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作品ID:2222
「サラリーマン、スケオくんのちょっと色っぽいミステリー」へ

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遠藤 敬之 


サラリーマン、スケオくんのちょっと色っぽいミステリー

小説の属性:一般小説 / ミステリー / お気軽感想希望 / 初投稿・初心者 / R-18 / 完結

前書き・紹介

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(第2話)ミネ子ちゃんと遊園地でデート。キミはうつくしい。踏んづけられたい…。あっ!絶叫マシーン!ワァ!

前の話 目次 次の話

「アハハぁ。たのしかったワァ」
ミネ子ちゃんは乱れた髪を気にして笑顔で話しかけた。
こんなカワイ子ちゃんと並んで歩いてる。でへへェ。
僕の顔は、とけたソフトクリームのようになってしまった。


「うひひ。コーヒーカップなんて乗るの。何年ぶりだろ」
「ほんとね。修学旅行…以来かしら?」
ミネ子ちゃんと僕は、もらった3つ折りの遊園地の地図を持って並んで歩いた。
館内には軽快なBGMとアナウンスが流れている。
看板キャラ、犬のワンダーくんの着ぐるみが、子供と写真を撮ってる。
このワンダー遊園地は僕の子供の頃には既にあった。
乗り物自体、色あせして塗装が剥げてる部分もある。
これでも昔、出来たばかりの頃はピカピカで新鮮で、ゴーカートでさえもレーシング級にすごい乗り物だと思い感動してた。よく父さんに連れてってもらった。


今日は日曜だからか家族連れが多いなあ。
女の子が甲高い声をあげて騒いだり飛び出したりしている。
後ろから、待て待て、とボールを追いかけるように走っているお父さんらしき人がいた。
今日は本当に賑やかで楽しい日だ。
だしぬけにミネ子ちゃんが僕の肩を叩いた。


「ねっ。ねっ。向こうのアレ乗ってみたい」
「おいおい。あはは。そんなに慌てなくても」


ミネ子ちゃんも童心に返ってグイグイと僕の手を引っ張ってくる。
ハァ~。ミネ子ちゃんのようなキャワイイ子供をもつパパになりたい。僕は引かれるままにミネ子ちゃんと歩いた。



ミネ子ちゃんと僕はもう社会人だ。
お互いに仕事について、僕たちはもう、27歳になる。
見ての通り、僕はすっかり洗いすぎて色落ちしたTシャツくんのようになってしまった。
毎朝、髭を伸ばしたツヤのない顔を鏡で見るたびにゲソっとなる。
まぁ。今日は麗しいミネ子嬢と再会するから、顔がハツラツとしてたケドサ。ウヒヒ。

しかし、ミネ子ちゃんも僕と同じように齢いってるハズなのに、それどころか高校生の頃と変わらないことに驚いた。
いや、さすがにそれは言い過ぎか。
でも、多く見積もっても大学生ぐらいに見える。
聞くところによれば、ミネ子ちゃんは卒業してから美大を出て、今では美術の先生をやっているらしい。
毎日、生徒たちに囲まれているから若々しいのかもしれナイ。

ソノ、うるおった白い肌。
吸い込まれるような銀河のような瞳。
思わず触りたくなるような黒々とした髪。
そして、100万ボルト並みのハツラツとした笑顔。

まさに、  キミは天使だ。  いやいやッ!  女神だ!

僕はミネ子ちゃんの生徒になりたい。
そして、個人レッスンをしてもらい、2人ダケの秘密をつくりたい。
そう、そのスカートから伸びた白い足で僕を踏んづけてほしい。
アァ…!ミネ子さまァア!あひー!もっとぉお!アァアア―ッ!
ピシーン!

ヨダレが出てた。一人でイケない妄想にふけっていた。
すると、突然、砂が流れるように、悲鳴が頭上から聞こえてキタ。
……エッ!?悲鳴!ナンだって!一瞬、頭が真っ白になった。


