酸素計画

日記など雑多な文章

日記未満のことを書きます。

『エクスペンダブルズ ニューブラッド』の二次創作小説です。
某匿名掲示板風のssです。
#エクスペンダブルズニューブラッド

バーニー「次の依頼は心霊スポットに行くことになったんだが」


バーニー「次の依頼は心霊スポットに行くことになったんだが」

クリスマス「は? 俺の耳が狂ってたのかもしれないからもう一回言ってくれ」

バーニー「次の仕事先は心霊スポットだ」

クリスマス「俺、今回は不参加でもいいか? 医者にパニック発作が悪化するからストレスは避けろって言われてる」

ガンナー「俺は面白そうだから行くぜ。ヤンに土産話にしてやる」

イージー・デイ「……俺たちが参加する意味あるか?」

バーニー「それは今から説明する。きっとみんな納得してくれる理由があるんだ」

バーニー「街から少し外れたところの大きな屋敷に、幽霊が出るって噂があるんだ。最近、特に人影を見るって噂が多いらしい」

ジーナ「それって不法侵入の可能性もあるんじゃない?」

バーニー「その通り。事実、そこを根城にしている犯罪集団がいるってある情報屋が掴んで俺たちに依頼が来た」

トール・ロード「俺たちに来るってことは危険なんだな?」

バーニー「察しがよくて助かる。出入りする人物や荷物から退役軍人が武器を不法に売買しているだとか、爆薬を作ってる可能性がある」

ラッシュ「心霊スポットだから人が来ないだろうって算段で根城にしたなら頭も悪くないだろうし、プロに仕事を回すのが当然の判断」

ガラン「俺たちはプロだからどんな場所でも常に本気だ。依頼主はいい判断をしたな」

バーニー「というわけで、次の仕事は室内戦が主になる。屋敷は今は誰も住んでいないが、建てた人物が管理している。できるだけ中を破壊しないように」

クリスマス「その管理人に許可は取ったか?」

バーニー「もちろん。危険な集団がいるかもしれないから制圧の際に銃や刃物で傷つく可能性があるとは説明済みだ。このまま犯罪に使われるより、過去に住んでいたときの思い出を踏みにじられたくないと許可してもらった」

クリスマス「それを聞くとあんまり暴れられないな。みんな、死なない程度に気をつけるぞ」

バーニー「ああ、あと一つ管理人から頼まれたことがある。屋敷から引っ越すときほとんど私物は運び出したが、ある物だけ見つからなった。子どもが使っていた日記帳が見つかったら教えてくれと」

