『NN4444』の感想です。#鑑賞記録 ※感覚で書いているので文章がくちゃくちゃです。※入場時にもらったカードに記載のサイトを見ていない状態で書いています。そのため、意図を汲み取りきれていない、理解が浅い部分が多々あると思います。またサイトを見てからの感想も書けたら書きます。続きを読む・全体の感想ホラーというと、私は分かりやすい怖さをイメージしがちだったのですが、この作品群は「なんだかすごくぞわぞわするけど、何が原因か分からない。快、不快も分からなくて、自分の価値観や認識みたいな感覚に近い部分が不安になってしまう」と感じました。とにかくホラーとはなんだろう、人間って何が怖いんだろう、そもそも恐怖って何だろう?とたくさん考えさせられました。あと各作品のタイトルの見せ方、エンドクレジットのおしゃれな感じがめちゃくちゃ好きです。・犬主人公のパートナーが、主人公の人権を認めていないモラハラ具合と、無自覚に暴力性を振りまく人間性に「あっ!これこれ!やっぱり家族とかパートナーってこれですよね……」と安心しながらも「ふざけるな!ハラスメントやめろ!!」と思いました。(これは私の生育環境が一般的でなかったことと、今の私はハラスメントとか暴力は当たり前によくない!という考えを持っているため発生する感情です。)ファミレスでステップファミリーらしい人々のやり取りに心がぐちゃぐちゃになりました。母親しか頼れないのに、仲良くさせるためとか言って子どもをほぼ他人の大人と二人きりにさせるな……!檻の中に動物を二匹閉じ込めても仲良くなるわけないだろ……(自分の過去のことを思い出して心がぐちゃぐちゃになりましたが、短い場面でこうやって人の心を揺らせる作品は本当にすごいと思います。日常のささやかな暴力性を描き出すのがすごいというか……うまい言い方が見つかりませんが)冒頭の犬の人(あんまりよくない表現ですが、他に短い文字数で示せる言葉が見つからなかったので以下この言葉を用います。)を殴るパートナーに、「えっ、暴力性怖!!!普通は殴れないだろ……」と引きました。ここあたりでもうパートナーが暴力を振るうことに疑問を抱かないんだ……と恐怖を覚えます。主人公、会社でなんでそんなことしちゃうの……となりました。気持ちは分かるけど、でも、自分もするかも……全体的に本当に辛い……あと会社の上司の意味深な接し方が「あの……性暴力とか……ないですよね……?」とぞくぞくしました。あ、ありそう……最悪……パートナーの人の見下し加減やばすぎて怖かったです。あと暴力への抵抗がなさすぎるのと、兄弟を異様に気にしているところで「この人も育った環境がよくなかったのだろうか……」と思いますが、だったら他人に暴力を振るっていいわけがないし、自分で自分を省みるためにカウンセリングとかDV加害者とかの集まりとか行くという選択ができなかったり、周りから指摘されたり、自分の暴力性に気がついて認める機会がなかったんだろうなと諦めの気持ちになりました。あと母親のメールも……なんでこんなに人を見下したり、もの扱いできるんだろう……(環境、世間の価値観、その人の先天的な気質、差別、偏見が関わってくるのでしょうが、それでも、人権とか社会の授業で習ったり、正せる機会がないとこうなるのか……と絶望的な気持ちになりました。)(しかし、私もそういう人間かもしれません……)犬の人を家に連れ帰ってきてから、彼女と主人公の穏やかなひとときが素晴らしかったです。傍目から見たら歪で、人が死んでいるのに、解放感が心地よかったです。朝起きて、状況が改善されたり、解決はされていないという絶望と、会社で詰められた中で吠える主人公の声が犬より、本人の声で犬の鳴き真似をしているのが「犬になった、のではなくて犬になってしまいたくて人が狂ってしまったのだろうか」と考えて怖くなりました。この作品の「犬」はこの世の中の文化や知識、人間の社会性が未熟で虐げられる弱者(あるいは、弱者と思い込んで鬱屈とした加虐性を溜め込んでいる人なのかもしれませんが……)にとって現状を暴力で解決してくれる「野蛮」「暴力」みたいな象徴なのかなと私は考えました。(本当は対話で解決したいけど、暴力を振るう相手って対話する同じ立場に持ち込むことすら困難とか、被害者側が加害者側に「対話してほしい」と頼むクソみたいな状況が生まれたりしがちなので、皮肉なことに暴力に暴力で立ち向かう方が遥かに手っ取り早く、楽になりがちなことを皮肉?みたいに表現しているのかな、と思ったりも……)だからこそ、主人公は「犬」になりたかったけれど、純粋な犬ではなくて人の合理とかに縛られて暴力を使うことを選んだから「犬の鳴き真似をする人」になったのかな、とか考えました。