映画『PARALLEL』を見ました。#鑑賞記録 『PARALLEL』公式サイト 続きを読む短めの作品ですが、濃密すぎて2〜3時間の映画を見ている気持ちになりました。悪い意味で長く感じることはありますが、いい意味で長く感じることはあまりないため見ている間(これ、どうなるんだろう?)(今自分は何を感じているんだろう? うまく言葉にできない感情がどんどん出てくる)とずっと考える珍しい状態でいました。・殺人の描写がしっかりしつつも、さらっとカットするところはカットしていて過激なホラー、スプラッタ映画としてだけではなく、人間模様や苦悩、愛などの物語とめちゃくちゃ合っていて全体的なバランスがすごかったです。エグい描写を突き詰めれば痛そうなホラー映画としては名作ですが、さらにその一歩先を行った「殺人や自傷行為など痛々しい場面がかなりあって序盤は共感しにくいと思っていたのに、見ている間にだんだんと主人公たちの苦悩に共感し、幸せになってほしくなる」という物語に深みを持たせていてすげ〜!!と思いました。(ホラー映画を見るうちに、スプラッタ描写を視覚的に徹底すれば必ずしも傑作になるとは思わなくなっています。なぜスプラッタな描写やホラーという要素を入れるのか? 恐怖に合わせてどう物語を見せたり、印象を深めるのか? という面もしっかり面白かったり、『こういう表現を突き詰めたい!』と製作陣が考えているのが伝わってくるホラー映画は傑作になるのかな~と考えています。)・児童虐待の描写と、同じ部屋で親が殺害された主人公まいの恐怖、諦め、救いの重さが凄まじかったです。あの殺人鬼シンジは一体何を考えて実行したのだろう? どうしてまいを手にかけなかったのか?(虐待されている子どもを助けたかったから?)や、殺人を犯したシンジの細かな説明がないため後世で都合よく解釈されて消費されてるのが怖いかも...でも、誰かの救いになっているのならばいいのか...?(事件の犯人を救世主というか、救いを見出すのって危ないなと考えています。なぜなら被害者がいて、その人本人がどう思うのかとかいろいろ複雑だと思うためです)などたくさん考えさせられました。まいが虐待する両親から解放されるという意味でシンジに助けられたのと同時に、みきおはシンジの起こした事件から人造魔法少年シンジを創り出して救いや今までずっと悩んでいたことに対する答えと最終的になる奇跡的な愛に出会えたこの物語に対して、自分が感じたことを自分はまだ言葉にできそうにありません。・異性への暴力と同性への暴力の解像度が高い...男性→女性、女性→女性、男性→男性の面と向かってではない、物陰で隙を狙って襲うような陰険かつ相手を弱者と見下してする暴力の描写がメインではないのに、解像度というか「実際にありそうだし、あるだろうし、でも誰であってもこんなことしてほしくないし、誰であってもこんな目にあってほしくない!」と思わされました。↑でメインではないと書きましたが、冷静に考えたらまいへの両親による虐待やみきおも家庭環境がよくはなかったと想像される語りに、「弱者への無邪気な暴力」は結構メインテーマでは? と考え直しました。・みきおって人造魔法少女カイニの原案出してるの?!同人誌とか出してよ!と思いました。造形の才能もありそうだし、個展とか開いたりしていれば殺人を介して自身の救済を見出す道を進むこともなかったのかなと考えてしまいました。殺人を介しての表現を選んだみきおを簡単に否定するわけではありませんが、みきおには想像力があるし、それをまとめて誰かに伝えられるし、コミュニティにも入れるし...みきおさんって結構行動力があるので同人誌とか、創作活動で才能を発揮してほしいです。あと監督と話すときの監督の理解力の高さとか、みきおの迷いとかがすごくはらはらして応援したい気持ちになりました。監督はオタクに理解力がありすぎてそんなに登場しないのに、印象深くて好きです。優しい、監督...・みきおに裏切られた殺人鬼グループの人たち、かわいそうだな...みきおに恋人ができたことがきっかけで、頑張っていろいろしていたのに唐突にみきお裏切られて殺される人たち、本当にかわいそう...みきおに裏切られた人々にとっては当然の怒りなのですがみきおを邪魔するな!という気持ちとそりゃ裏切られて殺されるくらいなら反撃するな...と理解できて感情がぐちゃぐちゃになりました。(でも、みきおにとっては一人でバチバチに人を殺して、殺害した人々を変身させて動画をアップロードとかしているのに、他の人はアカウントめちゃくちゃ作って...とかだったら「は? その程度で何やったつもりになってんだ?」