長く連載されてきたこの作品もいよいよラスト。
この5巻でまた大きく物語が展開。そして、帯にも書かれております「ぽてまよ」って何モノなの?
最初に宣言します。やはりこの作品の感想に付いて語る上で「ネタバレ」は避ける事が出来ません。
思いっきりネタバレします。まだ作品を読んでいないよって方はブラウザの「戻る」を推奨します。
準備はよろしいでしょうか?では、参ります。
相変わらず個性的なネタ。
P18の2本&P20左はステキすぎ!画像を引用していますが、多分このコマだけでは分からないでしょう。
前後が有って成立するネタですので。
分かる人だけ共感して下さい。
P78右とかも相変わらず変化球であり、直球。
や、だからこういうところで「この作品らしさ」を感じるなという話ではあるんですが。
でもやっぱり、この作品だからこそ見ることの出来るネタですし、成立するネタ。
もし他の作品でやったらどん引きされるようなネタも、なぜかこの作品ならオールOKになる。
そんな不思議な魅力を感じるのです。
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「ならでは」のネタ(P18右3コマ目) | | 5巻のキーパーソン・桃ノ瀬さん(P38右4コマ目) |
萌え作品では「親不在」という家庭がよく描かれます。個人的には「どうかな?」と思う事もあります。
友人関係も大事ですが、家族も大事でしょうがっ!
兄弟姉妹がいてそれで「家族」が成立していたり、ルームシェアや学生寮となれば話は別ですが、
「長期旅行で両親不在」とかはもう・・・
そんな中、この作品ではちゃんと「親子」が描かれています。
森山さん家が中心です。お父さんの皇大さんは不在がちですがよく帰ってきます。
そして、ちゃんと親子やっています。
すれ違いもありましたが、話を重ねるにつれて素直が父を理解していく・・・という感じ。
特にこの5巻では「自分の知らない父」と、「自分よりも父を知っている他人」の存在が大きなポイント。
それを通じて、自分の気持ちに気付いていく姿が描かれます。
一方で夏さん家は基本ドタバタ。賑やかな家庭です。
ごくごく普通の家庭という感じで描かれています。
他のキャラクター達についてもそれぞれの家庭がよく描かれ、珍しく「メインキャラ全員の家族が描かれる」という作品。
そして、色々とややこしい家庭事情のねね、五十嵐さん家。
いつも言いたい事をズバッと言っているねねですが、感情というものを上手く表現出来ない、どう接していいのか分からない。
そんな彼女の一面と、親子愛。
ラブコメやドタバタだけじゃないんですね〜。
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実は凄い人だったわけで(P68右4コマ目) | | 「ぽてまよ」とは?(P123左4コマ目) |
さてさて、ここからはホントにネタバレなお話。つまりはストーリーに深く絡むところなんですが、高校進学と同時に登場した新クラスメイト。
桃ノ瀬さんがお話に加わりますが、この人がキーパーソン。
素直とよく似た淡々とした感じで、彼とシンパシーを感じるところが幾つも。
もう、クローンなんじゃないかというくらいよく似ています。
唯一違うのは「パンが好きかうどんが好きか」という点くらいで、どちらも小麦繋がり。
園芸係で一緒に小麦を育てています。
彼女との出会いで素直にまた変化が訪れますが、それと同時にみかんも落ち着いていられない!
でも、みかん自身も桃ノ瀬さんと接していくうちに彼女を受け入れていって・・・
そして、一番の変化は彼女が父・皇大さんと出会ってからでしょう。
それまで感情をほとんど顔に出さなかった彼女が、突然感情を爆発させたかのように大興奮!
それと同時に皇大さんが実は凄い人だと判明し、桃ノ瀬さんが皇大さんの大ファンだった事も判明。
上で語った「自分の知らない父」と、「自分よりも父を知っている他人」です。
これ以降、素直の父に対する感情が大きく変わります。
今まで知ろうとすらしていなかった父について、そして父を取られたくないという子供心。
そういった人間ドラマと並行して、肝心の「ぽてまよとは?」も進みます。
常にそれらの中心にいるのが桃ノ瀬さんであり、彼女のミステリアスな面も色々描かれます。
最後まで読んでから読み返すと、P77左4コマ目のセリフなども「それから」の世界を暗示するものですね。
桃ノ瀬さんの正体とは?
皇大さんの仕事に一行が付いていくお話で全ての物語が一気に加速。
それから日常に戻るのですが、そこから先もずっと物語の歯車は止まることなく回り続け・・・
この作品の「かわいいだけじゃない」をギュッと濃縮したようなストーリーが続きます。
ぽてまよ達の過去とその正体。
何故、素直達の元に現れたのか。
久々の「看護帽ぽてまよ」も登場し、先生のあとがきでいう「着地点」へと一気に物語が加速します。
多分、「看護帽」は「過去のぽてまよ」という象徴的なアイテムだったんでしょう。
ただかわいいだけではきっと最後の「あたらしい家族ができました。」という言葉にこれほどの重みは出なかったんでしょうね。
先生ご自身、作品の閉じ方や重い話を描かれることに悩んでらっしゃったようですが、個人的にはこれが一番素敵な形だったんじゃないかと思います。
賑やかだからこそシリアスが引き立ちますし、その逆もしかり。
そして、作品が閉じた後もちゃんと心に残る。
私は決して4コマを作る側の事を知っているわけではなくただの素人。ただ、数百の作品に触れて、そこで感じた事を言葉にするという事を続けています。
その上で言わせて頂きます。優しくてドタバタで、感じるものが多い。間違いなく良作だったと。