「犬」は犬だけれど、周りの人は都合のいい暴力とした利用しているのも何だか皮肉というか、世の中の暴力が正義感で炎上させたり、強い言葉でなじったりするのとつながるのかも……とかいろいろ考えました。あと私は社会性を保つのにストレスを感じたり、家で働きたくねえ!ニートになりたい!社会性を失いたい!と考えるとき、犬の鳴き真似をしたり、威嚇音を真似していることがあるので、「わ、分かる……気もする……(たぶん違いますが……)」と思いつつ見ていました。・Rat Tat Tat場面が切れ切れになったり、時間軸がどうなっているんだろうと混乱する作りで面白かったです!『去年マリエンバートで』を見たときみたいな、迷宮に入ってしまってどこにいるのか、出口があるのかすら分からない不安になる雰囲気が好きです。社交的な場や、周りからの目、世間的なイメージみたいなことをぶつけられるパーティーの場が苦手すぎるので「う、うわー!!!つ、疲れる……処理する情報が多すぎて胸がどきどきする……」と見ていて疲れました。好きな服装もできないし、ここにいるみんなシスヘテロっぽそうだし、みんな働いてそうだし、なんか投資とか、未来設計とかちゃんとしてそうで、まともな家庭で育ってそうで、……とか考えてしまいます。私はちゃんとできないし、そういうまともさがもとから欠けている人間なので……主人公が周りの目をすごい気にしているのが分かって、苦しかったです。私も人の目を気にして道化を振る舞ったり、(これは真面目に答えない方がいいな……)(相手が私を見下しているから、馬鹿のふりしておくか……)と考えています。お手洗いで主人公が血を抜く場面は、ストレスを抜くみたいな隠喩なのかなと考えたりしました。子どもに関する会話、接し方の絶妙な雰囲気で「過去に子どもに関する何かがあったんだろう……」と察せる張り詰めた雰囲気がうますぎて、私はパーティーから帰りたくなりました。私は見ているだけなのに?!拍手が手拍子になっていくところで、ナチスが音楽を支配のために収容所で使った話(『虐殺器官』にあったなあ、など)思い出しました。拍手はいいイメージが強めですが、こうやって社会的なイメージ、価値観、差別みたいなものを交えて人を圧迫していく暗黙の規律みたいなものになっていくよな……と思いました。異性が結婚したら子どもがね……、とか……私はそういう価値観が嫌いなので、他人の将来に口を挟んだり、話題に出したりしませんが、そういう世の中の圧力、差別みたいなものをこの場面から感じました。あと子どもが生まれなかったら、さっさと別の話題に移るのも……世の中って最悪……?(私もその最悪の中の一部ですが)と考えました。(あそこの場面は、白い液体状に子どもの形だったものがなっていく=精液が受精に失敗して性交しただけの隠喩なのかな、と考えました。あの場面はおぞましすぎて、本当に怖かったです。)・洗浄個人的な好みとしては、この作品が最も自分には合っているかも……と思いました。(どの作品も本当に素晴らしくて、甲乙つけること自体ナンセンスですが、もし自分の好みから好きな作品を一つ選ぶなら、こちらの作品という感覚です。)最初に若者がいて、ウェイ三人と落ち着いた主人公、少し変わり者で利用されている人(ドローンの操縦をしている人)で、ホラー映画のあるあるでは?!と勝手に盛り上がりました。湖に沈んだ人に気がつかないのと、主人公が何も行動に移さないのを見て、「え……どうして……実は、主人公は他人がどうなってもいいのかもしれない?」などいろいろ考えました。(私もそんなに……な人だったら「あ……」と思ってぼんやり見ているかもしれないところがあるので、少し分かるような気もしながら、社会性とか体裁を気にするところもあるのでどうして?と思いました。)その後で自分への陰口を聞く主人公が、諦めみたいな感じでその場で聞いてしまうのがわ、分かる……なんか聞いてしまいますよね……(誰?)となりました。あともう少しうまく隠して陰口言ってほしいですね……陰なんだから隠れてくれ!いや、そもそも陰口を言わないでほしいです……!(こういう場面から、人を見下しているな……と分かるのがうまいというか、言語化が難しいネガティブな感情の揺れ方の表現がすごいな……と感動しました。)そのあとに、湖に沈んだ人から大量の水が出てきて突然動き始めるところが怖くてすごく好きです!だんだん水をすすっていると分かったり、感染したりするのが分かる流れもテンポと恐怖感が最高で、楽しかったです!