と苛ついていて自分の邪魔になったら殺してもいいかと思えてしまったとか...?)・みきおがガチガチの陰キャとかではそんなになくて、目的のためならバーにいけるし、デートもできるし、部屋に来たまいに早口オタクにもならずに一緒にアニメ見れるのは人間力がありすぎて眩しくなりました。オタクの部屋に行ってアニメを見てくれるまいも優しい...あと人造魔法少年という概念にテンションが上がりました。人造魔法少年シンジがめちゃくちゃ好みのキャラだったので!あとまいの男性に女装してもらう場面で、(女装した男性ってなぜか好きだな。中性的で気になるというか...)(まいのトラウマの傷が深そうで心配)と思いました。・まいの長髪(女装した男性)が好きそうなところに、かつて虐待していた両親を殺したシンジを慕う(または安心する?とか)気持ちがあるんだと少し寂しくなりました。寂しいというより、割り切って「パパ、大好き」と言えないときがあったり、気が進まないハグをするなら長髪の相手でという場面で、女性性を切り売りする男性側の邪悪さ(女性性を買えると思っていることへの嫌悪とか、言葉にできない嫌という感覚です)や、父性を求めたいけれど過去によって歪んでしまった家族観への共感や苦しさなどを含むと思います。ただ作中で言葉少なく場面や演技でここまで深みを出せるのはすごすぎて最高です。(こういうのをあからさまな言葉やセリフで語られるのはあんまり好きではありません。言葉で簡単に語れないから他の手段を使うイメージが私は強いからかもしれません。)・みきおの武器って、人造魔法少女カイニが使ってたの?!となりました。みきおオリジナルの武器ではなくて、カイニが使っている原作のファングッズだったとは...みきおが人造魔法少女の原案者であるなら、みきおが使う武器は公式なのかもしれませんが。・みきおが武器のエンジンをかけるごとに、流れていたBGMがやんで代わりにギュイーンと武器の出す音に変わるのが(あっ、これで人は死ぬんだ。これから人が死ぬんだ)(これ、BGMが流れる作品ではなくて現実なんだ)と感じてぞっとしました。・アクションシーンは少なめですが、しっかりしていてへたなアクション映画よりも見やすくて好きです。あと特別協力?か何かでエンドクレジットに伊澤さんのお名前があり、(あっ!?)と驚きました。『ベイビーわるきゅーれ』が好きなので...・作品本編が終わってからの人造魔法少女カイニを見て、カイニがんばれー!!とカイニのオタクになりました。それにしても、この終わり方で魔法への答えがまいに返っていくのがすごすぎて好きです。・魔法みたいな何かで助けてほしくて創作世界を現実世界に反映させようと足掻いてどうにか助けはないかと願っていたいたみきおと、偶然から助けられたけれども過去の苦しみから抜け出しきれずにもがくまいの出会いは奇跡だったなと最後に泣いていました。自分の救いのために作ってきたキャラクターや仮面を信じたみきおが、まいとの出会いで自身の考えに少しずつ変化が起きたのも、まいがみきおと出会って弱さを見せて誰かに伝える勇気があったのも、過去に殺人や虐待があって辛い現実の中でも奇跡(救い)を信じていたから自身でチャンスを掴めたのではないだろうか?と思っています。(みきおは苦悩に任せて人を殺し続ける殺人鬼になってまいを殺してしまう可能性だってあったはずで、まいもみきおに向き合わずに自分の傷や過去を隠し続ける可能性だってあったはずで、こうした可能性は救いがあってほしいと信じるのをのをやめるよりずっと簡単だったかもしれない...救いや魔法や、生きる意味を信じて求め続けるのは苦しいかもしれないけれども、信じるのをやめていればまいとみきおは出会って歩み寄れなかったかもしれない...と思うと、苦しみに諦めきって絶望しきらずに生きていたまいとみきおの意思と愛の結末に改めて感動します。)・みきおの名前が「美喜男」で、どうして生まれたんだろう? どうして作ったんだろう? という作中の言葉が痛々しいほど刺さりました。すごく幸せを望まれたであろう名前だと見てぱっと分かるのに、みきおの背景にはきっと虐待などがあったんだろうと窺わさせる重みがすごかったです。・最後に力尽きたみきおに寄り添うまいの姿が美しすぎて、ある一種の宗教画を見たような気持ちになりました。(宗教画を見たような気持ちは、自分の感じたことを理解しきれなくて言葉にはしきれないけれども、本能的な部分で尊さや気高さ、崇高だと感じるものに接したときの気持ちです)畳む 鑑賞記録 2023/09/29(Fri) 02:03:48
#鑑賞記録
『PARALLEL』公式サイト
