オルオ・ボザド1 14
旧本部のお風呂場はとても広い
その分掃除は大変だけれど、洗い場の取り合いになることはなくのんびりと使う事が出来た
とは言っても女性は自分とペトラの二人だけなのだが
髪を洗い、水気を絞ってそれを纏めて、捻ってゴム紐で結ぶ
もこもこと石鹸を泡立てて体を洗い、ふと腕に残る傷跡へ視線を落とした
縫合し、傷口は塞がったがまだ肌の変色はあり、縫った跡が分かる状態
右の足首にも同じような傷跡があった
それらは兵士としては誇らしいが女としては――
でも、消えることは無いだろうと諦めて体を洗った
泡に包まれて脹脛を擦っているとギッと音が聞こえて冷たい空気が流れ込む
顔を向けるとペトラが入ってきて声をかけられた

。今日もお疲れ様」
「はい。お疲れさまでした、ペトラさん」
「あら?あなた、少し痩せたわね。元から細いのに……」
「そうですか?」
「スタイルは良いけど、その細い腰を見てると心配よ。立体機動中に折れちゃいそう」
「え、そんなことは……」

ないだろう、と思いたい
そう思いながら腰に触れるが、これでも筋肉もついているのに
肉を付けるには食べれば良いのだろうが自分は少食で多くは食べられなかった
困ったなと思っているとペトラが笑いながら自身の体にお湯をかける

「ふふっ、少食だから仕方ないけどね。でも痩せた分を戻さないと兵長になんとかしろ、て言われちゃうわよ」
「……努力します」

兵長には痩せたことがばれないようにしなければ
ウエスト周りを隠せる服装ならば良いのだが、立体機動装置のせいでそれは出来なかった
だからと言って食べて寝るだけなんてしていたら戦闘技術が落ちてしまう
食べて、運動して、そして腰回りに肉を付ける
なんて難しい目標だろうか
困りながらも体を洗い終え、ペトラにおやすみなさいと頭を下げてお風呂を後にした
脱衣所で寝衣を着て燭台を片手に濡れた髪を拭きながら部屋へと向かう
扉の前に立ち、それからドアノブに手を触れて、捻って開けて
室内に入って燭台を机の上に置いて窓の外を見た
真っ暗な中に浮かぶ細い三日月と無数の星
それらをぼんやりと見つめ、ドキドキしてきた鼓動に細く息をはいた
落ち着かずに無心で髪を拭き、手櫛で整えて、ちらりとベッドを見たりして
そわそわとしているとドアをノックする音が聞こえて心臓がぎゅっと痛くなった

「……はい」

気持ちを落ち着かせながら返事をすると扉に近付いてそっと押し開ける
廊下に立つのはお風呂上がりだと分かる、髪が濡れて寝衣を着たオルオだった
ドキッとしながらも扉を大きく開いて彼を室内へと招き入れる
他の班員に、その姿を見られない内に――
部屋に入った彼が扉を後ろ手に閉めてカチッと鍵を掛ける音聞こえた
少し下へ視線を向けていたオルオがこちらを見て、ゆっくりと足を踏み出す
机に置かれた燭台に立てた一本の蝋燭だけが照らす室内
か細いその灯りは部屋の隅までは届かず、ただ、互いの顔だけは確認できた
近付く彼の歩みに合わせて徐々に顔を上げていく
一歩手前で足を止めたオルオがこちらの肩に手を触れて――そのまま背後へと押し倒された
ギシッと音を立てて、旧本部が放棄される以前から置かれていたベッドの木枠が軋む
片膝をベッドに上げ、こちらを見下ろす彼
緊張して、少し怖くて――でも、頬に撫でるように触れた手は凄く優しかった
肩から手が離れると寝衣の釦が外される
上から順に、一番下までいくと左右の襟を掴まれて
それを、開こうとしたところでオルオが動きを止めた

「あっ……悪い。俺、勝手に……」

そう言い、視線を逸らして手を離す
はそんな彼に笑みを見せると体を起こした
自分で寝衣を肩から落とし、ウエスト部分で緩く結ぶ紐を解く
身動ぎをしてそれも脱いで、肌着に手を触れたところでオルオがベッドから膝を下ろした
体を横に向け、自らの寝衣を脱ごうとしているのを見て視線を落とす
恥ずかしいけれど、衣類を全て脱いで、纏めて寝台横の棚の下段へと押し込んだ
毛布を掴み、それで体を覆い視線を窓の方へ向ける
視界の端にオルオの姿が見えて――そして、細い割には目立つ筋肉の線があって
そして、背中や、腕に古い傷跡があった
彼も今までに何度も負傷してきたのだろう
そう思い、毛布の下で自分の傷跡に手を触れた
何度か摩っているとギシッとベッドが軋みオルオが隣に入ってくる
そちらに顔を向けて――どうすれば良いのか分からずにいると彼の手が頬に触れた