(感染する条件は分かりませんが、近くで何かしたら伝染るんだろうな、とかこちらからアクションを取らない限り敵意はほとんどなさそうだとか(ゾンビみたいに見境なく人間を襲うのではなく、水を得るのを最優先にして動くときに周りのものを傷つけたり、影響を及ぼしたりするのかな)と分かるのがスマートでクールなホラー!って感じでかっこよかったです!)最後に残った男性に、主人公が水鉄砲で水をかけていくのが段々と水の量が増えていくところにすごくカタルシスを感じました。残酷かつ、無邪気に、淡々としながらもどこか愛おしそうに弄ぶ様子がとても美しく、背徳的な芸術と感じて感動しました。最後に窓を開けてあげる場面あたりで、感染した人々が無我夢中で水を求める動きが機械的というか、人ではない(理性を失ってある目的のためにしか動いていない本能しかない状態)がものすごくて演技ってすごすぎでは……?と思いました。湖に突っ込んでいく人々を後ろから追う主人公が、放牧した羊を見守る人みたいな美しさがあり、とても心を惹かれました。水の音と揺れる湖面に、恐怖と安らぎを同時に感じました。なぜ自分がそう感じたのか説明できないのですが、とにかく美しさと世の中の薄暗さ、陰鬱さがこもっている気がして、私はとても好きです。・voidこれも変な言い方ですが、この作品が最も分かりやすいホラーの文脈?というか、「ホラーっぽいですよ~」という説明的な場面があるなと思いました。その反面、確かに違和感があるのに、何が起きているのか、どこが狂っているのか、何がおかしいのか、おかしいってそもそもなんなんだ?となっていく不安感がまとわりつくような空気感がすごく魅力的でした。(夏にすごく暑くて、眠くて、鬱屈とした気持ちで行っていたラジオ体操とか、夏休み中によく連れて行かれた蒸し暑い温室とか、夏なのにとにかく陰鬱で薄暗い雰囲気で過ごした幼い頃を思い出しました。自分でもなんで夏にこんな記憶があるのか、そもそもこの記憶は本当にあった出来事を記憶しているのかさっぱり分かりませんが……)初めの場面から、もうすごく怖いのに美しいです。何なんだろう……とにかく異常なのに、日常で普通に起こるのかもしれないと受け入れてしまうような場面の美しさ?淡々とした迫力?があって、絵画のように魅入られてしまいました。女子高生の会話も何だか変な気がするけれど、どこがおかしいのかすら分からないぞわぞわ感がすごくて、怖かったです。屋上の景色や校内の清潔なイメージが強いのに、何かがどこかに潜んでいて、それはよくないものなんじゃないか、そういった圧を感じるような繊細な映像がとても好きです。家での携帯料金の話とか、家族内の歪なパワーバランスとか、子どもへの圧力とか……なんかもう心がぐちゃぐちゃになりました。辛い……学校に出没する謎の男性は一体……?あの人は最後まで「キモ……上から目線で、若い女性を見下したように話してんじゃねえぞ!!!」と思いました。喫茶店でオカルトな話が出てくる場面は、物語の核心に迫るようで、あの街で何が起こっているのか(この作品で表現したいものは?)の手がかりになるのかも……と思いましたが、頭が空っぽすぎてよく分かっていません。ただ、経済的自立ができていないときに、保護者から人権をないがしろにされたり、学校とかの先生に人権をないものとして見下されたり、友人とも微妙な距離感だと、すごく鬱屈とした感情を抱えて表現の仕方が分からなかったことを思い出しました。最後に人がどんどん亡くなっていくのが、異常なのに「ああ、そういうものだから」と受け入れそうになってしまう淡々としながらも美しい映像の進み方に、穏やかなのに不安でじっとしていられないような矛盾した気持ちになりました。窓から落ちる人とグラウンドで倒れる人の美しさ、卓球で目を打たれる人の場面の強さ、それらの異常さが日常と馴染んでしまっている、みたいなところに私の感情が動かされたのかもしれません。点々が増えていって、何かしらが完成してしまったのかな……とか考えました。オカルトだと三角っていろいろ意味があると言われるので……畳む 2024/04/14(Sun) 16:04:18
#鑑賞記録
※感覚で書いているので文章がくちゃくちゃです。
※入場時にもらったカードに記載のサイトを見ていない状態で書いています。そのため、意図を汲み取りきれていない、理解が浅い部分が多々あると思います。
またサイトを見てからの感想も書けたら書きます。
・全体の感想
ホラーというと、私は分かりやすい怖さをイメージしがちだったのですが、この作品群は「なんだかすごくぞわぞわするけど、何が原因か分からない。快、不快も分からなくて、自分の価値観や認識みたいな感覚に近い部分が不安になってしまう」と感じました。
とにかくホラーとはなんだろう、人間って何が怖いんだろう、そもそも恐怖って何だろう?とたくさん考えさせられました。
