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作品ID:1754
「鏖都アギュギテムの紅昏」へ

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鏖都アギュギテムの紅昏

小説の属性:ライトノベル / 異世界ファンタジー / 激辛批評希望 / 中級者 / R-15&18 / 連載中

こちらの作品には、暴力的・グロテスクおよび性的な表現・内容が含まれています。18歳未満の方、また苦手な方はお戻り下さい。

前書き・紹介


優しさを信じ、すべてを赦して、

前の話 目次 次の話

 自己への、没入。
 それは、とりもなおさず無意識のうちに抑圧していた自らの暗き情動を、真正面から見据える行いに他ならない。
 自覚されることのなかった、本当の自分自身を認める行いに他ならない。
 狼淵は、道場の片隅であぐらをかき、気息を全身に回していた。
 目を閉ざし、深くゆっくりと呼吸を繰り返す。
 風の流れ、遠い喧噪、右眼の疼痛などが、徐々に呼吸の中に埋もれ、溶けるように消えてゆく。

 ――人の脳髄の中には、自分ならざる者が存在しております。

 導くように、螺導の声がする。

 ――通常、人は〈渾沌〉より溢れ出てくる情動を、すべて自分の欲求であると考えていますが、それは単なる錯覚でありまする。

 奴の〈深淵〉だの〈渾沌〉だのが与太話ではないのなら、なるほど確かに思考を届けるのに距離など関係ないのだろう。

 ――自我と外界がまったく別の存在であるように、自我と〈渾沌〉もまったく別の存在でございます。

 ゆえに、まずは「自分の中に存在する他者」を認め、それを客観的に認識しなければならない?

 ――さよう。外界が広大にして深遠であるように、内界にも広大にして深遠なる領域が広がっております。人は、外界の危機に対しては必死に対処しようとするにも関わらず、内界の危機に対してはそれを「自分の欲求」として無批判に受け入れ、何の対処も講じようとはしませんでした。ゆえに、己の心身すら意のままにはできないでいる。

