リヴァイ 07
二回目の旧本部訪問
この場所は異世界のような不思議な感じがする
上手くは説明できないが、物語の中に出て来そうな雰囲気があるのはお城のような外観だからだろうか
そう思い、太陽に輝く屋根を見上げてから馬の脚を止める
その背から下りると、外に出ていた一人の班員が歩み寄ってきた
ハンカチを返しに来た日、帰る時に会った男性
あの日は兵長に送られて帰る自分を全員で見送ってくれたなと思いながらはぺこりと彼に頭を下げた

「こんにちは、エルドさん」
「こんにちは。よく来たな、馬を預かろう」
「すみません、お願いします」

手を差し出す彼に手綱を預ける
すると馬の首を撫でながらエルドがこちらを見下ろした

「兵長がお待ちだぞ」
「っ、はい、お邪魔します」

彼にもう一度頭を下げるといそいそと玄関へと向かう
空気の入れ替えをしているのか、扉は開かれたままだった
戸口に立って中を覗くとジャケットを脱ぎ、三角巾にマスク姿のオルオがハタキを片手に横切るのが見える

「こんにちは」

お掃除中だったかと思いながらそう声を掛けると彼がこちらに顔を向けた
視線が合い、左手の人差し指でマスクを下げると小さく笑って頷く

「いらっしゃい。兵長、お客さんッス!」

彼が上階へと声を掛けると、見える廊下の先からリヴァイが姿を現した
兵長もオルオと同じく掃除の格好をしていて――
お掃除には彼も参加しているのか
潔癖症だから自分でやらないと気が済まないのかも知れない
そう思っているとリヴァイがマスクと三角巾を外した
手摺に手を触れると階下を覗くようにして身を乗り出す

「ウィンクルム」
「はい」
「紅茶を」
「了解しました」

姿は見えないが、恐らく厨房にいるらしい彼女の返答が聞こえた
上体を起こしたリヴァイが上がってくるようにと手振りするのを見て階段へと向かう
小走りに二階へと上がると彼の側へと歩み寄った

「こんにちは、リヴァイさん」
「あぁ」

こちらの言葉に彼が短く返答して歩き出す
その後について行き、部屋へと入って――目に入った物には思わず足を止めた
壁際に置かれた机の側に椅子が一つ増えている
正規の位置と、角を挟んだ場所にもう一つ置かれているそれ
これはもしやと思っているとリヴァイがそちらへ近付いて椅子の背もたれに手を触れた
カタ、と音を立てて椅子を斜めにするとそこに腰を下ろす
こちらへと目を向けられてはゆっくりと足を踏み出した
休日とはいえ、身に着けてきた立体機動装置がぶつからないように椅子に浅く腰を下ろす
一度座り直すとリヴァイへと顔を向けた

「あの、この椅子は……」
「お前用に」
「っ、ありがとうございます」

自分用、と言われて嬉しくない訳がない
余計な物が置かれていない兵長の部屋に用意してくれたのだから
特別な人として扱ってくれているというのが感じられて幸せだと思っていると扉を叩く音が聞こえた
リヴァイが応えて、ウィンクルムが扉を開ける
前と同じように紅茶が兵長と自分の前へと置かれた

「ごゆっくり」

その言葉も二度目だなと思いながら会釈をして彼女が退室するのを見送る
今日の紅茶もとても良い香りだと思いながらカップに手を触れた
揺れる透き通った褐色の液体を見つめながら口を付ける
火傷をしないようにそっと口に含んで飲み下した
兵長は相変わらず、指先が熱くないのかという持ち方でカップを持ち上げている
でもその手はとても綺麗だなと思っていると彼が窓の方へ顔を向けた

「演習が近いそうだな」
「はい。キツいと聞いているので……少し不安ですが……」
「……そうだな。だが、壁外に出るには乗り越える必要がある演習だ。……てめぇがどの兵団に行くのかは知らねぇが」
「調査兵団です」
「……」
「リヴァイさんと一緒に巨人を討伐出来れば嬉しいです」
「そうか。……無駄死にはするな」
「はい」