短めの作品ですが、濃密すぎて2〜3時間の映画を見ている気持ちになりました。
悪い意味で長く感じることはありますが、いい意味で長く感じることはあまりないため見ている間(これ、どうなるんだろう?)(今自分は何を感じているんだろう? うまく言葉にできない感情がどんどん出てくる)とずっと考える珍しい状態でいました。
・殺人の描写がしっかりしつつも、さらっとカットするところはカットしていて過激なホラー、スプラッタ映画としてだけではなく、人間模様や苦悩、愛などの物語とめちゃくちゃ合っていて全体的なバランスがすごかったです。
エグい描写を突き詰めれば痛そうなホラー映画としては名作ですが、さらにその一歩先を行った「殺人や自傷行為など痛々しい場面がかなりあって序盤は共感しにくいと思っていたのに、見ている間にだんだんと主人公たちの苦悩に共感し、幸せになってほしくなる」という物語に深みを持たせていてすげ〜!!と思いました。
(ホラー映画を見るうちに、スプラッタ描写を視覚的に徹底すれば必ずしも傑作になるとは思わなくなっています。なぜスプラッタな描写やホラーという要素を入れるのか? 恐怖に合わせてどう物語を見せたり、印象を深めるのか? という面もしっかり面白かったり、『こういう表現を突き詰めたい!』と製作陣が考えているのが伝わってくるホラー映画は傑作になるのかな~と考えています。)
・児童虐待の描写と、同じ部屋で親が殺害された主人公まいの恐怖、諦め、救いの重さが凄まじかったです。
あの殺人鬼シンジは一体何を考えて実行したのだろう? どうしてまいを手にかけなかったのか?(虐待されている子どもを助けたかったから?)や、殺人を犯したシンジの細かな説明がないため後世で都合よく解釈されて消費されてるのが怖いかも...でも、誰かの救いになっているのならばいいのか...?(事件の犯人を救世主というか、救いを見出すのって危ないなと考えています。なぜなら被害者がいて、その人本人がどう思うのかとかいろいろ複雑だと思うためです)などたくさん考えさせられました。
まいが虐待する両親から解放されるという意味でシンジに助けられたのと同時に、みきおはシンジの起こした事件から人造魔法少年シンジを創り出して救いや今までずっと悩んでいたことに対する答えと最終的になる奇跡的な愛に出会えたこの物語に対して、自分が感じたことを自分はまだ言葉にできそうにありません。
・異性への暴力と同性への暴力の解像度が高い...
男性→女性、女性→女性、男性→男性の面と向かってではない、物陰で隙を狙って襲うような陰険かつ相手を弱者と見下してする暴力の描写がメインではないのに、解像度というか「実際にありそうだし、あるだろうし、でも誰であってもこんなことしてほしくないし、誰であってもこんな目にあってほしくない!」と思わされました。
↑でメインではないと書きましたが、冷静に考えたらまいへの両親による虐待やみきおも家庭環境がよくはなかったと想像される語りに、「弱者への無邪気な暴力」は結構メインテーマでは? と考え直しました。
・みきおって人造魔法少女カイニの原案出してるの?!同人誌とか出してよ!と思いました。
造形の才能もありそうだし、個展とか開いたりしていれば殺人を介して自身の救済を見出す道を進むこともなかったのかなと考えてしまいました。
殺人を介しての表現を選んだみきおを簡単に否定するわけではありませんが、みきおには想像力があるし、それをまとめて誰かに伝えられるし、コミュニティにも入れるし...みきおさんって結構行動力があるので同人誌とか、創作活動で才能を発揮してほしいです。
あと監督と話すときの監督の理解力の高さとか、みきおの迷いとかがすごくはらはらして応援したい気持ちになりました。
監督はオタクに理解力がありすぎてそんなに登場しないのに、印象深くて好きです。優しい、監督...
・みきおに裏切られた殺人鬼グループの人たち、かわいそうだな...
みきおに恋人ができたことがきっかけで、頑張っていろいろしていたのに唐突にみきお裏切られて殺される人たち、本当にかわいそう...
みきおに裏切られた人々にとっては当然の怒りなのですがみきおを邪魔するな!という気持ちとそりゃ裏切られて殺されるくらいなら反撃するな...と理解できて感情がぐちゃぐちゃになりました。
(でも、みきおにとっては一人でバチバチに人を殺して、殺害した人々を変身させて動画をアップロードとかしているのに、他の人はアカウントめちゃくちゃ作って...とかだったら「は? その程度で何やったつもりになってんだ?」と苛ついていて自分の邪魔になったら殺してもいいかと思えてしまったとか...?)