 己を、真に、見つめること。
 内界を探るには、まず内界を認識しなくてはならない。
 気息が、ゆるやかにめぐっている。床と接している尻や脚の感覚が薄れ、やがてふっと消えてゆく。
 そのうち呼吸していることすら意識より外れ――粘度を帯びた漆黒の闇の中に浮遊している己を発見する。
 狼淵は、左右を見渡すが、どこにも何も見えはしなかった。
 〈渾沌〉の領域。永遠にして無限につづく闇が、圧力をもって狼淵を四方から押し包んでいる。
 その縛鎖を振り払うように、一歩前に踏み出す。
 さく、とかすかな足音。
 それに勇気づけられ、二歩三歩と歩みをつづける。
 さく、さく、さく。
 抵抗は感じるが、おおむね意のままに動けている。
 狼淵は己の体を見下ろした。傷だらけで、しかし鍛え込まれた、荘重なる英雄の肉体がそこにはあった。
 背まで伸びる髪が荒々しくうねり、上半身は裸、下半身は襤褸じみた袴をはいている。
 視点がいつもより高い。
 粗野にして高貴なる蛮人戦士。
「これが、本当の俺、か」
 満足げに息をつく。指を屈伸させて、それが紛れもなく己であることを確かめる。
 そうだ。
 強くなくてはならない。このクソッタレな世界を生き抜くには、強くなくては。
 さく、さく、さく。
 力強く、歩みを進める。自信が横溢し、このまま〈深淵〉まで駆け込んでしまおうかと考える。
 ふと、闇を透かして、粉雪がしらしらと舞い降りてきていることに気付いた。
 夜の底が、うっすらと白んでいる。
 眼を細め、またさくさくと歩みを進める。
 やがて、前方に一か所だけ、蓄光石材が置かれたかのように光が当たっている箇所があった。
 円形に照らされ、周囲の闇から浮かび上がっている。光源は、よくわからない。
 初めて目標らしきものを見つけた狼淵は、ゆったりと落ち着いてそこに向かう。
 近づくにつれ、見覚えのある景色であることに気づく。
「故郷、か」
 パラティウム邦の北西部。異律者(サテュロス)の脅威こそないものの、厳しい寒さと地味に乏しい土壌ゆえに、石高にして千を切る辺境の封土。
 その枯れた村落のひとつが、狼淵の故郷である。
 今となっては戻ることも叶わない、原風景。
 特に戻りたくもないが。
 ろくでもない思い出ばかりだったし、狼淵の一家を爪はじきにした奴らを、好きになれるはずもない。
 そんな思いを反映してか、闇の中に浮かび上がったのは、狼淵の生家だけであった。他の家屋は、影も形も見当たらない。
 やがて、光の中に足を踏み入れた。吐く息が白い。
 どこかで、すすり泣く声がした。
 人影は見当たらない。
 いるとすれば、家の中だろう。
 扉を引く。ぎぃと鳴る。なつかしい感触。中に足を踏み入れる。
 ただいま、と言うべきだろうか。
 しかし、結局何も言わぬまま入ってゆく。
 そこにある情景を目の当たりにした時、胸の底がきゅっと締め付けられた。
 漆喰塗りの壁。踏み固められた土間。石を積み上げて作ったかまど。
 煤だらけの、一間。
 ――ああ。
 さまざまな記憶が蘇る。おやじと、おふくろと、三人で、ここで粥や麺麭を分け合ったのだ。
 張り付いた笑顔の底で、常に鬱屈を抑えつけた両親の、大きく骨ばった手や、哀しいほど硬い抱擁の感触が、ありありと思い起こされる。
 ふたりとも、優しかった。
 だが、今にして思えば、その優しさの根拠にあったのは、強さではなく弱さだった。
 自ら優しくあることを選んだのではなく、そうでなければ立っていられなかったのだ。
 すすり泣く声が、より鮮明に聞こえてくる。
 奥の寝室だ。
 そこにつづく扉へ向かい、開け放つ。
 藁の山束を布で包んだ寝台があった。
 その真ん中に、小さな影があった。
 膝を抱え、顔をそこに押し付けている。
 痩せこけた子供であった。骨に直接皮が張り付いたような、一般的な農奴の子。
 狼淵が歩み寄ると、びくりと肩を震わせ、泣き止む。
 ゆっくりと、顔を上げた。
 頬はこけ、眼窩は落ち窪んでいる。
 その瞳はどんよりと濁り、泣き腫らしている。
 やがて、わずかに口が開いた。
「だれ……? どうして、ここにきたの……?」