「……大丈夫か?」
「はい」
「じゃあ……その、たぶん、痛いだろうけど……」
「覚悟の上です」
「良い返事だ」

そう言うとオルオがこちらの上になるようにして覆いかぶさる格好になる
ドキドキと、鼓動が高まるのを感じながら目を閉じてキスを受け入れた
触れるだけのそれが、徐々に深くなって舌を絡められて
やはり呼吸のタイミングが――と思ったところで離されてオルオがはあっと息をはく

「苦しい……」
「……はい。苦しい、ですね」

そんな言葉を交わしてお互いに小さく笑うと彼が首筋に顔を埋めた
首に、肩にキスをされてベッドについていた手が胸に触れて
感触を確認するように指が動いてくすぐったい
胸に男性の手が触れるなんて初めてで、恥ずかしくてたまらないが――
でもこれからそれ以上の事をするのだと自分に言い聞かせる
時々、チリッと小さな痛みを感じるのは肌を吸われているからだろうか
閉じていた目を開けて天井を見つめ、彼の背を抱くように腕を回した
今まで、自分から抱きついた事はない
服を着ていれば細さが目立つ彼だが、脱げば筋肉があるし、思ったよりも胸板は厚かった
指先が傷跡に触れるが完治したその部分に痛みは感じないだろう
そう思っていると彼がこちらの腕の傷跡に唇で触れた


「?……」
「痛みはないか?」
「大丈夫です。でも……傷跡は、残りますよね……」
「気にするなよ。俺も傷だらけだろ」
「はい、戦った証ですね」

こちらの言葉に彼が頷き、手が胸から脇腹から腰へ、そして太ももへと撫で下ろされる
内側へと移動して、戸惑う様子を感じさせてから下腹部に
掠めるように触れられて無意識に背に触れる手の指先に力が入った
お互いに顔が見えない状態だが、今は見られたくない
すごい挙動不審にきょろきょろと目が動いているし、何故か歯を食いしばってしまってきっと変な顔になっているから
オルオの指が、粘膜に触れて何かを探るように――

「っ、ん……」

どこに触れたのか、気持ちが良いような、変な感じがして声が漏れる
するとその部分に指が戻り、弄られては身を捩った

「あ、の……そこ……んんっ」

触れられると、痺れるような、体の奥が熱くなるような、そんな感じがする
頬が熱くなって、自然と涙が滲んで
じわりと体の奥から何かが溢れるような感覚があった
なんか、気持ち悪い感じがと膝を擦り合わせていると、オルオの手が離れて膝を掴まれる
開くように力が入れられて、逆らわずにそれに従った
するとその間に彼の体が入って膝が閉じられなくなってしまう
そうするものなのだと、漠然とは知っているのだが――
やっぱり恥ずかしくて両手で顔を覆った
再び触れたオルオの指が、先ほどよりも下の方に触れてぬるりと濡れた感触がする
気持ち悪いと思っているとその体液が溢れた部分に指が押し込まれた
思わず息をのむと彼が少し顔を上げてこちらを見る

「痛むか?」
「いいえ……変な、感じはしますが……」

これは異物感というものなのだろうか
指が抜かれたと思ったら、また挿れられて――
今度は痛みを感じて思わず逃げるように体が動いてしまった

「いっ……ご、ごめんなさい、ちょっと、痛くて……」
「いや。慣らせば多少は……詳しくは知らねぇけど」

言いながらまた先ほどのように指先が触れる
痛みは感じず、それに少し安堵してオルオの肩に額を触れて目を閉じた
暫くその部分を弄られて、再び指が挿れられて――
少し痛みを感じたが、短く息を吸ってそれに耐えた
最初よりは慣れたという事だろうか
そう思っているとゆっくりと指が引き抜かれた
次はどうするのだろうと思っているとオルオがこちらの体の横に肘をつくようにして少しだけ上体を起こす

「挿れるが……良いか?」
「っ、はい」
「あー……いや、その前に……」

彼が視線を彷徨わせるとこちらの右の手首に触れてそっと引かれた
されるがままに、その手を互いの身体の間に入れると何かが、手に触れて

「……え、あっ」
「……」
「え、ええと……その、これ……オルオ、の……」

言いながらするりと指を動かすと彼の肩が震える
やはり、これはオルオの――
見えてはいないし、触った上での想像だが――不安になるくらいの大きさだった
指に比べると太さはあるし、長さは――と思っているとオルオが視線を逸らしながら口を開く

「これを、お前の中に挿れるんだが……」
「あ、あの、大きいです、ね……」

言いながら指を先端の方へと滑らせた
すると彼がびくりと肩を揺らす

「くっ……うぅ、おい、ヤバいって……」
「あ、あぁ……ごめんなさい……」

なにがどうヤバいのかは分からないが、慌てて手を離した
このような事に関して、考える暇もなく兵士になる為だけに心身を鍛えてきたから無知だと思う
あまり触れてはいけないものなのかと焦っていると、オルオが完全に上体を起こして背から毛布が滑り落ちた
蝋燭の灯りに照らされて浮かび上がる陰影を見つめていると太ももの裏に手が触れて、ギシと寝台が音を立てる
先ほど触れられて異物感があった場所に、それ・・の先端が触れたのが分かった
じわりとそれ・・が押し当てられて、感じた痛みに思わずシーツを握る