ガンナー「なんかホラーゲームみたいだな。怪しい研究所を探索していたら重要な書類があって、みたいな」

イージー・デイ「その年代で分かるのか?」

ガンナー「チャットで若い子たちに教えてもらってるからな。実況……? とかたまに見る。途中で寝てるが」

バーニー「これはゲームじゃないから、本当は引っ越しのときに紛失したのかもしれないがな。しかし、管理人にとっては大切なものらしいから、一応覚えておいてくれ」

   * * *

A班:バーニー、クリスマス、ジーナ、ガラン

バーニー「俺たちA班は二階のベランダから侵入。上から下へと敵を制圧していく」

クリスマス「できるだけ生け捕りだな?」

ジーナ「街中で死人が出たら大事になる。それに依頼人は他の犯罪集団の情報も聞き出したいらしいから、頑張らないと」

ガラン「バーニー、B班は下の階から支援だったよな?」

バーニー「そうだ。だから逃げたら深追いするな。ベランダから飛び降りそうなら捕まえてほしいが、下の階に逃げたらB班が捕まえてくれる」

クリスマス「了解。じゃあ俺たちは上からパーティーに参加と連れ込もうか」

――ベランダから侵入後

バーニー「人の気配がするな」

ジーナ「管理人が業者を雇って定期的に掃除してたって聞いたけど、生活感がありすぎる……なんでここまで他人の家にごみを捨てっぱなしにできるのか不思議」

クリスマス「ある意味、俺たちはごみ掃除に来たってわけだな」

ガラン「この部屋は……浴室だな。一応水場は使わないとか頭は回るらしいな」

バーニー「下から足音がする」

クリスマス「どうする? 上の階で物音がしたからって確認に来たみたいだが――」

バーニー「別の部屋か廊下に隠れて、ここに来たやつらを捕縛する」

ガラン「閃光弾を使おうか?」

ジーナ「敵が何人か分からないから追い詰められたときで」

バーニー「よし、その方針で行こう」

――階段に移動

ジーナ「バーニー、近くの部屋で物音がした気が……」

バーニー「二階は寝泊まりに使ってたかもしれないな」

クリスマス「俺とジーナで見てこよう」

――ジーナとクリスマス

ジーナ「この部屋だと思うんだけど、誰もいない……」

クリスマス「年季の入った屋敷だから家鳴りかもな」

部屋の扉が叩かれる音

ジーナ「誰?」

???「バーニーから伝言。もしチームがピンチになったら危ないから、二人はそのまま隠れていて、連絡があったら助けに来てほしいって」

クリスマス「了解」

ジーナ「了解。あの船のときは大変だったから……思い出すのも最悪」

クリスマス「あの部屋は小便の匂いがしたな……大変だったな」

ジーナ「ちょっと、変な方向に誤解して同情しないで。思い出したくもない」

――バーニー、ガラン

バーニー(やはり下から見張りが来た)

ガラン(二人くらいだな。階段の両脇で待ち構えて捕まえよう)