 名乗ろうとして、ここは自らの内界であることに思い当たる。自己紹介というのもなんか違うだろう。
「……〈深淵〉とやらに用があんだよ」
 迷った挙句、後ろの質問にのみ答えることにした。
「しんえん……? わからない……」
 まぁそうだろうよ。
「お前は? なにもんだ?」
 よくわからないが、〈魂魄〉の内部において何らかの機能を果たす存在なのだろうか。
 螺導の言葉を信ずるなら、「自分の中に存在する他者」というやつか。
「しらない……わからない……」
 弱々しく、答えてくる。
 わけもなく、狼淵はこの相手に嫌悪感を抱いた。
 無害な子供にそんな感情を抱いた自分に驚く。
「わからないって……んなはずはねえだろ。今まで何してたんだよ?」
 理由不明の感情を抑え、子供の正体に探りを入れる。
 直観だが――こいつは〈深淵〉に至るのに重要な鍵である気がする。
「なにも、してない。なにもするき、ない。おれは、ここにいる、だけ。ただ、それだけ」
 寒そうに、身を縮こまらせる。
「いやいやいや、んなわけねーだろ。じゃあなんでお前ここにいるんだよ。ここ俺の心の中だぜ? 無意味なもん抱え込んでる気はないんだがな。なんかあるだろ、こう、お前が生まれた意味というか理由というか……」
「……うまれて、こなければ、よかった……」
 か細い声が漂ってくる。
「どうして、うまれてきてしまったんだろう。くるしいだけなのに。かなしいだけなのに。どうして、いきなければならないんだろう。いいことなんてひとつもないのに。どうして、しななければならないんだろう。いたくて、こわいのに……」
 ぽろぽろと涙が零れるが、その顔は死んだように無表情だった。
「こわい。こわい。こわいこわいこわい……いきるのがこわい。しぬのがこわい……きえたい……」
「……っ」
 狼淵は、歯を軋らせた。
 ずんずんと歩みを進め、子供の胸ぐらを掴み上げる。
「それでも……それでも生きなきゃなんねえだろうが!」
「うぅ……」
 子供は苦しげに眉を寄せる。
「胸糞わりぃことばっかで、きっついけどよ、でも、本当に何もなかったのかよ!? 守りたいって思えるものに、本当になにひとつ出会わなかったのかよ!?」
「なんで……? なんで、まもらなきゃなんないの? こんなにくるしくてかなしいのに、このうえなにかをまもらなきゃなんないの? どうして? おやじも、おふくろも、おれをまもってはくれなかったのに、みすてたのに、おれはまもらなきゃなんないの?」
 狼淵は、悟った。
 こいつもまた、自分の一部なのだ。
 狼淵自身が気付きもしなかった、本音の一部なのだ。
「損とか、得とか、そういうことじゃ、ねえだろう……」
 子供を床におろす。その前にくずおれ、すがるように両肩に手を置く。
「優しくされなきゃ、優しくしちゃいけねえのかよ……守ってもらえなきゃ、守っちゃいけねえのかよ……もしそうなんだったら、人間は誰一人、幸せになんかなれねえだろうが……」
 子供の顔が、引き歪む。
「なれないんだよ! ざいりんってひともいってたじゃないか! ひとがひとらしくいきるかぎり、しあわせになんかなれないって! それだけがほんとうだ! にんげんは、しあわせになりたいとおもうことはできても、ほんとうにしあわせになることはできないんだよ! [だからおれはあんたをつくったんじゃないか]!」
「……え……」
 それは。
 その言葉は。
 なにか、取り返しのつかない意味を含んでいた。
「なに、を……」
「こんなところにまではいりこんできやがって! なにやってんだよ! おとなしくじぶんのやくわりをはたせよ! ただの、よろいのくせに!」
 ぴし、と。
 視界に亀裂が走った。
 ――鎧?
 よろい、だと?
 得体のしれない恐怖に駆られ、狼淵は尻もちをついた。床を這いずり、後ずさる。
 狼淵は、気づいた。気づいてしまった。
 ――俺の、一部……? 違う……!
 そんなものではないのだ。
 ――[これが]、[俺なんだ]……!
 がちがちと歯が鳴り、脂汗が噴き出す。
 視界の亀裂が音を立てて増えてゆき――やがて、砕け散った。