十二才になれば子供たちは自然と訓練兵団へと入る
それが普通だと見なされていて、入らない者は意気地なしだと見下されるから
自分は元から兵士になろうと思っていたけれど
何度か壁外調査へ行く隊列を見送った事があるが、とても荘厳で惹きつけられていた
そして行った時よりも人数が減り、怪我をした兵士を見て自分も同じ道を目指そうと決めて――
普通は調査兵団は避けると言われるが自分は逆だった
壁の外に出て巨人と戦い、奪われた領地を取り戻す
生まれも育ちもシガンシナ区で、巨人に壁を壊された時に母と兄を失った
駐屯兵の父に連れられてトロスト区まで逃げてきた日の事は鮮明に思い出せる
そういえば、父には調査兵団を目指している事も、兵長とお付き合いを始めた事も話していないが――
そう思いながら紅茶を飲み、半分ほどに減ったそれをソーサーへと戻した
リヴァイも同じタイミングでカップを置き、頬杖をついてこちらを見る
今日は特に用事があってここに来たわけではない
ただ、彼が来いと言ったから来たのだがいつものように話をするだけで良いのだろうか
そう思っているとリヴァイが真っ直ぐにこちらを見たまま口を開いた


「はい」
「……てめぇは……」
「?」
「覚悟は出来ているか」
「覚悟……?」

いきなり覚悟と言われてもなんの事やら
分からないと首を傾げると彼の手がこちらへと伸ばされた
頬に触れた手が下へと撫で下ろされて、首を撫でる
くすぐったさに逃げそうになる動きをなんとか堪えるとその指先がシャツの釦に触れた

「抱きたい」
「……えっ」
「てめぇを見ると、そればかり考える。自制するのもそろそろ限界だ」
「あ、あの――」
「今日拒むのなら今度訓練施設で襲うか、兵舎に忍び込んででも――」
「!?……わ、分かりましたっ」

訓練施設なんて同期以外にも先輩方の出入りがある
誰が見ているか分からないのにそんな場所で襲われてはどうなるか
それに、兵舎の部屋には同期の子と一緒に使っている
気の合う友人で、勉強も訓練も何をするにも一緒の親友だった
そんな子がいるのに侵入されては――
考えるのも嫌だと思い、は頬が熱くなるのを感じながら立ち上がった
その二つを避けるには今日、このリヴァイの部屋で行うしかないだろう
自分としてはもっと、ずっと――少なくとも半年は先だと思っていたが
ちらりと壁際にあるベッドを見てからジャケットに手を触れる
それを脱いで椅子の背に掛けると、腰に下げる立体機動装置を外して
ああ、異性の前で服を脱ぐというのがこんなにも恥ずかしい事だったなんて――
そう思いながら肩のベルトを外そうとしたところで、その手にリヴァイの手が重なった
思わず動きを止めると彼の指がベルトの金具を外す
その手付きが慣れているように感じるのは、同じ装備をしているからか
はそう思いながら視線を彷徨わせて――彼のベルトに目を留めた
そろりと手を上げて、その金具に触れる
それを外して、腰の布を押さえるベルトを――と思ったところではたと動きを止めた
こちらのベルトを外す兵長を見上げると視線が合った彼が僅かに首を傾げる

「あのっ」
「焦らすな。無理矢理脱がされてぇのか」
「ち、違いますっ。鍵っ、扉の、鍵……!」

言いながらは扉を指さした
先ほどウィンクルムが出て行った時のまま、扉は施錠されていない
今日リヴァイは非番だと聞いているがなにか急用ができた時に施錠されていないとどうなるか
きっと班員はノックをし、声を掛けながら扉を開けるだろう
その人が室内を見て、どんな顔をするか――と考えているとリヴァイが外したベルトを椅子の背に掛けた