ギシギシ……ガヤガヤ……

見張り1「上で物音がしたから来てみたが、どうせネズミだろ?」

見張り2「ボスは疑いすぎなんだよな。こんな古い建物なら動物が入ってきて物音くらいすっ……」

バーニーとガランが見張りの背後から首を締めて失神させる。

バーニー「これで終わりだ」

ガラン「拘束しておいて、俺たちが来た浴室に置いておこう」

拘束した見張りを浴室にまで抱えていく。

バーニー「無線だ」

ガラン「俺にも来た。緊急事態か?」

???「二階の一番大きな部屋、ダイニングに敵がいるから気をつけて。ダイニングの目印は動物のプレートだよ」

バーニー「ああ、分かった。ありがとうな。まだ俺たちは三階だから慎重に行こう」

ガラン「B班が索敵してくれたのか。助かるな」




B班:ガンナー、トール・ロード、イージー・デイ、ラッシュ

トール・ロード「イージー・デイは裏口の外で逃げてくる敵を捕まえるために待機。残りの俺たちは中で敵の捜索、見つけ次第拘束。この段取りでいいな?」

イージー・デイ「了解。もし逃げた敵がいたら連絡してくれ」

トール・ロード「それじゃいくぞ」

――屋敷の一階にトール・ロードたちが入る

ガンナー「物音がするな……」

ラッシュ「上からみたい」

トール・ロード「一階に人影はないな。上からバーニーたちが敵を見つけて確保中なのかもしれない。連絡を取って見るから少し待っててくれ」

トール・ロード「こちらB班、一階に人影はいない。バーニーは?」

バーニー「三階に見張りがきたから捕まえて拘束済み。見張りが戻ってこないのを怪しがって上に仲間が来るかもしれない」

トール・ロード「了解。じゃあ、B班が一階に敵がいないことを確認したら上に向かって敵を挟み打ちだ」

バーニー「了解。見張りからして戦闘の素人だ。油断は禁物だが本気で叩きのめすなよ」

トール・ロード「了解。ガンナー、ラッシュ。この階に誰もいないか確認後、上に向かっていって敵を拘束する」

ラッシュ「了解。それでどう動く?」

トール・ロード「ツーマンセルができないからな、三人で動こう。リスクより安全重視だ」

ガンナー「了解。被害が出て、近所も巻き込んだら最悪だからな」

トール・ロード「廊下を一周すると、ほぼすべての部屋が確認できるはずだ。廊下を一周して各部屋の中を確認。それが済んだら上の階に行く」

――B班、一階を散策

ラッシュ「以外と一階は荒されていない、か」

トール・ロード「一階を拠点にすると何か不都合でもあったのか……どの部屋も小綺麗なままでときどき靴の汚れがあるくらいだな」

ガンナー「実はここが一番幽霊が出るから、とか」

ラッシュ「オカルト検証番組なら見たいけど、今幽霊に出られるのは困る。相手を間違って傷つけてしまいそうで……」

トール・ロード「どんな幽霊が出るかは知らないが、元住人なら不法侵入者を捕まえる俺たちに味方してくれるんじゃないか?」

ガンナー「そうか? ホラー映画に出てくる幽霊なんてだいたい理不尽だが。……ん?」

トール・ロード「どうした?」

ガンナー「いや、あの隅の何か聞こえた気がして」

???「あっちに気をつけて」

ラッシュ「聞こえた。待って、あそこよく見ると陰に部屋がある」

――部屋に三人が入る

ガンナー「誰もいないな。A班の誰かが連絡をくれたのか?」

ガンナー「ここ、やばいな」

ラッシュ「軽く武器屋になれるくらい銃と弾がある……倉庫代わりにしていたんだ」

トール・ロード「これを放置していくのは危険だな。ガンナー、念のため一階に残って誰も来ないか見ていてくれ」

ガンナー「了解。一階を巡回して見張っておく。連絡くれたらすぐ向かうぜ」

トール・ロード「おう、任せたぞ」

――ラッシュとトール・ロードが二階に向かう
――ガンナーは一階の巡回を始める

ガンナー「ん? 声がするな。ラッシュとトール・ロードは上に行ったが、戻ってきたか?」

???「お腹痛い……」

ガンナー「この部屋からか、おい大丈夫か?」

ガンナー「この部屋、元子ども部屋っぽいな」

???「苦しい……助けて……」

ガンナー「具合が悪くなったら早く言えって。仕事中だと助けにくいから早め早めが大切だ。で、腹が痛えのか」

???「うん……」

ガンナー「トイレ行くか。おぶってやるからちょっと我慢しろよ」

――ガンナーたちがトイレに向かう

ガンナー「ほら、トイレだ。外で敵が来ねえか見張ってるから安心して言ってきな」

???「……ありがとう」

ガチャ、バタン

ガンナー「……昔、俺の元の仲間がいてよく怒られたもんだ。アルコールに頼るな、仲間で馬鹿な話でもしてろって。体を壊されると仲間が困るんだって」

???「うん……?」

ガンナー「当時はうるせえし、自分勝手なやつだとしか思わなかったが今なら分かる。我慢しないで本音を吐き出してほしいんだよ。仲間とか友達は失ったら戻ってこねえんだ」

???「それって」

ガンナー「お、分かったか。仲間としては自分を大切にしてほしいってことだ。迷惑をかけてもな。俺は散々仲間に迷惑かけたからな、多少のことなら朝飯前よ」

???「うん……ありがとう……」

――三階から二階の階段

バーニー「見張りが戻ってこないから敵連中が騒ぎ始めたな。本格的に抵抗される前に一気に攻め落としたいところだ」

ガラン「この様子だと十人くらいはいるんじゃ? もう少し人数がいると安心する」

バーニー「B班に連絡を取ろう」

バーニー「B班、こちらバーニー。二階の敵が騒ぎ始めた。手が空いている者は全員二階に来てくれ」

トール・ロード「ちょうどいい。俺とラッシュが二階に行く階段の途中にいる」

バーニー「了解。敵がかたまっている部屋があるから、上と下から一気に行くぞ」

トール・ロード「どの部屋だ?」

バーニー(ん? あれはB班からの連絡じゃなかったのか? まあいい、後回しだ)