 ●

 ひとりの無力な子供がいて、
 苦痛と絶望に満ちた世界があって、
 だから子供は自分を守ってくれる存在を求め、
 しかし誰一人、彼を守ろうとはせず、
 ゆえに子供は心を鎧で固め、
 どれほど虐げられても壊れない、強固な鎧で身を守り、
 しかし世界は子供の想像を絶するほど残虐で、
 鎧はどんどん分厚く強くなってゆき、
 外界の暴虐に賢しらに対抗するため、
 疑似的な人格まででっちあげ、
 武術を学び、絆を育み、勇気を培い、覚悟を養い、
 やがて、
 やがて、
 やがて、

 子供の存在を、忘れた。

 ●

 視界が、開ける。
 場所は、さっきまでと変わらない。
 しかし、視点は変わっていた。
 全身を怖気のように這い回る無力感。
 目の前には、鍛え上げられた勇壮なる肉体の、英雄が尻もちをついていた。
「おれ、おれ、は……」
 狼淵は、自らの声が、か細く消え入るような子供のものになっていることに気づく。
 自らの体を見下ろすと、骨に皮が張り付いたような、痛ましい矮躯だった。
「うあ……うぁぁぁ、ぁぁぁああ……」
 ぞっとするほど冷たい涙が両目から溢れ、口は空虚な呻きを垂れ流す。
 体に力が入らない。
 ――これが、おれ。
 ――これが、おれなんだ。
 狼淵は震える腕で顔を覆った。これまで培ってきたものすべてに背を向けられたことを悟った。
 それらはすべて自分のものではなかったのだから。
「はは……ははは……ひひひひひ……ひひ……ひ……ひぃ……ひぃぃぃ……っ」
 恐怖の絶叫を上げる。だが、叫びというほどの声も出なかった。そんな力すらないのだ。
 目の前の英雄が身を起こし、あぐらをかいた。
「すまねえ。そうだった。お前にこれ以上つらい思いをさせねえために、俺はいたんだったな……」
 その落ち着いた声に、狼淵は反射的に噛みつく。
「だまれよ! おれをみくだしやがって! あわれみやがって! うせろ! しかいにはいってくるな! ぶんざいをわすれくさりやがって! あんたはおれのかわりにきずつくのがやくめだろうが!」
「あぁ、そうだ」
「だったらこんなところであぶらうってんじゃねえよ! いいから、うせろよぉ!」
「あぁ、そうする。だがな、」
「だまれよォ! それいじょうひとことでもしゃべってみろ、おれはてめーをけしてやる! かならず、けしてやるんだよォォォ!!」
「おい」
 骨ばった両肩を掴まれる。
「このままだと、お前、消えるぞ」
「きえればいいんだよ! いきるのもしぬのもいやなんだよ! うんざりなんだよ! てめーがおれになりかわればいいだろうが! なにがふまんなんだよ!!」
「不満に決まってんだろうが。お前が「鎧」として作った英雄は、ダダこねて泣きわめいてるガキを見捨てるような奴なのかよ」
 狼淵は、それ以上の会話を拒むべく膝頭に顔を埋めた。
「そのままでいいから聞け。俺じゃ〈深淵〉には至れない。ただの外面でしかない俺にはな。お前が行くしかないんだよ」
 狼淵は応えない。
「あの妖怪ジジイ、最初になんて言ってきた? それを思い出せよ」
 ぽん、と肩を叩かれる。
 やがて、英雄が立ち上がる気配がした。
「じゃあな。俺は行くよ」
 そのまま、足音が遠ざかってゆく。
 狼淵はひとり、取り残された。
 螺導・ソーンドリスが、最初に言ってきた言葉。

