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妖怪大辞典 -荒井チェリー作品-


人外が多く登場する作品。そんな作品の人外たちを纏めた「妖怪大辞典」。
今回は荒井チェリー先生作品。そう、単独の作品ではなく、「作品群」でのご紹介。
荒井チェリー先生といえば可愛らしい人外たちが登場する作品を多く手掛けてらっしゃる上に、それらの作品が同じ世界感を共有している事が特徴。
というわけで、「荒井チェリーワールド」番外編です。
なお、今回のレポートはヘイホーさんよりアイデアを頂きました。
ありがとうございます!


キャラクター 登場作品 妖怪ジャンル 解説
ワンダフルデイズ 座敷童子 大人には見えないが、その家に幸福をもたらす福の神の一種。
一説ではかつての日本で「(主に経済的な事情で)育てることが出来ない子」を祀ったものが座敷童子であるとされる。
しっかりと祀っているうちはいいが、蔑ろに扱うと家を出ていき、その家は急速に没落すると言われる。

壱は成長してしまった座敷童子。「座敷おやじ」とも。
成長してしまったためか、座敷童子の力が少ない。また、人間にも普通に姿が見える。
元々は子供の姿であり、幾つかの家を経て現在のさちの部屋に住んでいる。
アパートを訪れたのは薫の曽祖父の頃(2巻P27)。
実はさちのご先祖の家に住んでいた事もあり、壱が家をふらりと出たことで没落したらしいが詳細は不明。
座敷童子らしい所はあまりなく、家で昼間から酒を飲みながら競馬を見るなどダメな大人っぽい。
幸福を呼ぶ力は強くないものの、住人であるさちや薫だけでなく自身にも効果がある(そのため、ギャンブルをしても勝ちも負けもしない)。
ただし、人間にしか効果が無いため他の住人には効果が無い(さちと薫以外は人外)。
酒を断つことで一時的に子供の姿に戻った(その後アルコール摂取で元に戻ったが)ものの、力は戻らなかった。
ワンダフルデイズ 座敷童子 公園に住んでいる座敷童子の女の子。
壱と違い子供のままであるが、壱がまだ子供の姿だった頃から面識があるなどそれなりに年は重ねている。
見た目も中身も子供ではあり、公園にやって来る子供達のアイドル。
幸運を呼ぶ力は大きいと思われるが、それが大いに発揮される描写は特にない(公園住まいのため)。
壱と違い力のある座敷童子のため、さちや薫などの一部の人間にしか姿が見えない(本来は大人には見えない。人外達は普通に見える。)が、登場するキャラクターのほとんどがその「一部」であったり人外のため、普通の子供としての描写が多い。
ただし、碧子は当初は零の姿が見えなかった(さらに、普通の人にも見える壱すら見えなかった。後に見えるようになる。)。
座敷童子同士という事で、壱とは反目し合っており子供の喧嘩を繰り広げる。
幾つかの家を経てきたが、座敷童子の福を逃がしたくないために幽閉された経験があり、それ以来公園で自由を満喫していた。
さち達と出会い新たな家を探すことを決心し、最終回でさちの実家であり、友人でもあるすずりの家(金子家)に「パート」という形で通うことになった。
最終6巻のカバー裏ではかつて金子家と関わりがあったかもしれない事が匂わされているが、詳細は不明。
うみ ワンダフルデイズ 犬女(狼女) 怪我をしている所をまだ子供だった薫に助けられて以来ペットになった犬(ヨークシャーテリアまじり)。
犬の姿にも人間の姿に変化でき、普段は人間の姿をしている。
アパートの食事は全て彼女が作っており、薫の身の回りの世話もしている。
そもそもの怪我の原因が「土佐犬に喧嘩を売った」であるなど、その強さには数々の逸話があり、時にはその獲物が食卓に並ぶことも。
怒らすと怖い人(?)であり、飼い主の筈の薫も逆らえない所がある。
アパート内に彼女の部屋は無く、冬は薫の部屋に、夏は外の犬小屋で過ごす。
着ている着物は薫の祖母の物。
非常に強いものの、変化を除けば物の怪としての描写はほぼない(人前の変化自体も1巻で1度出てきたのみ)。
真壁しおり ワンダフルデイズ ろくろっ首 日本の怪談に登場する妖怪「ろくろっ首(ろくろ首)」。
普通の人間だが首が伸びることで疎まれる話・怨念で首が伸びる話・首が伸びて行燈の油を舐める怪談・首が伸びるのではなく外れて飛び回る話、など様々なバリエーションがある。

