酸素計画

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『老ナルキソス』鑑賞記録
#鑑賞記録


予告がしっかり男性同士の恋愛(性的行為)があるところで好感触でしたが、映画が始まる前にもしっかり性的描写があると注意があり配慮というか、いろいろ丁寧に考えられていると安心しました。
(性的描写が苦手、トラウマがある方もいると思うので、残酷・虐待描写並みにこうした注意があってもいいのかもしれないと考えています。注意入れすぎと、ネタバレとかのバランスを考える必要はありますが。)

水石さんを『ベイビーわるきゅーれ』シリーズや『黄龍の村』などで見てきたため、かっこいいけど少し抜けているイメージがあったのですが恭介さんがはちゃめちゃ人に対して大人の気遣い(今後の人間関係への打算的な部分と、だいたい人ってこういうことをされると嬉しいよねと分かってやっている感)がすごくて本当に美しい!!素敵...と思いました。
ときどき田坂さんみたいなところが出ると(あっ、私が今まで見たことある水石さんだ〜!)となっていました。他の作品は忘れて見るべきなのは分かっていますが...

最初から最後まで性愛(性欲)をないもの、ないことにしたいものではなく、肯定的な(あるいは、消せないのだから前向きに昇華させたい)描き方で個人的には好きです。
この作品をみて、性愛があるのにないって言い張る方が醜いと思いました。
それはともかく、性的な描写がぼかしつつもしっかり描いていてすごくぞくぞくして、官能的ですごかったです。
性器がはっきり映ってぼかしが入らないように気を使われている画角が多くて、見ていてぼかしで気が削がれることもないのも演出としてすごく好きです。

恭介さんの家族が分からない不安が最初はパートナーにも理解されなくてどきどきしましたが、最後は里親にもなって、きっと理解や譲歩をしあっていいところに着地ができたのだろうと嬉しくなりました。
彼らの葛藤の中心であるだろう、家族が分からないけど、理解したい。自分は家族をいいものだと思っているから、パートナーと家族になりたい。でも、これからも家族が分からないままかもしれないから現状維持したいといった気持ちは痛いほど分かってしまって...
ただ、市役所でレインボーのバッジを渡してくるのがグロすぎて怖かったです。(でも、受付の人に悪気はないんだろうな...)
監督の言葉にしない物語での説明がうますぎて、衝撃を受けました。

山崎さんも過去にいろいろあって、死ぬかもしれない年齢になっても自分を愛したままで、でも醜い自分は認められない、みたいな葛藤もきっと人間が抱きがちな悩みだと思うのですが、ここまで明白に映し出されているのがすごかったです。
でも、急に養子にならないか?(=自分のものを継いでほしい、財産を継がせるから養子になって家族になってほしい)はちょっとえげつないのでやめたほうがいいのでは?、となりました。

良くも悪くも過去と未来の家族像(過去には強固な結束による自助的集団ではあるが性的役割などの圧力も強く、未来は多様ではあるがまだまだ社会的に認められるか不安定で、前例が少ない)が交錯し、家族ひいては人がどうやってお互い生きていくのか(それは様々な方法や出会いがある)と思えてなんだか幸せです。
未来は必ずしもすべてが明るいわけではないけれど、少し希望を持ってみていいかなと思えました。

最後の絵本はちょっと怖い終わりに感じましたが、こういう雰囲気の絵本もあったりするし、読む世代で感想が変わっていきそうで面白かったです。
(幼少期は気が付きませんでしたが、大人になってから「これ、作者の性癖では?」と絵本や児童向け小説を読み直して感じています。)

あと、山崎さんも自分が好きにいられるようになって振り切れたとすれば、私も嬉しいです。
自分が大好き、それは素敵なことだと思います!(自己愛性パーソナリティ障害を除きますが、病的ではなく健全な精神や身体の維持に役立つなら、自分が大事!好き!という感覚はいいと考えています。)
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