 ――あなたは間違いなくご両親から愛されておりましたよ。

 あれは、どういう意味だったのだろう。
 愛していたなら、どうして置いて行ったのだ。
 どうして、おれを見捨てた。
「……っ」
 違う。
 そうじゃない。
 なにかが間違っている。
 胸の底に溜まったしこり。違和感。
 両の足に、力を込める。
 悪寒めいた疼痛が関節に広がった。
 もう何年動かしていなかったのか。
 痙攣してまともに動かぬ四肢を叱咤し、わずかずつ這い進む。
 すぐに力が抜け、前のめりに倒れる。
「ぅ……ぅ……」
 惨めだった。
 目を閉ざし、すすり泣く。
 本当の自分から目をそむけつづけ、一度たりとも向き合おうとはしてこなかったツケが、いま狼淵の〈魂〉を収穫しに来ていた。
 どこで間違ったのだろう。
 なにがいけなかったのだろう。
 虚弱な心が身悶える。
 ――ほめてほしかった時に、拳骨を食らった日からだろうか。
 ――生まれて初めて、嘘をついた日からだろうか。
 ――図体のでかい餓鬼大将に脅されるまま、倉庫の種籾を盗んだ日からだろうか。
 ――村落に迷い込んだ物乞いを、言われるままに石もて追い払った日からだろうか。
 ――疫病にかかった仔犬を殺せず、そのせいで家畜がたくさん死んでしまい、言い出せなかった日からだろうか。
 ――餓鬼大将が小さな女の子を殴っているのを、怖くて止めることもできなかった日からだろうか。
 ――不作と厳冬が重なり、生まれたばかりの弟が間引かれてゆくところを、ぼんやりと眺めていた日からだろうか。
 ――餓鬼大将が小さな女の子を押さえつけて腰を打ちつけているところを目撃した日からだろうか。
 ――後頭部を石で殴りつけてクソ野郎を不具にした日からだろうか。
 ――女の子は鬱血するほど殴られて顔の形が変わっているのを見た日からだろうか。
 ――それとも。それとも。それとも。
 ――生まれてきた妹が叩き殺されるのを指をくわえて見ていた日かそれとも石を投げつけてくる連中を片端から殴り飛ばした日かそれとも大勢で仕返しに来て気を失うまでまで殴られた日かそれとも地面に押さえつけられて棒で殴られて「許してください」と言わされた日かそれとも朝畑に出ると土砂をばら撒かれて作物を台無しにされていた日かそれともどんどんやつれてゆくおやじとおふくろに気づいた日かそれとも落ち窪んでゆく眼窩に声もなく戦慄した日かそれとも石を投げてくる奴らの中に助けた女の子もいたことを知った日かそれともいつのまにかおやじの背丈を追い越していた日かそれとも畜舎の柵を壊されて豚がほとんど逃げていった日かそれとも村を抜け出そうと両親に言って農奴には土地を好きに移る権利などないことを知った日かそれとも地代徴収の季節が来てもたくわえが足りず両親が鞭打たれた日かそれともそれが原因で二人とも不具になってまともに動けなくなった日かそれともそれともそれともそれとも――
「ううぅぅぅ……ううぅぅぅ……っ!」
 顔が引き歪む。
 たまらないものが込み上げてくる。
「こんなの……いやだよ……もう、いやなんだよぉ……」
 小さな拳を、地面に打ち付ける。
 何度も、何度も。
「[おれのせいじゃないか]! おやじとおふくろが、くびをくくったのは! おれを生かすために、おれのふたんにならないために!」
 拳の皮が破け、血が滴り落ちても止まらなかった。
 やがて、地面にひびが入った。
「ごめん……おやじ、おふくろ……ごめん、ごめんよ……ごめんよ……ごめん、なさい……ごめんなさい……」
 殴り続ける。肉が裂け、骨が見える。
 ひびが、放射状に、広がってゆく。
「愛してくれてたんだね……ずっとずっと、愛してくれてたんだね……!」
 ひたすら力の込もった拳の一撃が、地面を砕き散らした。
 落下し、闇黒の泥濘の中に没する狼淵。
「でも、ごめんよ……おれ、馬鹿だから……受け取れてなかったよ……今になって、何もかも手遅れになって、ようやく気づいたんだよ……! ありがとうって、いいたかったよ……あんたたちが生きてる間に、言いたかったよ……!」
 目を、見開く。
 光の雫が両のまなこより零れ出でて、きらきらと闇の中に舞っている。
 それはほんのりと紅く色づいた花びらとなって、胸が締め付けられるような宇宙を形作っていた。
 そのさなかを、黒い人影がひとつ、絵画か何かのように静止していることに気付く。
「……ぁ……」
 狼淵は、その人物と、視線を交錯させた。
 女だ。
 細身の体を、喪服じみた闇色の洒装で包んでいる。長い黒髪が水草のようにゆらめいている。
 まるで胎児のように、体を丸めていた。
 その顔は――よくわからない。両手で顔を覆い、かすかに震えている。血の気のない肌が、白々と光を帯びているようだ。
 幼いようにも、老いているようにも見えた。
 狼淵は宙を泳ぎ、闇の女に近寄ってゆく。
 やがて、女は全身に傷痕を負っていることに気付く。
 棒で殴られ鬱血した箇所。
 鞭で打たれ裂けた箇所。
 拳を叩き込まれ腫れあがった箇所。
 蝋のごとき肌に刻まれる、暴虐の跡。
 滴り落ちる血。
「うぅ……ぅ……っ」
 狼淵は。
 たちどころに理解した。
 すでに「鎧」という、自己の中に潜む他者を認識していたから。
 この「闇の女」もまた、自己の中に潜む他者なのだと。
「ずっと……ずっと……そこにいた……」
 英雄の姿をした「鎧」が、外界の脅威から狼淵を守っていたように。
「ずっと……おれを守るために、おれのかわりに傷ついてた……」
 内界の脅威から狼淵を守りつづけてきた存在。
 ぽろぽろと、澄んだ光滴が、とめどもなく両目からあふれ出てくる。
 口が震え、嗚咽が零れる。
 闇の女もまた、すすり泣いていた。
 一人の子供と、一人の女は、向かい合い、言葉もなく泣きじゃくった。
 くるしくて。かなしくて。さびしくて。どうしようもなくひとりで。
「ごめんね……ごめんね……痛かったよね、つらかったよね……気付いてやれなくて……今までおさえつけてて……めをそらして……ごめんね……ほんとう、ごめんね……」
 そっと寄り添い、小さくか細い腕で抱きしめた。
 闇の女はびくりと怯えたように身をすくませた。
「これからは、おれもいっしょに戦うから。もうひとりになんてしないから……だから、もう、泣かないでよ……」
 ぎゅっと抱きしめる。哀しいほどに痩せこけ、傷ついた女を。
 どれほど、虐げられてきたのだろう。どれほど、耐えてきたのだろう。
 やがて、狼淵の体におずおずと女の腕が回された。
 頬を寄せ合い、涙をこらえながら、生きる苦しみ、死にゆく悲しみ、そして存在するということの耐えられない心細さを分かち合った。
「――よう、やりゃできるじゃねえか」
 横で発せられた男の声に振り向くと、「鎧」たる蛮人戦士が腰に手を当てて佇んでいた。
「あ……」
「俺たちは別々の存在だ。だが、俺たちすべてをひっくるめて、狼淵・ザラガなんだ。お前も、そいつも、もちろん俺も、おやじとおふくろが愛した、まじりっけなし本物の、狼淵・ザラガなんだよ」
 太い笑みを浮かべて、闇の女と子供を、長く屈強な腕で抱きしめる。
 まるで家族のように。
 陽だまりの中で、おやじと、おふくろの温もりに包まれ、頭を撫でられた、あの日のように。
 人はみんなひとりぼっちで。
 足りないまま生まれてくる。
 だから、こうして、寄り添うのだと。
 三人は、肩を寄せ合い、頬を合わせ――そして溶け合うように光の奔流と化し、
 周囲の闇を吹き払い、
 光輝に満ちた世界の中を、
 鳥のごとく、獅子のごとく、雷鳴のごとく疾走し、
 やがて、狼淵という名の総体は、[それ]と対峙した。