バーニー「ダイニングだ。動物のプレートがあるらしい」

トール・ロード「了解。俺たちはいつでも行けるから合図をくれ」

バーニー「よし、10カウントして0で行く」

バーニー「10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0」

 * * *

バーニー「よし。これで全員確保。警察に引き渡すだけだな。あと少しで来るらしい」

クリスマス「珍しく、俺の出番がなかったな」

バーニー「派手なやりあいも大変だが、味方の援護も重要だぞ。お前たちが残ってくれたおかげで、背中を任せられた気分だ」

イージー・デイ「そう言ってもらえると光栄だ」

クリスマス「警察が来たぞ。引き渡そう」

――警察に引き渡した後、エクスペンダブルズの拠点

バーニー「今日はみんなご苦労さま! 好きに飲んでから帰ってくれ。ここで寝泊まりはやめろよ、体が痛む」

クリスマス「じゃあみんな乾杯だ!」

「「「乾杯!」」」

ガンナー「そういや、心霊スポットの割に何事もなかったな」

イージー・デイ「俺は外にいたから分からなかったが、中ではどうだった?」

ガラン「特になかったぞ」

クリスマス「そうだな。噂に聞いてたようなのはなかったな」

バーニー「……あー、少し言いにくいんだが……俺とガランに敵が二階のダイニングにかたまっているって通信をよこしたのは誰だ? A班の誰かじゃないのは確実なんだが」

トール・ロード「俺たちは誰もそんな連絡入れてないぞ。そもそもバーニーから連絡があって二階に俺とラッシュが行ったわけだからな」

ジーナ「そういえば、三回で誰かの声を聞いて私とクリスマスはある部屋で待機したけど。思い出してみるとこの中のメンバーの誰の声でもなかった……」

クリスマス「……怖いこと言うなよ。だが、俺も聞いたがそのとき変とか思わなかったんだよな。なんていうんだ、この感覚」

ガラン「座敷童子とかって日本にはいるらしいぜ。俺が日本の子に声をかけたとき教えてもらったんだが、子どもが遊んでいるとき初めて会った子も混ぜて遊ぶだろ? そのとき、帰り道になっても誰もその子の顔とか覚えてられないんだってさ。そういうゴースト? らしい」

ラッシュ「私が聞いた声を思い出してみると、子どもっぽかった」

クリスマス「子どもって言ってもやばいやつじゃないよな。ホラー映画だと子どもでもやばいなんてありがちだ」

ガラン「幸福を招くとか、そういう逸話があるって聞いた。危ないとは聞かなかったな」

クリスマス「怖くないならセーフだな」

ジーナ「確かに。私とクリスマスを心配しているみたいだった」

バーニー「元住んでいた誰かの幽霊かもな。侵入者を追い出してほしかったから協力してくれたのかも」

ガラン「仕事も無事に終わったからいい幽霊ってことしにしておこうぜ」

ガンナー「そういえば、途中で具合が悪くなって俺がトイレに連れて行ったやついたな。あれも幽霊か?」

バーニー「作戦中に体調を崩した報告は俺のところに来てないぞ」

ガンナー「相当辛そうだったから話してたんだけどよ、途中で声が聞こえなくなってよ。失神してたらやばいから中見たんだよ。そしたら誰もいなくてよ」

クリスマス「おい! 急にホラーな展開にすんじゃねえよ! いい感じで話題が終わりかけてただろ!」

ガンナー「俺の気のせいかと思って……あんまり確認もできないうちにバーニーたちが二階で敵の制圧を始めたから、そっちの援護に行ってたのもあるし。そんで戻ったらいなかったんだ」

クリスマス「……ギリギリ気のせいで片付けられるか?」

ガンナー「最近の幻覚は背負えるし、意外と会話ができんだなとは思った。ちゃんと会話が成立したんだよ」

バーニー「気のせいじゃないな、これ。しばらくガンナーは酒も飲んでなかったからな」

ラッシュ「無邪気ってすごい。人徳がある……?」

ガラン「ホラー映画のフラグを立てまくってるのに本人が気づいてないもんな」

ジーナ「これでよかったの?」

ガンナー「あ、そうだ! トイレに本が落ちてたんだ! すっかり忘れてた」

バーニー「どれどれ……おい、これ屋敷の管理人が言ってたものだろ」

クリスマス「内容は十年以上前の日付になってるな。最後のページは?」

バーニー「ここだな。『優しくしてくれてありがとう ずっと我慢してたけどこれで大丈夫』ってある」

トール・ロード「どういう意味だろうな」

バーニー「お前たちを怖がらせると思っていて言わなかったが……管理人が当時屋敷に住んでいたとき病気がちの子どもがいたんだと。管理人夫妻が夜に急用で出かけたとき、子どもが体調不良でも大丈夫と見送ってくれたのが最期になってしまったと」

ジーナ「子どもは親を不安にさせたくないから無理をしてしまっていたのかもね」

ガンナー「ずっと我慢してた、ってのはそういう意味なら分かる気もする」

イージー・デイ「そう言えば、作戦が終わったとき屋敷から出たあたりで庭を走っていく子ども見たな。近所の子が肝試しにでも来たのかと思って追いかけたら、いなくて心配だったんだが」