「ス・ケ・オ・くん!これ、乗りたい!」
さっきから何回もミネ子ちゃんは耳元で言ってたみたいだ。
僕はやっと我にかえった。

「エヘェ!コレって、あの、絶叫マシーンじゃないカ?!」
ヒェ~!絶叫系は大の苦手なんだよ!
耳を劈くような乗り物が悲鳴と共にまた流れていく。


ザザザザザザ…
きゃぁああぁぁぁぁ…


聞いてるだけで僕の両足ちゃんがガクガクと鳴っていた。


「ミ、みネ子ちゃん!?コ、コノ、ノ、乗り物で、マチガイないノかなァ!?」
グビリ。声がうわずった。

「ええ。マチガイないわ。スケオくん。」
ミネ子ちゃんは人差し指を立て説明を始めた。


「“レッド・ドラゴン・マウンテン”って、日本最大級の絶叫マシーンで、ここに書いてある通り、最高時速100キロあるらしいのよ。高さは30メートル。全長700メートルって書いてある。
アッ、これ、大宙返りとか後ろ向きで走るんダ。エッ!エッ!すっごく面白そう!」
ミネ子ちゃんはパンフレットに食い入って興奮してた。
ゴクン。顔中、脂汗がういてきた。

「ふぇ。そ、そうなんだぁ。
 大宙返り…
 後ろ向き…  うっぷ」
胃酸がこみ上げてきた。
ミネ子ちゃんが僕の顔を覗きこんだ。


「スケオくん大丈夫?顔色、とても悪いわぁ。
 一人で乗るからイイわよ」

「い、いやぁ!乗るよ!乗りたいサァ!
 こう見えても、子供の頃は木に昇ったり高いトコロから飛び降りたりするのが好きだったんだヨォ」
あわてる僕を見てミネ子ちゃんがクスクス笑っている。


「オホホ。ジャングルジムとか、かしら?」
「ソ、ソウ。じゃ、ジャングルジム!
あとブランコなんかも大好き!大車輪もできてたんだゼ」
親指を立てた。けど、大車輪は僕の『友達』がしてたんだ。
言えば言うほど、泥沼にハマっていくような気がしてきた。
ミネ子ちゃん、お腹をおさえてヒィヒィ言ってる。
「アハハハァ。ムリしなくてもいいわよ?
スケオくん、こういう系、全くダメなんでしょ?」

僕はガチガチでガタガタブルブルになっていた。
エエイ!こうなったら男の意地だい!
ここで引き下がったら男の格が下がる。
絶叫マシーンでも、大車輪でもなんだってやってやるゾ!
僕はムキになってしまった。
絶叫マシーンの前で行列をつくっているところにズンズンと進んでいった。


「馬鹿にするなよ。僕はこんな乗り物、屁とも思ってネェゼ。
 ホラ、早く並ばないと」
最後尾を見つけ、ぴたっ、とくっつくように並んだ。
笑いながらミネ子ちゃんも僕の後ろにつづいて並ぶ。


さすが、人気のあるアトラクションだからか、なかなか順番がまわってこない。
前の列を辿ってみてみた。修学旅行で来た学生や、若いカップル、OLたちなど、ずらりと並んでいた。
僕たちも適当に話して時間をつぶした。
僕は今頃になって後悔の波がどッと押し寄せてきた。
腋の下は冷や汗でビッショリだ。
いや、しかし、一度決めてしまったら変えられない。
これは男のプライドとして守り抜かねばっ。
そうこう思っている内に30分きっちり待たされ、ようやく女の係員が金色の太いロープを外してくれた。


「どうぞ、中へお進みくださいませ。係員の後ろについてきてくださいね」
犬のワンダーくんのワンポイントがついたキャップを被った女の係員さんが笑顔で言った。
歓声をあげて前の行列が進みだした。


うわぁ。ドキン。


数珠のように連なって僕たちも歩きだした。
あまりの行列の長さで一番前の人が見えない。
勝手に進み、いつのまにか足下にはカラフルなコンクリートの階段が出現した。


グビリ。


生唾を呑み込んだ。
タン、タン、タン、と一段一段足をかけるごとに死刑台に近づいてきてるような気がしてきた。
冷や汗が腋の下をどッと流れた。だんだん足枷がついたように重くもなってきている。
これはかなりヤバい予感がする。
やめるんだったら今の内だぞ。
イヤイヤ――ッ。ナニを言ってる。
ここで逃げたらそれこそ、男としてカッコ悪いぞ。
社会人、西城助男。絶叫マシーンがなんだい。
ここまで来たらもう、腹をくくれ。汗ばんだ拳を強く握りしめた。
ミネ子ちゃんは僕の気持ちなんか知らないで、おしゃべりばっかりで絶叫マシーンに早く乗りたくてウズウズしている様子だ。





(つづく)

後書き

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作者:白河甚平
投稿日:2019/12/23 16:00
更新日:2019/12/31 16:37
『サラリーマン、スケオくんのちょっと色っぽいミステリー』の著作権は、すべて作者 白河甚平様に属します。

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作品ID:2222
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