 蠢き、荒れ狂い、すべてを包み、すべてを食らい、すべてを守り、すべてを絞め殺す、遠き咆哮の残響。
 人類という種の本質。根源。
 あらゆる可能性が渦巻き、溶解し、腐敗し、誕生する事象の地平。
 円環する螺旋。
 世界の中心で狂い泣き叫ぶ一頭の竜。
 ――それを〈深淵〉と呼ぶ。
 これまで、闇の女ただひとりがその暴虐を受け止めてきた。
 だがこれからは違う。
 狼淵が、直接、相対するのだ。

 ●

 目を、開く。
 いつのまにか、日は没していた。道場は、忍び寄る闇に沈もうとしていた。
 目の前には、維沙がちょこんと正座している。
 神妙な顔で、こっちを見つめている。
「……よう」
「うん」
 ぼんやりとした沈黙。
「……典礼は? 終わったのか?」
「うん。案の定、朱龍・ケーリュシアが勝ったよ」
「そっか……」
 これで、維沙は自らの因縁と対峙することが確定したわけだ。
 それが喜ぶべきことなのかどうか、狼淵には何とも判じ難い。
「狼淵……泣いてるの?」
「え?」
 眉尻を下げて身を乗り出してくる維沙。
 言われるまま頬に手を当てると、確かに濡れた感触が伝っていた。
「あー……これはまぁその……」
 目をぬぐいながら、己が内界で起こった相克と和解を思い起こす。
「……っ」
 あとからあとから、熱い涙があふれだしてきて、止まりそうになかった。
「ろ、狼淵……?」
 戸惑った声を尻目に、狼淵は道場の天井を向き、見栄も外聞もなく子供のように泣いた。
「維沙……維沙よぅ……」
「うん」
 熱いものに胸がふさがれ、苦しかった。
「おれ、おれな……寂しいんだ……ずっと、寂しかったんだよ……」
 両手で顔を覆い、あとからあとからあふれ出てくる雫を受け止めた。
「生きるってのは、寂しいよな……家族に先に死なれたら、哀しいよな……そんな当たり前のことから、おれ、目を背けつづけてきたんだな……」
 維沙が、正座のままこちらににじり寄ってくる音が、かすかに聞こえた。
 肩に、細い指が触れる。
「僕は、ここにいるよ。ちゃんといるよ」
「うん……ありがとな……」
 肩に腕をまわして、その手を握った。
「おれ、おれ……みんなを救うよ」
 脳裏に思い起こされるのは、寂紅・ウルクスの最期の顔。
 花のように儚い、その笑顔を。
「この二日で、刈舞や霊燼や、魔月の野郎や、お前や、いろんな奴らの話を聞いて、思いを受け取った。この世界が、今のクソッタレなありさまになったのは、ちっぽけで臆病な、ただの人間が、それぞれの立場で最善を尽くした結果で、なんというか、そうなるべくしてなったものだってことがわかってきたよ」
 維沙はじっとこちらに耳を傾けている。
「だから、だからよ……心のどこかで、おれは完全に折れてた。おれが何しようが世の中変わるわけないって、そう思ったんだ。だっておれは、本当の自分がどんな奴なのかもわかってなかったぼんくらで、何の後ろ盾もない逃亡農奴で、人殺しで……ずっと愛されてたのに、ずっと気付けなかった大馬鹿野郎で……」
 腕で目をぬぐい、維沙を見据える。
「でも、でもな、それでも今は言えるよ。[この世界は間違ってるわけじゃない]。[だけど、みんなもっと心から笑い合える世界はありうる]」
 維沙の隻眼が、かすかに見開かれる。
「おれ、みんなを救うよ。救われるべきだと思う。これが一時の悪夢に過ぎないってことを、証明する。おれが、変える。何もかも変える」
 狼淵は立ち上がった。
 苦しく、哀しく、暖かい力が、全身に満ちている。
 〈深淵〉と対峙し、そこで全人類の願いを垣間見た。
 たすけて、と。
 こわいよ、と。
 怯えて泣きわめく子供のように、余裕もなく震えていたのだ。
 寂紅のあの笑顔もまた、そうした全人類の哀しみの、ひとつの縮図だったのだ。
 ――寂紅。
 どうして、あのとき、駆け寄って抱きしめてやれなかったのだろう。
 どうして、餓天宗を敵に回してでも、あいつの味方に立つってことができなかったのだろう。
 誰かが、それをしなくてはいけなかったのに。救いを求める人類の〈深淵〉に寄り添い、抱きしめ、怖がらなくていいのだと、囁きかけられる誰かが、必要だったのに。
 ――おれが、やろう。
 ごく静かに、狼淵は覚悟を固めた。卑屈で身を守り、縮こまるのはもうやめだ。もっと傲慢になる。[すべてを救う]。
 かくて器は満ち、少年は英雄の領域に足を踏み入れる。
 右手を、横に差し向ける。
「〈信頼〉の八鱗よ――」
 左手を、横に差し向ける。
「〈不信〉の八鱗よ――」
 両掌より、白き光の奔流が溢れ出る。
 炎のごとく渦巻き、のたうち、やがてぎゅっと収縮。
 右手には追憶剣カリテス。左手には忘却剣オブリヴィオ。
 狼淵を見初めたる至高の剣と、寂紅の遺志より受け継がれた悲哀の剣。
 そのふた振りが、狼淵の両手に収まっていた。
「天地(あめつち)を遍く照らす光となりて――」
 爆発的に発光。夜闇の沈んでいた道場を、白昼のごとく照らし出す。
 維沙が、胸でこぶしをぎゅっと握りしめながら、こっちを見ている。
「――人世に払暁もたらしめよ!」
 音高く、両剣を打ち合わせる。
 澄んだ神韻とともに、光の粒子が弾け飛び、追憶剣と忘却剣がぐにゃりと変形。溶け合う。
 視界が白く塗りつぶされる。だがそれは、目を灼くような烈光ではなく、たまらないほど哀切で、優しい光だった。
 狼淵は歯を食いしばる。己の肉体の中から、己を遥かに超える巨いなるものが、せり上がってきているようだった。肉を裂き、骨を砕き、内臓がよじれ、〈魂〉も〈魄〉も吹き飛ばされるような極大の質量と熱量が、肉の底より駆け上がってくるかのようであった。
 それが頂点に達した瞬間、光が急激に収まってゆく。
 狼淵の両手には、一振りの大剣が握られていた。
 重厚な幅と尺を併せ持った、結晶質の片刃剣。物打ちの部分が斧じみて盛り上がり、あたかも身を丸める胎児のごとき輪郭だった。
 それは、ひとつの全体であり、ひとつの宇宙であった。命を奪うための形が、命を象徴するものになる――はじまりと、終わりと、祈りと、永遠とがここに合一し、果てしない螺旋の概念となって、刀身の中に渦巻いていた。
 あらゆる人間の、月光のごとく透明な願いが、〈深淵〉の底から虚空の彼方まで伸び、この巨剣を鍛えたのだと。狼淵は不可思議に感得していた。