本作のしおりは驚くと首が伸びる体質。
実は自分がろくろっ首だとはずっと知らなかったが、成人式に母に教えられて初めて自覚した。
スタイル抜群だが自分に自信が持てず、さちの同僚の蒼太に一目惚れするも声をかけることすらできなかった。
その恋の進展は非常にゆっくりであり、1巻で一目惚れをし、最終6巻にてようやく2人で飲みに行けるまでになった。
普段はOLとして働いており、優秀な方。
首が伸びる以外は特殊な力は無いものの、その体質自体は頻繁にネタとして描かれる。
好物はオリーブオイルなどの油で、後述の珠季とは油について語り合うことも。
北野たきび ワンダフルデイズ 雪女 日本の怪談で好んで使われる妖怪。
様々な話があるが、悲しい話が多い。
サブカルチャーの世界でも多く登場し、共通して「美しい・冷気や氷を操る・暑さに弱い」などがよく見られる。

たきびもそれらに近く、正真正銘の雪女で年齢不詳。非常に長生きしているのではないかという描写が多い(たきび本人に年齢の話はタブーらしい)。
氷を作ったり周囲を冷やしたりが得意だが、その力を使いすぎたため子供のような姿になってしまっている。
そのため、現在は小学校に通っている。
一時的ではあるが、大人の姿にもなれる(二時間位しかもたない)。
アイスが好物だが、普通に食事をする際も口腔内で食物が凍っている様子(1巻P27)。
雪の精を呼んだり、作中最も不思議な力を見せているキャラでもある。
また、どうやって小学校に入れたのか、生活費はどこから?など謎多き存在。
長谷川珠季 ワンダフルデイズ 猫又 長く生きた猫は尾が2つに割れて妖力を得る。
それが猫又と言われている。
元々猫自体に「魔性」というイメージがあったため、人を襲うなどの害のある存在としての伝承が多い。

本作の珠季は女子高生の姿の猫又。人間/猫のどちらの姿にでもなれる。
そのため、猫カフェ「Cat cafe ねこだまし」で猫としても人間としても働いている。
年齢不詳(猫又は長く生きた猫の尾が2つに割れた存在なので)であり、付き合った男の趣味に合わせた上にそれを極めてしまう。
その結果、機械いじりなどの技術を身につけている(ただし、すぐ飽きる)。
恋に熱しやすく冷めやすい人で、季節のたびに彼氏が変わる上、別れる際は100%自分からふっている。
元々は飼い猫だったのだが、現在はアパート暮らし。
別の学校の菅原鈴吾に好意を寄せられ付き合うことになる。その鈴吾はかつての飼い主の子孫である様子。
猫の姿の時の名前は「タマ」。
鈴吾が小説(日本語が滅茶苦茶)を書いているため、現在は構成や正しい日本語の勉強をし、鈴吾の小説を添削をしている。
藤原未香 ワンダフルデイズ 貧乏神 取り憑いた相手を貧乏にしてしまう神様。
人に憑く場合と、家に憑く場合がある。
神のため決して倒すことは出来ず、追い払う事のみ可能。
近年ではゲーム「桃太郎シリーズ」のイメージが強い人も多いのでは?(モデルはデザイナーの「榎本一夫」さん)

本作の未香はたきびの紹介でアパートにやって来た作中唯一の「神の類」。
一見すると普通の女性だが、付き合った相手は彼女に貢いで貧乏になってしまう。
それ以外の周囲の人にはその影響はほとんど無く、アメや苺などの小さなものをあげる程度。
その性質上、壱からは目の敵にされていたが、彼女自身は敵対する意思は全くない。
また、貧乏神であることにプライドはあるものの、「同じ人とは幸せにはなれない(お金を吸いつくすため)」ことに悩んでいる。
出番は少なくすぐにアパートを出ていくも、その後は手紙で近況を報告する形で登場。
最終回で帰国し、再びアパートの住人に。
仁礼恵 せいなるめぐみ 人魚 西洋・東洋を問わず非常に多くの伝承がある存在。
本作でモデルとなっているのは中でも日本で有名な「八百比丘尼」と思われる。
これは人魚のイメージと不老不死の少女の話が混ざったものであり、「人魚の肉を食べると不老不死になる」という伝承を生んだ。

