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棺担ぎのクロ。〜懐中旅話〜

作者 きゆづきさとこ 棺担ぎのクロ。〜懐中旅話〜
作者HP
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掲載誌 まんがタイムきらら(芳文社)
単行本数 7巻(連載終了)
Wikipedia 棺担ぎのクロ。〜懐中旅話〜
チャート
内容 「一緒に来るかい?外の世界へ それを探しに。」

「GA 芸術科アートデザインクラス」のきゆづきさとこ先生が送るダークファンタジー4コマ。
GAとはまた大きく違う雰囲気の作品で、ファンタジックな世界を旅する少女と蝙蝠、そして不思議な双子の物語。
基本的に1話完結型のストーリー4コマだが、2話に渡ることや、それ以上に長い連続したストーリーが挟まることもある。
作者らしい非常に繊細で幻想的な世界を舞台に、どこか不思議な物語が紡がれ、画風と色彩感覚、そして物語が相まって他の作品には無い独自の世界観を完成させている。
コマ枠が全て黒色に染められていることからも、本作の独特の雰囲気が見て取れる。
各話の最初には、絵本のように絵と文章が綴られることや、吹き出しではなくコマにそのまま言葉が綴られることもあり、4コマ作品というよりは素敵な童話を読んでいるかのようにすら思える。
勿論、作者らしいウィットに富んだネタもあり、色々な意味で完成度が高い。
また、「GA 芸術科アートデザインクラス」と同様に本作もカラーページはそのままに再現されて単行本に収録されている(物語に合わせ、彩度を落とした“ソフト”から“ダル”のトーンを混ぜたような雰囲気。セピアがかったような色調。)。

2009年6月号より長期に渡る休載中だったが、2012年3月号にて連載再開(詳細は雑記にて)。
感想 「笑いがテーマ」を公言している当サイトですが、幾つか例外もあります。
ええ話が詰まっていたり、心がほんわかする話がメインだったり。
この作品も「笑い」が入っていますが、メインとなるのはそこではない作品の一つ。
そして、「ストーリー4コマ」に分類されるものの一つです。

絵本のような、ファンタジー小説のような、そして童話のような、とても独特な作品です。
作者さんのもう一つの代表作、「GA 芸術科アートデザインクラス」を読んだことのある方なら分かって頂けると思いますが、この方は非常に優れた美的センスと色彩感覚を持ってらっしゃいます。
この作品ではその中でも「黒」をメインテーマにしており、その「色」がとても大きな意味を持っています。
それだけに、シリアスかつ不思議な雰囲気ですが、その中に非常にセンスのいいウィットやユーモアが散りばめられています。
話は主人公である「クロ」と相棒の蝙蝠「セン」、そして不思議な双子の「ニジュク」と「サンジュ」が旅をし、その道中で出会う様々な人たちの所に残す「足跡」の物語。基本的に各話で独立したショートショート集のような作りです。
また、時系列も一定しているわけではなく、時には過去のお話が挟まることもあります。
第一話では4人が揃っていますが、その後しばらくはニジュク・サンジュと出会う前のお話のため、二人旅です。
シリアスで童話のようなお話に、無邪気な二人が加わることで思わず微笑んでしまうようなエピソードも多いです。
それに、心温まるエピソードも。
勿論、ユーモアを添えて。

旅の目的は「魔女」を探すこと。
それがクロやセンの過去と深く結び付いており、作品の「黒」とも繋がっています。
そのテーマが作品全体にあるダークな部分そのものです。
そして、それがこの作品の“らしさ”に直結します。
それに加え、深くて考えさせられるお話も多く、ホントに童話のよう。
1巻P77のセンのセリフ『ウソは「他人」を騙すことだが ホラは加えて「自分」も騙すことでもあるんだ』、その後のP87のクロの“ないしょ”についての『ちょっとした やさしい うそ』というセリフなど、話の内容に結び付いた言葉も随所にみられ、単に「面白い」「感動する」という安易な言葉だけでは括ることの出来ない、深くて不思議な物語。
個人的には2巻の犬の人とのお話が特に好きです。
笑いのあるお話ではありませんが、深く、一言では表せない色々な物を感じさせてくれるお話。
子供の頃に読んだら難しく分からなかったお話を、大人になって読んだらしばらくその本から手が離れなかった。
そんな感じのする「考えさせられるけど、胸にも優しく入って来る」物語でした。
当然、それ以外のお話も大好きで、ニジュクとサンジュが絡むと「無邪気さから教えられる何か」が胸にしみます。