 ――号して「寂静剣」。銘を「オムニブス」。

 本来あり得なかったはずの、[十七つめの神器]。
 宇宙蛇(アンギス・カエレスティス)も、皇帝も、餓天宗も意図せず、予想だにしなかったであろう、救世の祭具。
「狼淵……」
 かすかに震える声。
「それが、あなたの王道なんだね」
 見ると、維沙はなぜか、痛ましいものを見るように、隻眼を涙ぐませていた。
「こんなに、綺麗なのに……こんなに、優しいのに……」
 幼い顔を、俯かせる。
 だけど、くるしくて、かなしい。
 声にならず、口の動きだけで、維沙はそう言った。
「……かもしれない。たぶん、おれは、人らしい人から外れようとしてる」
 オムニブスをだらりと下げ、狼淵は維沙のそばに跪いた。
 小さな体を抱き寄せる。
「だから、お前が、引き留めてくれ。お前がおれの袖を掴んでいてくれれば、きっと大丈夫だから」
 ぽろぽろと、哀と苦の精髄が、維沙の頬を伝い落ちる。
「うん……うん……がんばる……」
 狼淵の衣服を掴み、しがみつく。胸板に、額を押し付ける。
 二人は肩を震わせながら、しばらくそうしていた。
 二つの孤独が寄り添って、すべての人間を包み込んでいる孤独を想い、涙した。

 ●

「――〈勤勉〉の八鱗よ、緑青の薫風を纏い、凝固せよ」
 手のひらより、半透明の蔓のごときものが幾本も伸び、のたうちながら収縮。結晶質の大鎌に姿を変える。
 死文字と神話的彫刻にびっしりと覆いつくされた、装飾的な神器である。
 ひょうと音を立てて、打ち振るった。
 翠色の刃が風を斬る。その軌道に沿って光の波が広がり、消えた。
 刈舞・ウィンザルフ・ザーゲイドは、その手ごたえから眉目をかすかに曇らせる。
「『虚構』の質が落ちていますね。そろそろ限界ですか」
「致し方のなきことかと。今までよく持ったほうでしょう」
 後ろに控えていた派遣執行官が応える。
 ――もうすぐ、このアギュギテムすべてを包み込んでいた[嘘]が暴かれる。
 号して「虚構鎌」。銘を「フォルトゥム」。
 刈舞を見初めたる神聖八鱗拷問具(アルマ・メディオクリタス)。
 その権能は、「嘘を信じ込ませる」。
 真実なき虚構を意識に刷り込み、思うように誘導する能力。
 対となる形象鎌は強制的に全世界へ影響を及ぼすが、こちらは効果範囲を自在に制御できる。
 刈舞の眉目には、沈痛な皺が寄せられていた。
 ――これで、八鱗覇濤の一回戦がすべて終了した。
 明日より、二回戦。
 刈舞は組み合わせを思い起こす。