本作の恵は厳密に言えば人魚ではなく、この「人魚の肉を食べて不老不死になった人間」。
2巻P60にて初代刑部当主(恵)が人魚に助けられて穂海(作品の舞台)を発展させたとある。
また、恵のペンダントは人魚の鱗。
不老不死以外は普通の人間であり、家事万能の聖の乳母。ただし、味オンチ。
聖とひよりにとって憧れの存在でもある。
三峰白夜 「未確認で進行形」 人からは魔物・化物・鬼・物怪などと呼ばれる存在らしいが詳細は不明。
ただ、人間でないことは明言されている。
生まれついて何かしらに化ける能力があり、白夜の場合は黒い犬と思われる。
ただし、真白曰く「小紅には変化して見せないと思う」とのこと。
常に前髪が右目を隠しており、それに関連するかのような描写がある。
また、操作の分からないデジカメのデータを消してみせた。

祖父が決めた小紅の許嫁。非常に寡黙で長身にもかかわらず存在に気づかれないなど影も薄い。
決められた許嫁とはいえ、小紅の事を大切に思っている様子。
幼少期に大ケガをした小紅を助けるために自分の力を半分小紅にあげた。
それによって小紅は一命を取りとめた。
三峰真白 「未確認で進行形」 白夜の妹で小紅の小姑。
白夜と共に小紅達の所で居候中。
やって来たのは白夜の事が心配であることもあるが、自身も結婚相手を見つける目的もある。
何に化けることが出来るかなどは不明。
人外としての能力は、高校に「まぎれこんでいる」という形で発揮されている。
無論母も人外で、家の屋根から屋根へと飛んで移動するという驚異的な身体能力を見せている。
末続このは 「未確認で進行形」 白夜や真白同様の存在。
紅緒に憧れを抱き、その紅緒に可愛がられている真白を妬んでいる。
神守水祈 いつかまたかえる 水神の従者 かつての村長(水祈のご先祖)が水神に「水害から守ってもらう代わりに男の子が生まれ、16歳になったらその子を捧げる」という誓いを立て、その結果生贄となった少年。
実際は取って食われるわけではなく、水神である水花の従者になることに。
カエルが苦手なのだが、仕えることになった水花はカエル。
水花の従者になった事で不老になった。
さらに、転職(水花が勝手に決めた)の「ギャグまんが体質」により、ある意味不死身となる。
水花の従者ではあり体質も変わってしまったが、それ以外は普通の人間と変わらない。
水花 いつかまたかえる 水神 水神でカエル。人間の姿にもカエルの姿にも変化できる。
かつて水祈の先祖の願いを聞き入れ村を水害から救った。
現在は治水工事のお陰で仕事が減った。
どこからともなくハンマーを取り出したり、水祈を転職させたりしているが、それ以外は普通の女の子とあまり変わらない。
ただ、不老ではある。
元々は人間の少女であったが、水害を収めるための人身御供(神への生贄)となったことで力の弱っていた水神に取り込まれ、融合。
水神と人間の中間のような存在になっている。

一般に水神には河童・蛇・龍がよく用いられる。
特に白い蛇や黒い龍(陰陽五行で水は黒を司る)が多く見られる。
蛇の目 いつかまたかえる 白蛇 水神の眷属の蛇。人間の姿にも蛇の姿にも変化できる。
人語を話し、人間に変化する他は特異な力は無く、人間の姿でいることには力を消費する様子。
水祈や水花は人間がベースではあるが、彼はベースが蛇。
トーンが貼っているが、白蛇らしい(青大将)。

元々白蛇自体も水神として崇められることがあり、縁起のいい信仰の対象。

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