雰囲気と色彩、クロたちの過去に魔女。謎とファンタジーとユーモアと。
一見すると発散してしまいそうな要素が複雑かつ静かに混ざり合った見事なダークファンタジー4コマの傑作。
このサイトで紹介する200近くのどの作品とも似ていない独自の世界。
ホントにこの作品だけは「読んで頂かなければ伝わらない作品」です。
クロやセンの背負う重くて黒い過去と物静かさ、ニジュクとサンジュの無邪気な明るさと純粋さ。
明るくて暗くて、優しくて重くて、そしてどこか温かい、本当に不思議で言葉では表現しづらい作品です。
う〜・・・多分今までで一番レビューしづらい作品かもしれないです。
それくらい「言葉だけ」では伝えづらい作品です。

カバー裏は本編と打って変わってマニアックなネタに走っているのも特徴です(いやー、2巻のは笑った笑った)。
雑記 きららの看板作品の一つで、頻繁に表紙も飾っていた本作。
しかし、元々休載が多く、「GA 芸術科アートデザインクラス」のアニメ化の少し前から本格的に休載しました。
同時に、2009年1月27日に予定されていた3巻の発売も延期となり、それから1000回ほど太陽が昇っては沈みました。
物語が大きなターニングポイントを迎え、クロの“今”と“過去”が動き出したところでの休載。
沢山の「帰っておいで」の声が届いたのか、
2011年10月27日発売の「GA 芸術科アートデザインクラス」4巻の帯にて2012年3月号のきららにて連載再開と、単行本3巻の発売が発表されました。
予告通り、2012年1月27日に3巻が発売。
休載直前の2009年5月号分を除く、2008年1月号分までが収録されています。
多くのお話が1話完結ということもあり、単行本では幾つかのお話が順番を変えての収録。
また、作風のため、描き下ろしも他の作品のように巻頭や巻末のおまけではなく、各話に関連するちょっとしたエピソードが1ページ追加されています。
3巻について、私が気付いた分だけでもそういった点を挙げてみましょう。
今よりも半歩だけ、彼女達の旅に近づけるかもしれませんので。

・P40:追加エピソード
・P31〜 と P41〜:エピソード収録順の入れ替わり
・P41&42:連載時の1ページ分を2ページに描き直し
・P53:追加エピソード
・P55〜 と P63〜:エピソード収録順の入れ替わり
・P92:追加エピソード
・P93:追加扉
・P102:追加エピソード

どうですか?当時の雑誌をお持ちの方は見比べてみて下さい。
きっと、当時よりもより深く、より繊細に描かれるその世界に気付く筈。
沢山の“時間”の分だけ沢山の“期待”が込められた3巻。
先生の描く独自の世界がより深みが増しています。
さらに雑記 本作のメインキャラ4人、実はアニメ出演も果たしています。
クロとセンの2人は、GAの第2話の本編に、背景キャラとして彩井学園に迷い込んでいます。
ニジュクとサンジュの2人は、同じくGAの1〜4話のED、幼少期のキョージュの背後にシルエットとして登場しています。
両作品を知っている人にとっては嬉しいサプライズでしたね。
さらにさらに雑記 4コマ漫画に関するニコニコ動画紹介です。
CM風に作られていて、作品の雰囲気なんかが分かるかも、です。



この作品の魅力は、言葉だけでは伝えづらいんですよね。この動画で作品の魅力が伝われば・・・と思います(職人さん、ありがとうございます)。
単行本 発売日 ・1巻:2006年3月27日
・2巻:2007年6月27日
・3巻:2012年1月27日
・4巻:2013年7月27日
・5巻:2015年6月27日
・6巻:2017年2月27日
・7巻:2018年7月26日
試し読み まんがタイムきららWeb:1巻
まんがタイムきららWeb:2巻
まんがタイムきららWeb:3巻
まんがタイムきららWeb:4巻
まんがタイムきららWeb:5巻
まんがタイムきららWeb:6巻
まんがタイムきららWeb:7巻
関連項目 ●ジャンル ロングセラー
ファンタジー
●チャート 感動
●データ 名前の規則(数字)
小冊子(単行本)
感心したこと
●作品研究
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●作者別 GA 芸術科アートデザインクラス ●各巻感想
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