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作品ID:2223
「サラリーマン、スケオくんのちょっと色っぽいミステリー」へ

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遠藤 敬之 


サラリーマン、スケオくんのちょっと色っぽいミステリー

小説の属性:一般小説 / ミステリー / お気軽感想希望 / 初投稿・初心者 / R-18 / 完結

前書き・紹介

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(第3話)洞窟の中でミネ子ちゃんとお手てを握りドキドキ!でもやっぱり絶叫マシーンは怖いヨウ!

前の話 目次 次の話

最後の一段をあがった。赤黒い洞窟を見立てた入口があった。
僕たちは順々に飲み込まれていく。
中は真っ暗でなにも見えない。バランスを崩した。足下にひんやりとしたものを感じる。
その時、背後から


『ダーハハハ。この命知らずめガァ。引き返すのだったら今の内ダァ!』
としゃがれた低い声がしてきた。


ビクン!


真上からとんでもない、壮大なBGMが胸に響いてきた。
目の前にスポットライトが当たった。
炎のように燃えるドラゴンの絶叫マシーンが待ち構えている。
まさに、名前どおりの“レッド・ドラゴン・マウンテン”だった。
ビビッタ。なんだぁ。機械の音声だったのかあ。
胸を撫で下ろす。


学生もOLたちも目を丸くし、飛んだり奇声をあげたりしてた。
係り員に誘導されるがままに、先頭から順々にドラゴンの椅子に座っていく。
僕たちは真ん中より、やや、後ろの席に座ることとなった。


「わぁ!乗っちゃった!すごいドキドキしちゃう!」
ミネ子ちゃんは手を合わせて目を輝かせていた。

「ハハハ。ドキドキするね」
乾いた笑い声になった。
僕は先頭に乗らなくてよかったと思った。
先頭の方が何10倍も怖いと聞いたことがある。
でも、ハァ。大丈夫かなあ。
なんだか気持ちがスッキリしないなあ。


係り員がOK!と手を振って合図をした。
すると僕たちが乗っている背後から、機械音が聞こえ、安全レバーが前に降りてきた。
うわあ……こんなに固定するほど怖い乗り物かヨ。
乗った以上は降りられないけど、今頃になって不安な気持ちでいっぱいになってきた。濡れた両手をズボンで拭く。


白くてしなやかな手が僕の手に重なった。


「み、ミネ子ちゃん?」


ドキン。やわらかくてスベスベした手だ。
赤いライトに照らされたミネ子ちゃんの唇が開いた。


「わたし、コワくなってきちゃった。どうしよう」
彼女は不安な表情を浮かべる。
薄暗い中でこういう状況になると、気持ちが大きくなる。
僕は少しばかりかキザったらしくなってしまった。


「ミネ子ちゃん。大丈夫だよ。
 せっかく人気の絶叫マシーンに乗れるんだせ?
 僕が隣にいるから大丈夫だよ」
手をギュっと握り返した。
ばかやろう。なんで降りようかとか言わないんだよ。この下心丸出しのカッコつけめ。自分の両頬を殴りたかった。


「うん。うふふ。そうだよね。スケオくんの言うとおりだね。ありがとう」
赤いライトの下で、ミネ子ちゃんの方からしゅるりと指を絡めてきた。
わぁ……ミネ子ちゃん。ドキン。ドキン。
胸が高鳴ってきた。
ヤラシイ手つき。これは恋人の握り方。
この赤い光の下で……グビリ。
ああッ。イケない妄想をまたしてしまった。


ジリジリリリリリ……。
発車ベルが洞窟中けたたましく鳴り響いた。
ガックン。
反動で上半身と首が動いてしまった。
レールに沿ってとうとう僕たちは進み始める。
ミネ子ちゃんは固唾を呑んだまま僕の手を握りしめている。
他の乗客もさっきまであんなにはしゃいでいたのに、水をうったように静まり返っている。
暗い洞窟の中で急斜面になり、体重が腰と背中にのしかかってきた。
ガタゴトとレールに沿ってまっすぐに進みだす。
心臓音がうるさく鳴りたおした。
顔中と腋の下からは汗でビッショリとなってしまっていた。
もう、結構な高さまで上がってしまったのではないか。
周りをキョロキョロしてみてみる。
何も起こらない。まだ進んでいる。
ミネ子ちゃんも眉をひそめ、口を真一文字させていた。
心臓が高鳴ったまま、顔を正面に向けた。
洞窟の出口が見えてきた。わぁ!まぶしい!
その時、先頭の車両から流れ落ちるような叫び声が聞こえてきた。


エッ!? エッ!? なに!? ナニ!?


急に加速し出した。
ガックンとレールの角度が曲がり、僕たちも連れ持って流れ滑り落ちた。


うわぁああああああああああああああああああああああああ!


真っ逆さまにー落ちてデザイアー♪

アホか!唄どころとチャウわ!ぼけ!


隣にいるミネ子ちゃんの叫び声が僕の耳を劈く。
恐怖のあまりに縮み上がった。
ミネ子ちゃんは怖いどころか、ばんざいして笑っている。
自然とお手て繋ぎは解かれていた。
目を固く瞑り、肩のレバーを汗ばんだ手でつかむ。
僕は振り落とされないように頑張った。
レールからはみ出るっ、と思うほど、ガガガと猛スピードで走り抜けていく。
大きく、山、谷、を走り抜け、急カーブに差し掛かると上半身の片側にぶつかったような衝撃を覚える。
僕はひたすら歯を食いしばった。


あはぁ…もう…おわったカナ?
目を少し細めて開けてみた。コレがマチガイだった。
その光景を見て僕は頭から血の気が引いてしまった。
イヤ!ちがう!まだ恐怖はここからだ!
急斜面に突入し、天にまでどんどん昇っていくではないカ!?
真上から悲鳴と歓喜の声が混ざり、流れていった。
それに連れもって、僕たちが乗っている車両も昇っていく。


ひぇええええええええええええええええええええええ…


これこそ正に大車輪に近い。
大きく、ぐるーりと宙返りをして、また元の体勢に戻ってレールの上を走り抜けていった。
あはぁ…目なんか、開けなけりゃ、よかった…。き、きもち、わるい…。
それから後ろ向きで走行し、また宙返りをさせられるハメとなった。
も、もう、どうにでもしてくれ…
身をまかせるしかなかった。
きもち悪い…オェ…。
気がつくと一番最初に乗った洞窟の中でゴールインしてた。
櫛で丁寧に整え固めた髪がボサボサになり、白目を剥いてた。
どうやら僕は気絶をしているようだった。




(つづく)

後書き

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作者:白河甚平
投稿日:2019/12/23 16:01
更新日:2019/12/31 16:37
『サラリーマン、スケオくんのちょっと色っぽいミステリー』の著作権は、すべて作者 白河甚平様に属します。

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作品ID:2223
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