 なぜ、こんなにも億劫なのだろう?

 人の体が、人の意思が、人の命が、無駄に重すぎる。

 そう、彼らとの違いといったら。

 自分のこの身軽さだろうか。

「あー、もう、いい」

 サキは無意識に呟いた。彼女の意識は既に、半分は夢の世界に沈んでいた。

 熱帯夜の虫篭には、子守唄のような喧騒が続いている。





 

後書き


作者:まっしぶ
投稿日:2011/07/17 21:09
更新日:2011/07/17 21:10
『Reptilia ?虫篭の少女達?』の著作権は、すべて作者 まっしぶ様に属します。

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