「あ、いたっ……」
「…………」
「大丈夫、です……」

ここで止めるなんて事は考えずにそう返した
どうにか、痛みに耐えてここを乗り切らなければ
そう思いゆっくりと息を吸い痛みを誤魔化すように左手の指を噛む
オルオの動きが再開され、再び痛みに襲われて
でも声を出さないようにどうにか痛みを逃がそうとした
彼の手が太ももを離れ、腰を押さえるように掴まれてぐいっと一気に突き上げられる

「ひっ、い……!」
「悪ぃ……痛いよな」
「いえ……だい、じょうぶ……我慢できます」

恐らく、痛いのはそんなに続かないものだと予測した
そうでなければこの行為は女性側に負担が掛かる
彼の腰がこちらの体に密着し、先ほど触れたものが根元まで入ったのだと分かった
口元と、シーツから手を離すとオルオの手に触れる
その甲をそっと撫でるとは込み上げる幸せに笑みを隠さずに口を開いた

「嬉しいです」
「嬉しい……?」
「初めての、唯一の相手が、オルオで」
「!……あぁ、俺も嬉しい」

そう言い、腰から手が離れ、手指を絡めるようにして繋がれる
ベッドマットにこちらの甲を下にするようにして下ろされるとこつんと額同士が合わせられた
間近に見る彼の目には涙が浮かんでいる
きっと、オルオの目に映る自分も同じような顔をしているだろう
嬉しくて、少し恥ずかしい――と思っていると彼がゆっくりと瞼を閉じた

「お前の中、気持ち良い……」
「ふふっ、そうなんですね」
「辛いだろうけど、動いて良いか?」
「はい」

そう言うと彼が額を離し、腰を少し引いて体内でずるりとそれ・・が動く
それから再び埋められて一連の動作に痛みが伴うがそれでも心の方は幸せだった
ギシギシと、古びたベッドの枠が音を立て、視界が揺れる
こんな時、女性側はどこを見ていれば良いのだろうか
分からずにじっとオルオを見つめていると、気付いた彼が困ったように眉を寄せた

「こ、こらっ、見るな。やりにくい、から」
「えっ、えっと……」
「……天井見てろ」

オルオの言葉に頷いて天井へと視線を移す
ベッドが軋む音と、粘着質な音と、息遣い
そんな音を聞きながら、痛みの中に気持ち良さを感じてきた

「ん、あっ、!……あぁっ」

なんて声が自分から出るのかと、驚くがでもそれを抑える事も出来ず
手が使えたら口を覆えるのに、両手ともオルオと繋がれていて動かせなかった

「っ……あ、の、ちょっと、恥ずかしっ……あっ」

逆上せそうなくらい顔が熱くなり、思わずそう言うとオルオがこちらを見下ろして笑う

「ははっ、可愛いじゃねぇか」
「も、もうっ、いじわる……」

そんな事を話している間も彼の動きは止まらず、寧ろ激しくなって
もう痛みは感じずにただ、気持ち良さばかりを与えられた

「あ、あぁ、んっ――」

なんか、このまま気を失いそう
そう思った時、強く突き上げられて一瞬意識が飛んだ――気がした
室内は暗いというのに視界が白み、目を瞬くと色が徐々に戻って
そして、体の奥にじわりと熱いものが広がるような、そんな感覚があった

「……あ、マズ……中に……」
「中……?」
「避妊……」
「あっ……だ、大丈夫だと……」
「そう、か。わりぃ、次はちゃんと……初めから、やるから」
「はい……」

多分、日数的に妊娠はしないだろう、と思う
詳しくは分からないけれど――
そう思っている間にも胎内からオルオのものが引き抜かれ、自分の隣に横になる
前髪をかき上げるとふうと息をはいてこちらに顔を向けた

「大丈夫か?」
「はい。痛いのは、初めの方だけ、だったので」
「そうか……良かった。……疲れただろうけど、明日はいつも通りに起きてくれ」
「?」
「このシーツ、俺が洗うから……」
「……あっ、はい。いつもの時間で間に合いますか?」
「ああ、大丈夫だ」

酷く皺が寄り、そして股の感覚からして出血もあるだろう
それに、他の体液も色々と――
それを彼に洗わせるのは気が引けるが人目を避けるには早朝にやるしかないだろう
でもその時間帯、自分は食事を作らなければならずとても洗濯までは手が回らなかった

「ごめんなさい、オルオにこんな……」
「いや、気にするな。……さ、寝るか」

そう言い、オルオの腕が体に回されて抱き寄せられる
互いにうっすらと汗をかいているが、それでも素肌で密着するのは嬉しく感じた
自分も彼の体に腕を回し、その胸に額を当てる
互いに人類に捧げる心臓が動いているのを感じて、は幸せを感じながら目を閉じた