「気になるか」
「……気にします」

兵長は行為の最中に人が入って来ても気にならないのか
噂通りの変わった人――と思ったところで彼がふっと笑って扉へと歩いて行く
カチッと施錠する音が聞こえて、くるりとこちらを振り返った

「これで良いな」
「は、はい……」

これで突然の呼び出しでも服を着る時間くらいは稼げるだろう
そう思っているとリヴァイが自分の前へと戻ってきた
太腿のベルトが両脚とも外されて、スラックスのベルトが外されて
そこまでされて、自分も覚悟を決めた
お付き合いを始めてから今日で何日目か
丁度一ヵ月が過ぎようとしているのかと思いながらリヴァイのベルトに触れた
互いに脱がせていくというのはなんとも恥ずかしい
女性とは違う体つきで、腹部に触れると硬い筋肉の感触があった
小柄ではあるがやはり鍛えられているのだと分かる
そうでなければ人類最強なんて呼び名はつかないか――
なんて事を考えながら太腿のベルトを外した
こちらも硬いなと思い、首に巻かれたスカーフへ目を向ける
彼の指がこちらのシャツの釦に触れるのを視界の端に見ながらシュルリと音を立ててスカーフを解いた
少し光沢のある生地で作られたそれは肌触りが良い
高級品だと思いながらそれを椅子の背に掛けたところでシャツの裾がスラックスから引っ張り出された
隠れていた釦も外されて、シャツを脱がされる
思わず動きを止めている間に肌着もあっさりと脱がされて――そこでリヴァイが動きを止めた

「てめぇ、これは……」
「?……胸が、邪魔になるので……」

言いながら胸部に巻いているサポーターへ視線を落とす
立体機動を行う際や、刃を手にした時になにかと邪魔になるその部分
形を整えつつ揺れないよう、小さく見せる為に身に着けていた
男性であるリヴァイは初めて目にするのだろうか
まあ、普通の女性が着ける下着とは形が異なるから無理もないなと思っていると彼の手がサポーターに触れた

「苦しくねぇのか」
「少し……ですが、慣れました」
「そうか」

言いながら彼の指が中央を縦に編み上げる紐を緩める
それによって露になっていく胸を隠そうとして腕が動きかけるが、邪魔にならないようにと辛うじて堪えた
視線を全く動かさずに見つめられると恥ずかしくて頬の辺りが熱くなる
顔が赤くなっているのでは――と思ったところでリヴァイが胸の膨らみを覆うように手を触れた

「っ……」

手の冷たさに小さく肩が跳ねる
とにかく恥ずかしいし、くすぐったいし――と思っていると彼が視線を上げた

「確かに、邪魔になるな」
「は、はい……」

そう大きい方ではないけれど
でも普通の下着では目立つらしく、キース教官にサポーターを着けるように言われていた
皆の耳に入らないように、呼び出してこっそり指摘してくれたのは彼なりの配慮だろう
厳しくてすぐに叱責する教官の優しさを見た数少ない出来事だった
そう思いながらリヴァイの手が離れるのを待ち、それから彼のシャツに手を触れる
釦を外していくと、徐々にその肌が露になって行った
彼がしたようにスラックスから裾を引き抜いて、残った二つの釦を外して――
そっと肩から、腕からシャツを脱がせると筋肉質な体が露になる
同期の男性が暑いと言って服を脱ぐのを見た事はあるが、ここまで鍛えられた体を見た事はなかった
やはり訓練兵と巨人を討伐している兵士は違う――と思っていると腕を掴まれてベッドの方へと連れて行かれる
中途半端に外した脚のベルトが床に擦れる音を聞きながらそちらへと近付いて、すとんと寝具の上に腰を下ろした
手に触れた寝具は滑らかで、ふわりと微かに洗剤の香りを感じられる

(なんか、もう……)

緊張しすぎて体が震えそうだ
そう思いながら床に片膝をつくリヴァイへ視線を落とす
彼の手がブーツに触れるのを見るとは足首を伸ばすようにして太腿を上げた