長い長い戦の連続。
魔王と呼ばれた男の物語はここから始まります。
とはいえ、先生らしい可愛らしい雰囲気の信長。
それ以外のキャラクターも他の作品のそれと比べるとコミカルさが際立っています。
そして、本作のオリジナルキャラクターにして主人公の千鳥との出会いからすべてが始まります。
優秀なイメージの千鳥ですが、当初はうっかり者の幼き少女(成長しても天然なところは変わりませんが)。
そんな彼女と信長の出会いがこれから続く乱世の始まりを告げるのです。
この作品の大きな特徴に「史実に忠実(一部コミカルにしたり誇張したりはありますが)」、「史実がそのままネタになる」、「歴史小ネタが満載」があります。
P17で早速信長の「下戸」「甘党」がピックアップ。
以降、特に後者に関しては彼の持ちネタとなります。
実在の人物で様々な資料もあり、既に幾度となくキャラクター化されている信長。
それ以外の人物も千鳥達を除けば皆実在の人物。
それだけにいかに個性を出すのかが腕の見せ所。
決して史実を変えることなく彼らの魅力を漫画的に引き出すのか。
それができるのも先生の腕前があってこそ。
さらにその上に千鳥達オリジナルキャラクターを組み合わせることで更なる魅力的作品に仕上げています。
ちなみに、この時代の女性に関しては資料がほとんど無いそうです。
そのため、女性キャラに関しては自由度が大きいという点もあります。
この作品・・・女性キャラの個性が濃い!特に秀吉の妻・ねね(史実でも後年凄い活躍をして歴史に名を残しますが、この作品ではこの時点で個性最強です)。
だからこそなんでしょうか、戦を描いていながら殺伐さが無いのは。
戦には女性は登場できませんし、元々の先生の作風もあります。
それを引いても女性たちの存在感は大きいような気がします。
考えてみれば、戦国をリアルに描いた作品で女性がこれだけ活躍する作品も珍しいかもしれません。
とはいえ、メインはやはり武将達!
後の名を馳せることになる者、主のために命をかけて戦い散っていく者。
彼らの勇ましき生きざまをを楽しく描いたその全てに刮目してください。
ねぇ・・・この秀吉がなぜ信長の偉業を引き継ぐことになったのやら・・・ですよ。
信長の覇道、そのスタートとしてこの作品で選ばれたのは彼の戦績でも有名な今川義元との戦い、つまりは「桶狭間の戦い」。
それ自体にはもはや説明不要でしょう。
しかし、そのために「今川義元は残念な子」というイメージが付きまとうように・・・
この作品ではその戦いの何が重要だったのか、なぜ信長は勝てたのか、そして本当の今川義元とは・・・?が描かれます。
正直、全国の日本史の教科書はこの作品にすべきでは?というくらい分かりやすく読みやすいです。
特に、前述ですが「史実がそのままネタになる」という点もあるのでなおのこと勉強になります。
面白いことは記憶に残ります。だからこそ、特にこの作品で得た知識というのはそのまま記憶に残るような気がします。
そして、改めて歴史を知ることになる助けとなる作品。
私もこの1巻で今川義元の印象を「残念な子」から「運に見放された人」に訂正しました。
ただ教科書で素通りしていた歴史、興味を持つことがなかったそこに生きた人たち。
彼らのことを知る、そして興味を持つきっかけになる作品です。
1巻ではこの桶狭間の戦い、そして時は遡り信長と妻・帰蝶の出会い、帰蝶の父であるマムシこと斎藤道三とのエピソードが描かれます。
そして、ラストは竹中半兵衛との出会い。
彼は後々非常に重要な人物になります。
この作品は魅力的なキャラクターが多く登場し、それぞれがそれぞれに重要な役目を持っています。
何よりもそれが「史実」であるということ。
事実は小説より奇なりといいますが、まさに本当の歴史というものは人の心を惹きつけて離さないもの。
それをより魅力的にする。それがこの作品名だと思います。