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境界線上のリンボ

作者 鳥取砂丘 境界線上のリンボ
作者HP 奇妙堂古書店
掲載誌 まんがタイムきらら(芳文社)
単行本数 2巻(連載終了)
Wikipedia 境界線上のリンボ
チャート
内容 人間とエルフのハーフ。そのためどちらの種属からもつまはじきにされた「フゥ」が辿り着いた街、それは異世界からの移住者とこちらの世界のはぐれ者が集まる街「リンボ」。
ファンタジックな世界を舞台に、一人の女の子が多くの人と出会う中で成長していくストーリー。
優しく幻想的なタッチで描かれるハートフルなエピソードが詰まっている温かい作品。
舞台や世界感のため、登場人物にいわゆる「普通の人間」はほとんどおらず、エルフとのハーフであるフゥをはじめ、ファンタジー世界の住人が可愛らしく描かれている。
話の多くは彼女の日常であり、街の人たちとの触れ合いだが、終盤は「種族の違い」や「リンボが抱える社会的事情」が大きな渦となり、フゥ達を飲み込んでいく。
その中で、フゥの行動が、言葉がリンボの人たちを変えていく。
優しい作風と美しい物語で、特に最終回はきららでも屈指の最終回と評価されることも多い作品。

なお、本来の意味での「リンボ」とはカトリックにおいて地獄に落ちるほどでもない罪人が死後に行き着くとされる場所のこと。
感想 実は雑誌で読んだ時から気になっている存在でした。
単行本もかなり早い段階で買っていました。
が、様々な事情(主に「読むのがおっつかないので購入数を制限」による2巻入手の遅れのため)でレビューが先延ばしに・・・
本作の名誉のために言っておきます。レビューが遅れたのは「私の問題」ですので!紛れもなく良作ですよっ!

「笑本」ですので、笑いの観点から言うと、それについては特筆すべき点はありません。
なぜなら、この作品の最大の特徴はそれ以外にあるからです。
それは絵の可愛らしさがあるでしょう。
それは心温まるエピソードの数々があるでしょう。
それは作り込まれた作画があるでしょう。
それは幻想的な世界感があるでしょう。
そして、何よりも主人公であるフゥの存在があるでしょう。
一人ぼっちだったフゥ。その彼女の周りに一人、また一人と友人が集まり、やがて彼女自身が人と人を繋げる存在となる。
臆病で逃げ腰だったフゥ。いつの間にか自ら率先して動き、周りの人たちすら変えていく。
「耳の違い」という小さな違いで蔑まれてリンボに逃げ込んだフゥ。それがいつの間にか「種族の違い」という大きなことを「みんな“人”なんだ」と言ってのける。
この彼女の成長こそ作品の最大の魅力だと感じています。
優しくて、可愛らしくて、心温まる。そして、それだけではなく大きなテーマの中で成長していく主人公。
最終回にその集大成があり、彼女の成長を一緒に見守って来た読者の多くがその成長に涙したのでは?
1巻P95〜 ではその「成長」が明示的に描かれました(それ以外でも、節々にフゥの成長や心境の変化が描かれています)。
「過去の自分を恥ずかしく思える」っていうのは自分がその分成長した証。
きっと、それを笑って受け止められることが「大人になる」ってことなんでしょうね。
やー・・・社会人やってると、ほんの数年前の自分の仕事ですら「何やってんだ、この時の自分は・・・」と思うことが多々あります。
その苦笑いの分だけ、成長出来てるのかなぁ・・・

多く描かれるのは「人と人の繋がり」や「人としての成長」や「人という生き物」。
それがファンタジックで可愛らしいキャラクター達によってコミカルに描かれています。
姿や見た目が違っていても、それは些細な違い。同じ「人」。
終盤のエピソードもそうですが、個人的には1巻ラストのアポジー(機械)のセリフ「君たちのように言うならば きっと寂しくなったんだ」が印象的。
種族どころか、本来命も意思も無い筈の彼が自らリンボへ帰って来た。友人たちに会うために。
この手の話は珍しくありませんが、この話に至るまでのエピソードでの彼(?)の機械としての一面と人間臭さ、
それらが繊細なタッチで描かれているからこそ印象的に感じるんでしょうね。
2巻の帯には「女の子のゆるい日常、だけじゃない4コマ誌。まんがタイムきらら」とあります。
この作品はその代表。
「だけじゃない」良作です。
単行本 発売日 ・1巻:2010年3月27日
・2巻:2011年3月26日
試し読み まんがタイムきららWeb:1巻
まんがタイムきららWeb:2巻
関連項目 ●ジャンル ファンタジー ●チャート 感動
癒し
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●作品研究
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●作者別 G専ラフスケッチ ●各巻感想
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