クリスマス「亡くなってから親の管理人夫妻が心残りで、屋敷から出れなくなってたのかもな。その子が無事に出られたって考えておこうぜ。これでハッピーエンドだ」

ガンナー「そうだな! ヤンにも話してやろう」

バーニー「もう遅いから、ガンナーが見つけた日記帳は明日に俺が管理人夫妻に渡しておこう」

クリスマス「これで本当に終わりだよな?」

バーニー「まあ次からは心霊スポットに行くような依頼は断ってもいいかもな」

クリスマス「そういえば、みんなは怖いのはどれくらい大丈夫なんだ? 怖いってのはホラーとか心霊って意味で」

バーニー「俺は平気だな」

ジーナ「私も」

トール・ロード「おれはあんまり」

ラッシュ「私は結構好き! 映画とかゲームとか怖いの楽しいよ」

ガラン「俺もそんなにだな。幽霊とか見えたことないしあんまり信じてないかもな」

ガンナー「怖いが声を出しながら家でホラー映画とか見ると楽しくなってくるな。怖楽しいって感じだ。で、クリスマスは?」

クリスマス「俺はそんなに……」

バーニー「苦手なメンバーが一人でもいるなら心霊絡みの仕事は断る。安心しろ」

クリスマス「いや、意外とみんな平気そうで驚くぜ」

ジーナ「イギリスじゃ幽霊が出る家の方が価値が高いのに?」

クリスマス「生まれつきだ。仕方ない」

バーニー「心配するな。今日は添い寝でもしてやろうか?」

クリスマス「そこまでじゃねえよ」

ジーナ「あら、私のところに来てもいいけど」

ラッシュ「散々いじられてる」

トール・ロード「あれが愛情とか友情表現なのさ。気にせず俺たちは飲もう」





番外編

デーシャ「バーニーから連絡があったんだが、エクスペンダブルズが心霊スポットで仕事したらしい」

ラフマト「……悪いがそれを聞いてもよく状況が分からないが」

デーシャ「廃墟を犯罪集団使ってたのを捕まえたらしい。そこが心霊スポットってことだ」

ラフマト「なるほど。でも、傭兵なら怖がることでもないだろ」

デーシャ「そうか? 戦うのとかとは別の怖さがあるんじゃないのか」

ラフマト「俺はそういう体験がないから分からない」

デーシャ「タイだと幽霊話とか肝試しが好きな人が多いから、俺もそこそこ好きだ」

ラフマト「たとえば?」

デーシャ「その家で病気で亡くなった人が毎晩出てくるだとか、学校やビルで自殺した人が出るとか? でも、冷静に考えたら亡くなった人に失礼かもな」

ラフマト「なるほど。そういう感覚で話題にするのか」

デーシャ「信じているか、信じてないかは人それぞれだと思うが、俺はちょっと体験したことがあるからあんまり否定できないんだよ」

ラフマト「え?」

デーシャ「戦場で見つけて救護班に引き渡した誰かが、夢に出るんだ。翌日、人づてに亡くなったことを知るんだ。遺体安置所近くで見張りをしていたら、中から人の声がするから話していたら、朝になって中には遺体以外見張りも誰もいなかったとか」

ラフマト「……」

デーシャ「今の拠点でもそうだな。夜番していてトイレに行ったら、交換したばかりの電灯が点滅し始めるとか、勝手に水が流れるとか」

ラフマト「それはここが古い建物だから、とか定期的にトイレの水が流れるからではなく?」

デーシャ「この前、夜番してたら廊下で人影を見たんだよ。真っ黒なやつ。こっち来たから『外の方がそういうのが分かる人がいる』って言ったら出ていった」

ラフマト「いわゆるここは出る物件か?」

デーシャ「さあな。俺がそういうのに遭遇しがちなだけかもしれない。お前は体験したことないから大丈夫だろ」

ラフマト「そうだが、聞いたら心配になってくる」

デーシャ「大丈夫。そういうのもいるだけだ」

ラフマト「よくそれで気にせずにいられるな……」

 * * *

ラフマト「デーシャ、ちょっと来い」

デーシャ「どうした」

ラフマト(何も言わずにデーシャの腕を掴んで自室から廊下に出る。そのままトイレに向かう)

ラフマト「俺が出てくるまで待ってろ」

デーシャ「了解」

デーシャ「……ああいう話題は苦手なのか」

ラフマト「待たせたな」

ラフマト(またデーシャの腕を掴んで自室に向かう)

デーシャ「悪かったな」

ラフマト「何が?」

デーシャ「いろいろ。今日は添い寝でもしてやろうか?」

ラフマト「……余計な気遣いだ」

ラフマト「ただ、デーシャがどうしてもと言うなら」

デーシャ「素直に言えよ」

ラフマト「言ったら絶対にからかうだろ」

デーシャ「お前、苦手なものがなさそうだからな。たまには俺を頼ってほしいんだよ」

デーシャ(今度、ホラー映画を一緒に見てやろう)

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