・みきおがガチガチの陰キャとかではそんなになくて、目的のためならバーにいけるし、デートもできるし、部屋に来たまいに早口オタクにもならずに一緒にアニメ見れるのは人間力がありすぎて眩しくなりました。
オタクの部屋に行ってアニメを見てくれるまいも優しい...あと人造魔法少年という概念にテンションが上がりました。人造魔法少年シンジがめちゃくちゃ好みのキャラだったので!
あとまいの男性に女装してもらう場面で、(女装した男性ってなぜか好きだな。中性的で気になるというか...)(まいのトラウマの傷が深そうで心配)と思いました。
・まいの長髪(女装した男性)が好きそうなところに、かつて虐待していた両親を殺したシンジを慕う(または安心する?とか)気持ちがあるんだと少し寂しくなりました。
寂しいというより、割り切って「パパ、大好き」と言えないときがあったり、気が進まないハグをするなら長髪の相手でという場面で、女性性を切り売りする男性側の邪悪さ(女性性を買えると思っていることへの嫌悪とか、言葉にできない嫌という感覚です)や、父性を求めたいけれど過去によって歪んでしまった家族観への共感や苦しさなどを含むと思います。
ただ作中で言葉少なく場面や演技でここまで深みを出せるのはすごすぎて最高です。(こういうのをあからさまな言葉やセリフで語られるのはあんまり好きではありません。言葉で簡単に語れないから他の手段を使うイメージが私は強いからかもしれません。)
・みきおの武器って、人造魔法少女カイニが使ってたの?!となりました。
みきおオリジナルの武器ではなくて、カイニが使っている原作のファングッズだったとは...みきおが人造魔法少女の原案者であるなら、みきおが使う武器は公式なのかもしれませんが。
・みきおが武器のエンジンをかけるごとに、流れていたBGMがやんで代わりにギュイーンと武器の出す音に変わるのが(あっ、これで人は死ぬんだ。これから人が死ぬんだ)(これ、BGMが流れる作品ではなくて現実なんだ)と感じてぞっとしました。
・アクションシーンは少なめですが、しっかりしていてへたなアクション映画よりも見やすくて好きです。
あと特別協力?か何かでエンドクレジットに伊澤さんのお名前があり、(あっ!?)と驚きました。『ベイビーわるきゅーれ』が好きなので...
・作品本編が終わってからの人造魔法少女カイニを見て、カイニがんばれー!!とカイニのオタクになりました。
それにしても、この終わり方で魔法への答えがまいに返っていくのがすごすぎて好きです。
・魔法みたいな何かで助けてほしくて創作世界を現実世界に反映させようと足掻いてどうにか助けはないかと願っていたいたみきおと、偶然から助けられたけれども過去の苦しみから抜け出しきれずにもがくまいの出会いは奇跡だったなと最後に泣いていました。
自分の救いのために作ってきたキャラクターや仮面を信じたみきおが、まいとの出会いで自身の考えに少しずつ変化が起きたのも、まいがみきおと出会って弱さを見せて誰かに伝える勇気があったのも、過去に殺人や虐待があって辛い現実の中でも奇跡(救い)を信じていたから自身でチャンスを掴めたのではないだろうか?と思っています。
(みきおは苦悩に任せて人を殺し続ける殺人鬼になってまいを殺してしまう可能性だってあったはずで、まいもみきおに向き合わずに自分の傷や過去を隠し続ける可能性だってあったはずで、こうした可能性は救いがあってほしいと信じるのをのをやめるよりずっと簡単だったかもしれない...救いや魔法や、生きる意味を信じて求め続けるのは苦しいかもしれないけれども、信じるのをやめていればまいとみきおは出会って歩み寄れなかったかもしれない...と思うと、苦しみに諦めきって絶望しきらずに生きていたまいとみきおの意思と愛の結末に改めて感動します。)
・みきおの名前が「美喜男」で、どうして生まれたんだろう? どうして作ったんだろう? という作中の言葉が痛々しいほど刺さりました。
すごく幸せを望まれたであろう名前だと見てぱっと分かるのに、みきおの背景にはきっと虐待などがあったんだろうと窺わさせる重みがすごかったです。
・最後に力尽きたみきおに寄り添うまいの姿が美しすぎて、ある一種の宗教画を見たような気持ちになりました。
(宗教画を見たような気持ちは、自分の感じたことを理解しきれなくて言葉にはしきれないけれども、本能的な部分で尊さや気高さ、崇高だと感じるものに接したときの気持ちです)
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