あと各作品のタイトルの見せ方、エンドクレジットのおしゃれな感じがめちゃくちゃ好きです。
・犬
主人公のパートナーが、主人公の人権を認めていないモラハラ具合と、無自覚に暴力性を振りまく人間性に「あっ!これこれ!やっぱり家族とかパートナーってこれですよね……」と安心しながらも「ふざけるな!ハラスメントやめろ!!」と思いました。(これは私の生育環境が一般的でなかったことと、今の私はハラスメントとか暴力は当たり前によくない!という考えを持っているため発生する感情です。)
ファミレスでステップファミリーらしい人々のやり取りに心がぐちゃぐちゃになりました。
母親しか頼れないのに、仲良くさせるためとか言って子どもをほぼ他人の大人と二人きりにさせるな……!
檻の中に動物を二匹閉じ込めても仲良くなるわけないだろ……
(自分の過去のことを思い出して心がぐちゃぐちゃになりましたが、短い場面でこうやって人の心を揺らせる作品は本当にすごいと思います。日常のささやかな暴力性を描き出すのがすごいというか……うまい言い方が見つかりませんが)
冒頭の犬の人(あんまりよくない表現ですが、他に短い文字数で示せる言葉が見つからなかったので以下この言葉を用います。)を殴るパートナーに、「えっ、暴力性怖!!!普通は殴れないだろ……」と引きました。
ここあたりでもうパートナーが暴力を振るうことに疑問を抱かないんだ……と恐怖を覚えます。
主人公、会社でなんでそんなことしちゃうの……となりました。
気持ちは分かるけど、でも、自分もするかも……
全体的に本当に辛い……
あと会社の上司の意味深な接し方が「あの……性暴力とか……ないですよね……?」とぞくぞくしました。
あ、ありそう……最悪……
パートナーの人の見下し加減やばすぎて怖かったです。あと暴力への抵抗がなさすぎるのと、兄弟を異様に気にしているところで「この人も育った環境がよくなかったのだろうか……」と思いますが、だったら他人に暴力を振るっていいわけがないし、自分で自分を省みるためにカウンセリングとかDV加害者とかの集まりとか行くという選択ができなかったり、周りから指摘されたり、自分の暴力性に気がついて認める機会がなかったんだろうなと諦めの気持ちになりました。
あと母親のメールも……なんでこんなに人を見下したり、もの扱いできるんだろう……
(環境、世間の価値観、その人の先天的な気質、差別、偏見が関わってくるのでしょうが、それでも、人権とか社会の授業で習ったり、正せる機会がないとこうなるのか……と絶望的な気持ちになりました。)
(しかし、私もそういう人間かもしれません……)
犬の人を家に連れ帰ってきてから、彼女と主人公の穏やかなひとときが素晴らしかったです。
傍目から見たら歪で、人が死んでいるのに、解放感が心地よかったです。
朝起きて、状況が改善されたり、解決はされていないという絶望と、会社で詰められた中で吠える主人公の声が犬より、本人の声で犬の鳴き真似をしているのが「犬になった、のではなくて犬になってしまいたくて人が狂ってしまったのだろうか」と考えて怖くなりました。
この作品の「犬」はこの世の中の文化や知識、人間の社会性が未熟で虐げられる弱者(あるいは、弱者と思い込んで鬱屈とした加虐性を溜め込んでいる人なのかもしれませんが……)にとって現状を暴力で解決してくれる「野蛮」「暴力」みたいな象徴なのかなと私は考えました。
(本当は対話で解決したいけど、暴力を振るう相手って対話する同じ立場に持ち込むことすら困難とか、被害者側が加害者側に「対話してほしい」と頼むクソみたいな状況が生まれたりしがちなので、皮肉なことに暴力に暴力で立ち向かう方が遥かに手っ取り早く、楽になりがちなことを皮肉?みたいに表現しているのかな、と思ったりも……)
だからこそ、主人公は「犬」になりたかったけれど、純粋な犬ではなくて人の合理とかに縛られて暴力を使うことを選んだから「犬の鳴き真似をする人」になったのかな、とか考えました。
「犬」は犬だけれど、周りの人は都合のいい暴力とした利用しているのも何だか皮肉というか、世の中の暴力が正義感で炎上させたり、強い言葉でなじったりするのとつながるのかも……とかいろいろ考えました。
あと私は社会性を保つのにストレスを感じたり、家で働きたくねえ!ニートになりたい!社会性を失いたい!と考えるとき、犬の鳴き真似をしたり、威嚇音を真似していることがあるので、「わ、分かる……気もする……(たぶん違いますが……)」と思いつつ見ていました。
・Rat Tat Tat
場面が切れ切れになったり、時間軸がどうなっているんだろうと混乱する作りで面白かったです!