 二回戦 第一典礼
 狼淵・ザラガ
  対
 刃蘭・アイオリア

 二回戦 第二典礼
 螺導・ソーンドリス
  対
 夜翅・アウスフォレス

 二回戦 第三典礼
 魔月・ディプロア・カザフィテス・カナニアス
  対
 散悟・ガキュラカ

 二回戦 第四典礼
 維沙・ライビシュナッハ
  対
 朱龍・ケーリュシア

 霊燼・ウヴァ・ガラクという例外を除けば、ごく順当に弱者が淘汰されていった形だ。
 刈舞の予想とも、大きく外れることはなかった。
 だがここからは違う。
 少なくとも刈舞にはまるで展開が見通せぬ。
 ――あるいは。
 魔月ならば、見えているのだろうか?
 刈舞、刃蘭、霊燼、狼淵、多数の諸侯、異律者の上位個体など、さまざまな立場の者らを取り込み、〈帝国〉に不可逆の破壊と変化をもたらそうとしているあの男ならば?
 ちろちろと、熾火のように、かの貴公子に対する畏怖と嫌悪が臓腑を舐めはじめる。
 その計画に賛同し、彼の走狗として動いている自分にも。
「私はどうあがいても人器。このありように長くは耐えられますまい」
「ザーゲイド卿……」
 派遣執行官が目を伏せる。彼も彼で、思うところはあるのだろう。
「失礼、無意味な感傷ですね。我らはすでに装置。カナニアス卿の企てを執行するのみの、人倫なき歯車。一丁前に罪悪感などと……許しがたい甘えです」
「は」
 その時、縮絨工房(フロニカ)の陰から、十数名の人影が現れる。
 黒地に欝金の縁取りがなされた、帝国法務院(プラエトリウム)の制式執行服。
 全員、奇妙なまでに印象の薄い男たちであった。顔の造形はひとりひとり違うのだが、どうにも識別が困難だ。
 十数人の男というよりは、ひとつの集団としたほうがしっくりとくる。
「集まりましたね。参加者の様子を伺いましょうか」
 彼らは八鱗覇濤参加者全員を尾行し、監視しつづけていた。
「申し訳ありません。失態を演じました」
「ふむ?」
「螺導・ソーンドリスに尾行を感づかれました。処罰はいかようにも」
「それはまた、よく無事に戻れましたね」
 派遣執行官は、やや困惑した顔だ。
「その……茶を、振る舞われました」
「茶を」
「はい」
「それで、何か聞かれましたか?」
「いえ、どうということのない世間話をしたあと、特に何事もなく解放されました」
 いささか間の抜けた沈黙が垂れ込めた。
「……まぁ、よろしい。他の者は?」
「特段の動きはありません。刃蘭・アイオリアは色街で娼婦複数と豪遊中。夜翅・アウスフォレスは外れの霊廟にてじっと座り込んだまま。螺導・ソーンドリスは酒場の片隅で茶を立てています。散悟・ガキュラカは子飼いの娘を何名か強姦し、殺害しています。朱龍・ケーリュシアは《緋鱗幇》の本部で事務作業中。……カナニアス卿の計画に影響を及ぼすようなことは、何も」
「では問題ありませんね」
「ただ、一点……」
「ふむ?」
「狼淵・ザラガが、維沙・ライビシュナッハとともに、件の道場にいるのですが……そこで奇妙な現象が起こりました」
「奇妙な現象?」
 派遣執行官は淡々と見たままを報告してきた。
「二つの白鱗が融合し、一振りの大剣となった……?」
「は」
「前例のない現象ですね。驚くべきことです。後で狼淵どのには詳細を伺うとしましょう」
 フォルトゥムを体内に収める。
「――では、参りますか」
 にわかに剣呑な空気が、周囲に満ち満ちる。
「御意に」
 黒衣を翻し、歩み始める刈舞。
 派遣執行官らもそれに付き従う。
 これより、刃蘭・アイオリア謀殺のための下準備を整える。
 典礼前に殺せればそれが最上だが、難しいだろう。
「覚悟を決めるとしましょう。〈帝国〉の――人類の未来は我らが双肩にかかっていると心得なさい。恐らく、何人か犠牲も出ることでしょう。かまいませんね?」
「もとより、生きてアギュギテムから出ようなどとは考えておりません。我ら一同、次代の子のため、子の子のため、新たな秩序の礎として人知れず散る所存です」
「……ありがとう。私はなんと得難い部下を持ったことか」
 万感の思いを込めて、そう告げた。

 鏖都アギュギテムの紅昏が、突き進む男たちの姿を鮮血のごとく染め上げている。
 賽はすでに投げられた。〈帝国〉に滅亡の焔が燻り立ち、人類の命脈を絶たんと荒れ狂っている。
 それほどの業を背負える器ではないにもかかわらず、もはや後に引けなくなっていた。
 燃え盛る斜陽が、徐々に黒く壊死してゆく。
 街路の狭間から、石畳の細かな凹凸から、雑居長屋(インスラ)の背後から、公衆浴場(バルネア)の陰から――暗夜の浸食が始まろうとしていた。それは人類の罪を慈悲深く覆い隠さんと、黒き粘液のごとく己が領域を広げてゆく。
 彼らの足元に忍び寄るは、闇。

後書き


作者:バール
投稿日:2016/06/27 20:48
更新日:2016/06/27 20:48
『鏖都アギュギテムの紅昏』の著作権は、すべて作者 バール様に属します。

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作品ID:1754
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