『去年マリエンバートで』を見たときみたいな、迷宮に入ってしまってどこにいるのか、出口があるのかすら分からない不安になる雰囲気が好きです。
社交的な場や、周りからの目、世間的なイメージみたいなことをぶつけられるパーティーの場が苦手すぎるので「う、うわー!!!つ、疲れる……処理する情報が多すぎて胸がどきどきする……」と見ていて疲れました。
好きな服装もできないし、ここにいるみんなシスヘテロっぽそうだし、みんな働いてそうだし、なんか投資とか、未来設計とかちゃんとしてそうで、まともな家庭で育ってそうで、……とか考えてしまいます。
私はちゃんとできないし、そういうまともさがもとから欠けている人間なので……
主人公が周りの目をすごい気にしているのが分かって、苦しかったです。私も人の目を気にして道化を振る舞ったり、(これは真面目に答えない方がいいな……)(相手が私を見下しているから、馬鹿のふりしておくか……)と考えています。
お手洗いで主人公が血を抜く場面は、ストレスを抜くみたいな隠喩なのかなと考えたりしました。
子どもに関する会話、接し方の絶妙な雰囲気で「過去に子どもに関する何かがあったんだろう……」と察せる張り詰めた雰囲気がうますぎて、私はパーティーから帰りたくなりました。私は見ているだけなのに?!
拍手が手拍子になっていくところで、ナチスが音楽を支配のために収容所で使った話(『虐殺器官』にあったなあ、など)思い出しました。
拍手はいいイメージが強めですが、こうやって社会的なイメージ、価値観、差別みたいなものを交えて人を圧迫していく暗黙の規律みたいなものになっていくよな……と思いました。
異性が結婚したら子どもがね……、とか……私はそういう価値観が嫌いなので、他人の将来に口を挟んだり、話題に出したりしませんが、そういう世の中の圧力、差別みたいなものをこの場面から感じました。
あと子どもが生まれなかったら、さっさと別の話題に移るのも……世の中って最悪……?(私もその最悪の中の一部ですが)と考えました。
(あそこの場面は、白い液体状に子どもの形だったものがなっていく=精液が受精に失敗して性交しただけの隠喩なのかな、と考えました。あの場面はおぞましすぎて、本当に怖かったです。)
・洗浄
個人的な好みとしては、この作品が最も自分には合っているかも……と思いました。
(どの作品も本当に素晴らしくて、甲乙つけること自体ナンセンスですが、もし自分の好みから好きな作品を一つ選ぶなら、こちらの作品という感覚です。)
最初に若者がいて、ウェイ三人と落ち着いた主人公、少し変わり者で利用されている人(ドローンの操縦をしている人)で、ホラー映画のあるあるでは?!と勝手に盛り上がりました。
湖に沈んだ人に気がつかないのと、主人公が何も行動に移さないのを見て、「え……どうして……実は、主人公は他人がどうなってもいいのかもしれない?」などいろいろ考えました。
(私もそんなに……な人だったら「あ……」と思ってぼんやり見ているかもしれないところがあるので、少し分かるような気もしながら、社会性とか体裁を気にするところもあるのでどうして?と思いました。)
その後で自分への陰口を聞く主人公が、諦めみたいな感じでその場で聞いてしまうのがわ、分かる……なんか聞いてしまいますよね……(誰?)となりました。
あともう少しうまく隠して陰口言ってほしいですね……陰なんだから隠れてくれ!
いや、そもそも陰口を言わないでほしいです……!
(こういう場面から、人を見下しているな……と分かるのがうまいというか、言語化が難しいネガティブな感情の揺れ方の表現がすごいな……と感動しました。)
そのあとに、湖に沈んだ人から大量の水が出てきて突然動き始めるところが怖くてすごく好きです!
だんだん水をすすっていると分かったり、感染したりするのが分かる流れもテンポと恐怖感が最高で、楽しかったです!
(感染する条件は分かりませんが、近くで何かしたら伝染るんだろうな、とかこちらからアクションを取らない限り敵意はほとんどなさそうだとか(ゾンビみたいに見境なく人間を襲うのではなく、水を得るのを最優先にして動くときに周りのものを傷つけたり、影響を及ぼしたりするのかな)と分かるのがスマートでクールなホラー!って感じでかっこよかったです!)
最後に残った男性に、主人公が水鉄砲で水をかけていくのが段々と水の量が増えていくところにすごくカタルシスを感じました。
残酷かつ、無邪気に、淡々としながらもどこか愛おしそうに弄ぶ様子がとても美しく、背徳的な芸術と感じて感動しました。
最後に窓を開けてあげる場面あたりで、感染した人々が無我夢中で水を求める動きが機械的というか、人ではない(理性を失ってある目的のためにしか動いていない本能しかない状態)がものすごくて演技ってすごすぎでは……?と思いました。
湖に突っ込んでいく人々を後ろから追う主人公が、放牧した羊を見守る人みたいな美しさがあり、とても心を惹かれました。
水の音と揺れる湖面に、恐怖と安らぎを同時に感じました。
なぜ自分がそう感じたのか説明できないのですが、とにかく美しさと世の中の薄暗さ、陰鬱さがこもっている気がして、私はとても好きです。
・void
これも変な言い方ですが、この作品が最も分かりやすいホラーの文脈?というか、「ホラーっぽいですよ~」という説明的な場面があるなと思いました。
その反面、確かに違和感があるのに、何が起きているのか、どこが狂っているのか、何がおかしいのか、おかしいってそもそもなんなんだ?となっていく不安感がまとわりつくような空気感がすごく魅力的でした。
(夏にすごく暑くて、眠くて、鬱屈とした気持ちで行っていたラジオ体操とか、夏休み中によく連れて行かれた蒸し暑い温室とか、夏なのにとにかく陰鬱で薄暗い雰囲気で過ごした幼い頃を思い出しました。自分でもなんで夏にこんな記憶があるのか、そもそもこの記憶は本当にあった出来事を記憶しているのかさっぱり分かりませんが……)
初めの場面から、もうすごく怖いのに美しいです。
何なんだろう……とにかく異常なのに、日常で普通に起こるのかもしれないと受け入れてしまうような場面の美しさ?淡々とした迫力?があって、絵画のように魅入られてしまいました。
女子高生の会話も何だか変な気がするけれど、どこがおかしいのかすら分からないぞわぞわ感がすごくて、怖かったです。
屋上の景色や校内の清潔なイメージが強いのに、何かがどこかに潜んでいて、それはよくないものなんじゃないか、そういった圧を感じるような繊細な映像がとても好きです。
家での携帯料金の話とか、家族内の歪なパワーバランスとか、子どもへの圧力とか……なんかもう心がぐちゃぐちゃになりました。
辛い……
学校に出没する謎の男性は一体……?
あの人は最後まで「キモ……上から目線で、若い女性を見下したように話してんじゃねえぞ!!!」と思いました。
喫茶店でオカルトな話が出てくる場面は、物語の核心に迫るようで、あの街で何が起こっているのか(この作品で表現したいものは?)の手がかりになるのかも……と思いましたが、頭が空っぽすぎてよく分かっていません。
ただ、経済的自立ができていないときに、保護者から人権をないがしろにされたり、学校とかの先生に人権をないものとして見下されたり、友人とも微妙な距離感だと、すごく鬱屈とした感情を抱えて表現の仕方が分からなかったことを思い出しました。
最後に人がどんどん亡くなっていくのが、異常なのに「ああ、そういうものだから」と受け入れそうになってしまう淡々としながらも美しい映像の進み方に、穏やかなのに不安でじっとしていられないような矛盾した気持ちになりました。
窓から落ちる人とグラウンドで倒れる人の美しさ、卓球で目を打たれる人の場面の強さ、それらの異常さが日常と馴染んでしまっている、みたいなところに私の感情が動かされたのかもしれません。
点々が増えていって、何かしらが完成してしまったのかな……とか考えました。
オカルトだと三角っていろいろ意味があると言われるので……
畳む